古さの価値2009年04月08日 11:30

中国からの留学生が、デザインについて「創新」という言葉を使っていました。20年以上前の事で、薄情なことに彼の名前も忘れてしまったのですが、この言葉だけはよく覚えています。
デザインは、言うまでもなく「新しい価値」を創造して行くことに意義があります。それを平易で率直に表していて気持ちがいい言葉です。

しかし一方で、新しいことだけに捕らわれているデザインが普通の生活を送る人にとっては意味を持たないことも忘れてはなりません。
アルマーニ氏はこの点を 「誰もやっていないとしたら、やる必要がなかったからだ」 と戒めています。

また、プロダクトデザインの草分けとして知られるレイモンド・ローウィ氏は、人々が受け入れられる程度の革新性を「MAYA段階」と名付けました。使う人たちが理解出来る事が重要なのだと説いています。
新しいことはもとより、使う人が満足して使って下さるか、喜んで下さるかが大切なのですね。当たり前のことではありますが、忘れないようにしたいです。


さて、デザインにおいては新しさと同じように「古さ」も大切です。心地よく感じる街や空間を想像して見て下さい。欧州や日本の歴史ある田舎町や自然豊かなビーチなどはいかがてしょうか?
「昔から変らない事」が、安心して心地よく暮らして行くことにとって、とても大切に思えてきます。これは「普遍性」といいかえた方が分かりやすいかも知れません。
もしそのデザインが普遍性を獲得できれば、穏やかに長く愛されることでしょう。
dmc.
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