暗い照明2009年10月01日 21:48

暗い照明 グッドデザインエキスポにて
上海に長く赴任してらした方がおっしゃっていたのですが、上海でマンションの窓の明かりを見ると日本人かどうかが判るそうです。曰く、日本人の家の窓は明るくて青白いから。
日本の家の明るさは、仕事も勉強も出来る明るさで、勤勉の証だとおっしゃる方もいました。

このお話と似たような事を聞かれた方、また実感された方は多いことと存じます。私も初めて欧州を旅行した時、飛行機から見える街の明かりが思いのほかほの暗くて黄色かったことを覚えています。レストランも最初は暗過ぎて不便だと感じました。

でもこの暗さが、慣れてくるといいんですよね。学生の頃、古民具を研究されている方に「囲炉裏の火が家族の会話には必要だった」と教わりましたが、今はその意味がわかるように思います。
売り場でも以前よりも落ち着いた明かりが好まれるようになったと聞きます。暮らし方が変わってきているのでしょう。

デザインが届ける2009年10月02日 16:08

「for the rest of us」(とり残された者のために)

このフレーズは、アップルコンピューターがMacintoshを発売する際のコピー「The Computer For the Rest of Us」の一部です。マックファンの間ではとても有名だそうですので、見聞きなさった方も多いことでしょう。

私はこの言葉は、デザインの一つの大きな役割をうまく表現していると思っています。
元々のコピーはいわゆる「デジタルデバイド」を越える(異論もあることと思いますが)というメッセージですが、デザインによって越えられる「隔たり」がデジタル以外にももっと有ると思います。

UI(ユーザーインターフェイス)はもちろん、UD(ユニバーサルデザイン)もデザインによって隔たりを越えようとする努力そのものですね。

歴史家によれば、技術革新のたびに文明の地図が塗り替えられるそうですね。文明は価値観を育み文化となって伝播していきます。その道程では必ず「the rest of us」が生まれてくるでしょう。もちろん、それは技術面だけではなく、文化、価値観においてもですよね。

話を難しくしてしまいましたが、『誰かが見つけた「いいこと」(=技術、知恵、美、用、笑、等々)を、別の誰かにわかりやすく、しかも気に入ってもらえるように届ける』というのがデザインの仕事なのではないかと思っています。

ビーチの図書館2009年10月05日 15:45

ビーチ図書館
横浜市金沢区の「海の公園」の砂浜で、ちいさな移動図書館が行われていました。東海大学のプロジェクトだそうです。

砂に板を突き刺し布を敷いただけのシンプルな椅子は、思いのほか座り心地が良く、潮風が気持ちよかったです。
夕方、少し暖かい格好をして月を眺めるのもいいなと思いました。

東海大学チャレンジセンター
http://www.u-tokai.ac.jp/challenge/index.html

「ユーザーインターフェイス」のデザイン2009年10月06日 16:03

昨日、さる方との会合で「ユーザーインターフェイスをデザインするということがわからない」とのことで、色々とお話を伺いました。「ユーザーインターフェイス」という言葉も、デザインする範囲もわかりにくい様でした。

実際的に「ユーザーインターフェイスデザイン」といえば、以下の様なものを対象とする事が多いです。

・携帯電話やカーナビなど、操作画面のある機器の操作に関わるボタンや画面

・銀行ATMや券売機と言ったような、システムの端末の操作に関わるボタンや画面

・ソフトウェアの画面 等々

また「ユーザーインターフェイスデザイン」は、デザイン開発における分業的な意味合いの強い名称でもあります。一つの製品やサービスの全体をデザインしていく中では、製品の外観や商品としての仕立てはまた、それぞれのプロフェッショナルがいます。

大ざっぱに言えば、上に挙げたものたちの「使いやすさ」と「感じの良さ」を手分けして考えていると言えます。

昨日の方は、この「使いやすくすることを考える」が「デザイン」という言葉のイメージに反していること、また様々な分業が存在することがイメージしにくくて混乱されているようでした。

しかしもちろん大切な事は、どのような過程でデザインされたものであっても、使う人にとって一番いいものであることですね。様々な思惑で分断されたものではなく、それぞれの分野の専門家が知恵を集めたものにすること。
このことこそ純粋な意味で「デザイン」だと言ってもいいと思います。

それを行うこと自体はそれほど難しい事ではないと思います。結局は「思い」を集める事ですから。
私はその「思いを集めて形にする」ことを「贈り物」だと感じています。使って下さった方が笑顔になることを願って、知恵を絞るのは楽しい事なのです。

過去記事:「デザインは贈り物」
http://dmc.asablo.jp/blog/2009/03/09/4162428

読書2009年10月07日 23:22

骸骨ビルの庭
想像力を働かせる楽しみ、人物の心の移り変わりを追う奥深さ、言葉の妙、結末の感動、余韻のあとに残る感覚、、物語を読むことの味わいは「楽しかった」の一言ではいえないものがありますね。

小説を読む事は娯楽ではありますが、「人間」が描かれているものであれば、読後に残るものは財産となるでしょう。それはデザイナーにとって得難い貴重なものだと感じています。

宮本輝著「骸骨ビルの庭」
10年に一度出会えるかどうかの傑作です。


骸骨ビルの庭
http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/gaikotsu/
dmc.
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