ブログスタート!2008年11月19日 23:27

シベリア
みなさん、こんにちは。

遅ればせながらブログをはじめます。
これまでちよっとサボっていたことですが、デザインについての言葉を残して行こうと思います。

どなたが見て下さるのか、まったく判らないのですが、できるだけ簡易な表現で正直に書いて行きます。どうぞよろしくお願い致します。

上海の大きさ2008年11月19日 23:42

上海
9月の事ですが、少しさかのぼって紹介します。

上海政府が主催する「第四回上海デザインビエンナーレ」に出展させて頂きました。

上海は4回目です。
行くたびに街がどんどん大きくなっています。
高度を下げながら近づく飛行機から見える上海の街は、地平線の向こうまで延々と高層マンションが続いていて、飛び立った時に見えたものが「ミニチュア」に思えてきます。

一人当りの土地面積があるアメリカの郊外も、身体の大きいドイツ人が悠々と過ごせるように作られたドイツの街並も、それぞれ「大きいなぁ」と感じるのですが、ここは全てが大量に存在するという意味で「大きいなぁ」と感じます。独特です。

この大量のビルの合間を大量の粉塵が舞い、中国内外から集まった漢人、ウイグル人、日本人、欧米人たちがそれぞれ微妙に異なる温度の熱を宿し、旅人はその熱を大量に浴びせられるのです。

私はこの熱が好きです。

上海 つづき2008年11月20日 00:04

上海 茶店
写真が記事毎に一つしか載せられないので記事を分けます。

あるホテルのドアボーイさんは、行き交う車列をさばきながら私たちのあるくスペースを作ってくれました。
茶店の主人(写真)は柔和な声の日本語で丁寧にお茶の説明をしてくれました。
あるタクシーの運転手は、通じない言葉を気にせず街の案内をしてくれました。
彼らは皆いい目つきをしています。ファイターであり、働くものの目です。未来を信じていることが強く伝わって来ました。それが熱になって伝播しているように感じて居ます。

(もちろん、街には色々な人が溢れていて、気をつけなければいけない事も多々有るのですが)

横浜港2008年11月20日 18:09

横浜港
今日、銀杏並木の美しさについ足が止り、ホテルモントレーのラウンジでお茶をしました。眼下の色づく銀杏並木を見下ろして、意外なコンパクトさに少し驚いたりしました。ラウンジはとても静かで、上海と横浜(両者は姉妹都市です)の街並の「大きさ」についてイメージが巡り、感覚の幅が広がったように感じました。

あらためて「世界の大きさ」があやふやになってきます。以前、度量衡の歴史をなぞった事が有りましたが、新たな思いで思い返します。「内なる宇宙」という言葉が有りますが、自身の中の広がり=世界の大きさ、とは少々浅はかでしょうか・・。

旅をするのは幸福について考えるため、とは何方の言葉だったかしらん?いつも新たな発見が有るのが、旅の好きな所です。

歩道橋2008年11月21日 12:07

歩道橋 柳宗理
今日もいい天気です。
天気のいい日はスタジオに向かう足取りも軽いです。寄り道する公園では、黄色が鮮かな銀杏(いちよう)、朝日を浴びて黄金色になった欅(けやき)、花と同じ匂いが微かに香る桜など、それらの葉が風にのってくるくる舞っています。

写真はその途中にある歩道橋です。今日は橋から富士山が見えました。(上の写真)

この歩道橋、最近知ったのですが、柳宗理さんのデザインです。(柳ファンの皆様、不勉強でごめんなさい)30年以上前に建造されたときはとてもカッコよく感じました。ベイブリッジが出来たときも、この歩道橋に似てる、と思ったものでした。今日も晴れやかな姿が美しかったです。

公式サイト
http://www.japon.net/yanagi/indexj.shtml

富士山2008年11月21日 12:20

富士山
先の歩道橋の上から見えた富士山です。
(携帯電話N80で撮ったものをトリミングしました。)

デジタル機器と過去の力2008年11月22日 07:41

あるデジタル機器の開発ミーティングで話題になった話です。その機器はデータをログしていて、それを時系列で有用なグラフィックに変換するものです。その機能から話題が転じました。

一枚の模造紙に、写真を貼ったり図に書いたりしながら自分の一生を表したものを壁に貼っておくことが、認知症の治療で効果があるそうです。自身の一生を俯瞰して、「あぁ、あの時はこんなことがあったな」「この時は辛かったけど頑張ったな」「旅行は楽しかったな」などと、思い出を懐かしむ事が脳の機能を回復させるのだそうです。(「回想療法」と呼ばれているものの一つのようです。)

医療についての詳しい事は判りませんが、人生の終盤において自身の過去を振り返ってみて、それを懐かしむ事が出来たなら、それはやっぱり幸福なことでしょうね。

話は飛びますが、ピニンファリーナのチーフでフェラーリなどのデザインをされていた奥山清行さんが、「成功者が最後に買うもの、それは「過去」だ」とおっしゃっていました。フェラーリの赤は血の赤、その血こそ開発者の歴史の象徴なのだとも。

話もっと飛びますが、「過去を幸福にする」ことがデジタル機器のこれからのテーマかもしれません、、て、飛躍し過ぎですね。このあたりはもう少し考えて見たいと思います。

Kiss on the beach!2008年11月23日 21:47

監視台
先日の歩道橋の写真をとった後、美しい公共建造物といえば、と思い出した写真です。

どなたのデザインなのでしょう、美しい監視台がありました。バルセロナの中心地にほど近いビーチで、2月の寒さも柔らかい晴天の日でした。夏の賑わいを静かに待つ、、というには明るい空の色ですね。実際も寂しさはなく、冬には冬の「情熱」があちこちに繰り広げられているのでありました。(写真は人影を避けてとりました。)

バルセロナといえばガウディですが、氏以外にもこの地方出身のデザイナー、アーティストが沢山いらっしゃいます。魅力的な風土の秘密を探りに、ぜひまた行きたい街です。

色の記憶2008年11月24日 19:40

照明 イタリア
空気が乾いて太陽が高い地域と、冷たく湿った雲の隙間から届く低い太陽とでは、全く同じ色彩でも違う色に見えます。さらにその風土に囲まれて、その環境の中に置かれて見れば、全く印象が異なります。かつて自動車のカラーにお国柄があったのも、そのような背景を持っていると教わりました。(もちろん、文化的な文脈の方が大きいと思いますが、それもまた風土からは切り離せないでしょう。)

また、「轢かれた車は赤く見える」そうですが、その時の精神状態が色彩の記憶に影響するそうで、これは詳しく研究しておられる方が沢山いらっしゃいますね。

デザインの中で、色彩を検討する時間が私はとても好きです。デザインのコンセプトに寄添って、お使いになる方々の記憶に語りかける色彩とは。。

風土と記憶。
色彩を、美しいだけではなく心に響かせるものにしたい私は、この二つを片隅で意識しています。

(写真はイタリア製の照明です。)

経験のデザイン2008年11月25日 23:39

UIのデザインで重要な事はいくつもあるのですが、今日話題になったのは「経験をデザインする」ということでした。スペックが変らなくても、使う経験が魅力的なものになる、ということの価値についてです。

この点は、アイフォンが市場に受け入れられてから随分と理解して頂けるようになりました。また、グーグルのような言語ベースのシンプルなインターフェイスの魅力も実感出来るようになりました。

話が変わりますが、かつてエアコンのデザインは限りなく透明なものを目処していました。事実、姿を見せないように設置するタイプは一定のシェアがあります。一方で形が作る空間の印象を大切にしている(ように見える)ものもありますね。特に暖房器具は、その形の印象はとても大切です。

現在の様々な機器のUIのうち、技術的な制約で表面に現れているものはどんどん見えなくなって行くでしょう。それでも表に現れて、私たちに関わる部分の核はどのようなものになるでしょうか?
それはもしかしたら、暖房機器における「使い勝手を通したあたたかさ」の感覚のように、その機器を使用することによって得られる価値をダイレクトに感じられる経験なのかもしれません。
dmc.
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