「世界を変える」2010年08月19日 23:59

ここ数年耳にするようになり、今年はそのものずはりの「世界を変えるデザイン展」がありましたね。
例えば最新のスーパーカーよりも電気自動車や極安自動車の方が注目されるように、美しいデザインや売れるデザインよりも、社会的意義のあるデザインが大きなトレンドとなっている様です。

弊社も同じ志向を持っていますが、実は私自身はこの言葉に懐疑的です。ひとつには「世界を良くする」という意味を内包してしまっているからです。

話は飛びますが、「ユニバーサルデザイン」や「エコデザイン」のように、デザインは時にその一面を強調されることがあります。その時代の問題点を前面に出すことで、デザインが支点となって状況を変えて行く力があるからでしょう。
ユニバーサルデザインは、細分化が進んだ市場を再び一つの大きな市場として再定義するのにも大きな効力を発揮しました。「誰でも使える」は、最大化の価値を志向した結果ですからね。

さて、今「世界を変える」と言われている背景は明確でしょう。それは日本の社会が方向性を見いだせないからであり、メーカーも何を価値として提示すればいいのか決めかねているからです。
だからわざわざ外国まで出向き、おせっかいにもそこの問題を解決しようとするのです。少なくとも私自身はその自己中心性を明確に自覚しておきたいと思います。
また求められているのは問題解決であり、もしそれができれば確かに世界は変わるでしょう。しかし、もちろんベースとして善良な方向を志向するとしても、それで世界が良くなるかどうかは別次元の問題だということ、これも忘れてはならないと思っています。

それを承知の上で、それでも出て行きたいと思っています。トレードオフの関係をトレードオンさせる視点、現場のニーズをトータルな解決策として提示する解決力、関わる全ての人が喜びを持てる求心力、、それら全てのデザインの力が求められている地域があるからです。
dmc.
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