超前向き2012年03月08日 23:59

今日、米国コロンビア大名誉教授のドナルド・キーンさんが日本国籍を取得したそうですね。
日本名は「鬼怒鳴門(キーン・ドナルド)」。ちょっと読み難いですが、「怒」がキーンの「ン」と、ドナルドの「ド」をかけているのがしゃれっ気でしょうかね。

キーンさんは、昨年インタビューに応えてこうおっしゃっています。

「不思議なことに、和歌や物語には古来、地震や津波がほとんど出てこない。自然の無慈悲を嘆いて廃虚のまま放っておかないで、何度でもそれまで以上のものを立て直してきた。それが日本人です。」

縄文時代には災害や人口増加の際に木舟で遠く南米まで渡ったという歴史が残りますが、農耕が伝わってからは荒れた地を捨てるということはなくなったのかもしれません。遷都する文化も大陸から来ましたが、かの地ではそのま遺跡となる古都も日本ではそのまま街として続いてますね。

狭い国土の中で育まれた超前向き思考、再認識しました。
昨日に引き続き土地との関わりに気持ちが傾いています。

今日一日2012年03月09日 23:59

もうすぐ一年、、振返れというメッセージが溢れています。当事者であればあるほどその言葉に違和感を覚えるかもしれません。それは何かがあった日ではなく始まった日だからで、それは今も続いています。

苦悩は時間を何倍にも感じさせますが、私も含め津波の被害を直接受けたわけではない方にも、長い一年だった方も多いことでしょう。
それは、広く当事者を強いる事態が続いているからですね。
政治とメディアはもとより、特にエネルギーと科学的知見といった社会のシステムを支えていたものが大きく揺らぎ、その余震が続いています。

社会のシステムは、これまでどんどん加速してきた短期的思考では決められない事ばかりです。中長期といいますか、自身の人生よりも長い時間について深く思慮しなければなりません。それはとても疲れることで、意志的でなければ悲観的な感情論に耳を向けたくなってしまいます。「悲観主義は気分のものである」というアランの言葉が身に沁みます。

しかし長い時間について考える事は自利的な思考では光の届かない距離で、必然的に自他の関わりを考えさせます。考え続けることは「対岸の火事」がいかに自分に関係のある事か、社会を自身の事として捉えると言う思慮を育みます。

私の身近でも少数ですが若者が日本を出ました。その判断がその方にとって正しいかどうかは(恐らく誰にも)判りませんが、自身の人生という長期的視野で行動を取ったことが素晴らしい事と思います。

去年の3月16日に私は「明るい未来にするぞ!」と書きました。希望的な事態を見いだし難いのも事実ではありますが、であればなおのこと、その思いが強くなっています。
そしてそれは今日一日、そのように過ごすということです。今日の積み重ねが一年であり、十年であり、百年ですものね。

過去記事:明るい未来
http://dmc.asablo.jp/blog/2011/03/16/

付加する価値2012年03月12日 23:59

デザインは「付加価値」という表現で、その意義を説かれることがあります。同じ価格同じ仕様の製品でも、デザインをすることで売上が上がったり顧客単価があがる事は多々あります。
この上乗せした金額が「付加された」という意味ですね。

もちろん、デザインに投資する分がありますから、同じ製品と言うのは便宜的な位置づけです。コストと利益の関係が違ってきます。
またデザインの範囲によっては全然違う「商品」になるので、価値を付加するというより、再創造という方が正しいのかもしれません。

ロンドンのビジネススクールに行ったと言う方から「デザイン投資1%増につき利益1%増」と教えていると聞きましたが、数字の真偽は別としましてもデザイン投資が商品にとっては欠かせないと言う認識の現れでしょう。
その見方からも、デザインは商品(ブランド)の骨格を造っていて、後から価値を付加する行為ではないといえそうです。

では何が付加されるのか。
それはその商品が、製品自体だけでなく、製造販売サービスも含めて隅々まで考えられた、理性においても感情においても納得出来る「素晴らしい商品である事」の保証です。

デザインは約束という価値を付加している、と言い直せそうですが、誰もが(限られた条件の中であっても)素晴らしいものを求めています。そこへ最善が尽くされ、実際にその域に達しているものは感動を持って迎えられます。それが出来ているかどうかがデザインに現れてしまうのですね。デザイナーとしてこの事実には真摯に向かい続けなければなりません。

カラフルなコンパス2012年03月13日 23:59

20数年前にお土産に頂いたドイツ製コンパス「Faber-Castell topline」です。
たしか統合前でしたので、80年代後半ですね。色使いがその頃の雰囲気です。

Faber-Castell topline

Faber-Castell topline
半径を決めるこのウォームギア(ネジ)の硬さがよくて、とても使いやすいです。

Faber-Castell topline
パッケージはこんな感じです。右下のレインボーも80年代的。

これを頂いた時の驚きを今でも思い出します。塗装によるグラデの色使いも製品のクォリティもこれを製図用品の市場に投じている事も、当時の日本とは随分と様相が違いました。
どちらがいいと言う事ではありませんが、スポーティさというのでしょうか、机の上に硬質なものが置かれる時の感覚の違いと言うものを感じたものです。

大分出番は無くなりましたけれど、これは今でも気に入っていて愛用してます。
時代の気分をぷんぷんさせながらも、今でも通用するってやっぱり凄いなぁ、、と思います。

いいなぁ、と思うこと2012年03月14日 23:59

デザインを出来るだけ平易に、と思ってはじめたのですが、最近の記事を読み返してちょっと難しいな、、と反省しております。

最も平易で誰でも納得いく言い方はやはり難しいのですが「いいなぁ、と感じるものを作る」のがやっぱりデザインだと思います。

この「いい」と思うものを、今だ見ぬままに想像し、感じ取り、形や仕組みや言葉やサービスに写しとる、、ということですね。

「いい」と思うのって誰でも出来てそれほど難しいことではありません。でもそれをひもといて、ほらねって見せられないと前へ進めないんですね。そのために、自分以外のだれかにとっての「いい」を想像する、その誰かの一人が自分でもある、というのがいいです。

うーん、、やっぱり難しくなってしまいます。修業が足りません。。
dmc.
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