三菱一号館美術館「KATAGAMI Style」 ― 2012年05月01日 07:53
先週末、丸の内の三菱一号館美術館で「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン もうひとつのジャポニスム」を観てきました。
開国後、シーボルトが大量に日本の物産をオランダへもたらし文化を紹介した事が直接間接的にジャポニスムの源流になった、と教科書にも書かれています。
あじさいに「おたくさ」と名付けたエピソードが有名なシーボルトですが、植物や地図だけでなく「型紙」も大量に持ち帰っていたのですね、初めて知りました。
江戸期、実際に使われた伊勢型紙が、売店で購入出来ました。驚き!
染物の文様を染め抜くための糊を、この型紙で反物に転写していました。
展示は江戸期の型紙とその染め付けたものたち、次にアーツ・アンド・クラフツ(英米)、アール・ヌーボー(仏・ベルギー)、ユーゲントシュティール(独等)と影響の広がりをなぞって行き、最後に現代の製品が並びます。
図録の表紙は「JAPANISE ART」の代名詞的な鯉と波、千鳥もいます。
(裏表紙は糸菊になっています)
各国の展示では、影響があったと推察されるものの中に、その手本であろう型紙が並べられています。その影響の関係性(実際にそれが見たのか、たまたま似ているのか)までは私には読み取れませんが、これはとても判りやすく、歩みを進める毎に国や地域ごとの影響の受け方の違いが感じられます。
エミール・ガレの家具たち。展示されていたものの保存が素晴らしかったです。
ミュシャ、ラリック、マッキントッシュ、、この時代に現れた優れたクリエイターがずらっと並んでいました。
ジャポニスム以外にもアジアからの影響が多く表れた欧州のこの時代に、型紙だけの痕等を辿るのは専門家以外には難しい作業かも知れませんが、江戸期に花開いた粋で艶やかな文様が、欧州米国で好んで受け入れられ、やがて逆輸入されていく様を眺めるのはとても楽しい事ですね。
また、開国後の興隆を象徴する丸の内で行われていることも趣向を添えています。そしてもし、実際に玄関口の一つであった横浜で行われたら、また別の面白味が加わっただろうとも思いました。
東京展は5月27日まで、京都展は7月7日から8月19日、三重展は8月28日から10月14日まで。
地下足袋で歩く ― 2012年05月02日 20:17
地下足袋を買ってきました。京都の伝統を活かした地下足袋とテキスタイルのSOU・SOUというブランドのものです。
先が割れているのが下足袋ならでは。
「こはぜ」と呼ばれる金具で留めます。
この留め方も地下足袋独特ですね。
お店には和モチーフのポップな地下足袋も沢山。
場所(ヴィーナスフォート)柄もあるのでしょう、女性のお客さんが多かったです。

箱。
履いた感じは地下足袋そのものです。
私は「素足感覚で歩く」履物が好きで、BIRKENSTOCK、NikeのFreeなど、色々と試していますが、その中で「素足感覚」に重要だと思いますのは、、
・親指の第二関節で接地する(感じ)
・指が自由に動く(感じ)
・締めつけや重さが少ない(感じ)
の3つです。
「地下足袋」はその中でもトップレベルの素足感覚です。(もちろんこの地下足袋も)
靴底が薄い分、アスファルトでは疲れやすい印象ですが、芝や土、砂浜、ウッドデッキなど、質感と起伏がある所では歩く楽しさを味わえる履物ですね。
この休みにはちょっと長い距離を歩こうと思っています。
雲の一日 ― 2012年05月07日 23:38
今年のゴールデンウィークは、地域によってはいつになく天候が乱れましたね。横浜も前半は雨が多かったです。
「晴れのち雨」の予報が出ていた4日、朝から晩までカメラを向けてみました。
雲が東へ西へと蛇行しながらやがて激しい雨となり、風が変わると雲が割れ、最後は星が見えました。
表情豊かな雲の一日、、時折窓から見上げる空に旅情を誘われていました。
「晴れのち雨」の予報が出ていた4日、朝から晩までカメラを向けてみました。
雲が東へ西へと蛇行しながらやがて激しい雨となり、風が変わると雲が割れ、最後は星が見えました。
表情豊かな雲の一日、、時折窓から見上げる空に旅情を誘われていました。
翌日のスーパームーン ― 2012年05月08日 23:59
初夏の香り 羽衣ジャスミン ― 2012年05月09日 23:01
森の中のテーブル ― 2012年05月10日 23:39
「日本のサービス」の輸出 ― 2012年05月11日 11:40
ドイツの品質
中国の価格
日本のサービス
中国のある大規模な眼鏡工場に貼られていたと言うスローガンです。数年前、一橋大学の関先生から教えて頂きました。
以来、ものづくりという言葉から抜けてしまいがちな「お客さまとのつながり」を意識させる視座として、おりに触れて引用させて頂いております。また、それぞれのデザインにおいてサービスまでイメージを膨らませる時にも意識します。
「サービスは輸出が難しい」という話を見聞きします。それは他国でそれを作り上げる難しさからなのでしょうけれど、上記の(少なくとも中国的な観点からの)認識からは、日本のサービスは世界で闘えるものなのでしょう。
実際、日本式のラーメン屋さん、コンビニが中国で店舗を増やしているそうです。欧州や米国など広く世界に先行する回転寿司、静かに浸透するコーヒーショップもあり、日本的接客を積極的に取り入れているのは本当かも知れませんよ。
私は「デジタルファブリケーションはものづくりをサービス業に変える」と思っているのですが、もし本当にそうなるとしたら「サービス業としての日本のものづくりが世界を席巻する」ということも有り得るのかもしれません。
ところで、「日本のサービス」をでまるごとパッケージして海外に届けられるプラットフォームがありました。「船」です。
現在の客船のコンテンツやサービスは英米に源流を持つものですが、日本的な旅のコンテンツとサービスを詰め込んだ客船があったら面白そうですよね?離れのある温泉に露天風呂、せせらぎに螢を追って路地裏散策、気が向けば町や自然を巡り、とびきりの料理を頂く、、。
ちょっと飛躍し過ぎですが、もちろん既存のスタイルも混在して、日本的なリラックスとあわせて時に応じて選べるといいなぁと思ったりしました。
中国の価格
日本のサービス
中国のある大規模な眼鏡工場に貼られていたと言うスローガンです。数年前、一橋大学の関先生から教えて頂きました。
以来、ものづくりという言葉から抜けてしまいがちな「お客さまとのつながり」を意識させる視座として、おりに触れて引用させて頂いております。また、それぞれのデザインにおいてサービスまでイメージを膨らませる時にも意識します。
「サービスは輸出が難しい」という話を見聞きします。それは他国でそれを作り上げる難しさからなのでしょうけれど、上記の(少なくとも中国的な観点からの)認識からは、日本のサービスは世界で闘えるものなのでしょう。
実際、日本式のラーメン屋さん、コンビニが中国で店舗を増やしているそうです。欧州や米国など広く世界に先行する回転寿司、静かに浸透するコーヒーショップもあり、日本的接客を積極的に取り入れているのは本当かも知れませんよ。
私は「デジタルファブリケーションはものづくりをサービス業に変える」と思っているのですが、もし本当にそうなるとしたら「サービス業としての日本のものづくりが世界を席巻する」ということも有り得るのかもしれません。
ところで、「日本のサービス」をでまるごとパッケージして海外に届けられるプラットフォームがありました。「船」です。
現在の客船のコンテンツやサービスは英米に源流を持つものですが、日本的な旅のコンテンツとサービスを詰め込んだ客船があったら面白そうですよね?離れのある温泉に露天風呂、せせらぎに螢を追って路地裏散策、気が向けば町や自然を巡り、とびきりの料理を頂く、、。
ちょっと飛躍し過ぎですが、もちろん既存のスタイルも混在して、日本的なリラックスとあわせて時に応じて選べるといいなぁと思ったりしました。
名も無き花、、なんてないです ― 2012年05月14日 07:52
写真は上から紫露草(むらさきつゆくさ)、桃色昼咲月見草(ももいろひるさきつきみそう)、躑躅(つつじ)です。躑躅は玄関先の植込ですが、露草と月見草は路傍に咲いていました。
当たり前ですけれど、花をつけていなければ雑草と言われてしまう路傍の植物たちにも、私が知らないだけで調べれば名前があります。紫露草は今回覚えました。
その名前を覚えると親しみも湧きますし、またよく気付くようになったりします。
お名前を失念してしまったのですが、米国の女性研究者のレポートに「名前を覚えると優先的に認識するようになる」という、感覚的には自然な法則が紹介されていました。なるほど。
ご近所には他にも春紫菀(はるじおん)や雛芥子(ひなげし)も咲いています。これからは蛍袋(ほたるぶくろ)や百合も。梅雨があけるまでのあいだ、沢山の花が楽しめますね。
当たり前ですけれど、花をつけていなければ雑草と言われてしまう路傍の植物たちにも、私が知らないだけで調べれば名前があります。紫露草は今回覚えました。
その名前を覚えると親しみも湧きますし、またよく気付くようになったりします。
お名前を失念してしまったのですが、米国の女性研究者のレポートに「名前を覚えると優先的に認識するようになる」という、感覚的には自然な法則が紹介されていました。なるほど。
ご近所には他にも春紫菀(はるじおん)や雛芥子(ひなげし)も咲いています。これからは蛍袋(ほたるぶくろ)や百合も。梅雨があけるまでのあいだ、沢山の花が楽しめますね。
BOP x 町工場 ― 2012年05月15日 23:59
成長著しいBRICsが注目を集めて久しいですが、とりわけ中国、インドは日本とのかかわりも大きく、デザインの現場でも耳目にする事が多いです。そしてここ数年、話題に上り始めたのがアフリカです。
中国インドに次ぐ投資対象としての可能性だけでなく、BOP(ボトムオブピラミッド)と呼ばれる、経済的には小規模ながら人口的には90%を越える人々とその方々の暮らす地域の問題解決において、そのデザインが一役かっているのですね。
2010年には「世界を変えるデザイン展」が行われましたので、BOPとデザインについてご存知の方も多いと思います。
しかし、中国は主要民族が10少数民族が55以上あり、インドは共通語の他に21の公用語があり、アフリカは56ヶ国と、それぞれ民族宗教言語で細分化されたローカルの集合と言えそうです。
これらの地域をひと括りの大きな市場と捉えて参入することの難しさは、日本大手企業の中国、東南アジア、インドへの進出の際の数多のエピソードからも拝察されます。
一昨年、私たちがチャレンジしたBOP向けデザイン開発に際しては(水や燃料といった共通の悩みが最優先されるのは当然のこととして)、それらの地域毎に異なる必然性の高いローカルな課題を、個々のプロダクトの開発案件として落とし込むとともに、現地で継続性のあるビジネスモデルと結びつけて行く必要があると感じていました。
一方、日本のものづくりの現場はメーカーとしての独立に挑戦しているところも多いながら、日本の市場自体が縮小と統合の段階であるため、成果が非常に出難い状況となっているようです。欧米の成熟市場への挑戦においても、最先端の技術を持つごく一部の企業以外は日本ブランド(日本であるということ)以外の決め手に欠いてしまうことも多いと聞いています。
また規模の大小に関わらず、世界的な視野で継続性のあるビジネススタイルが求められていることもあり、地域間格差を利用したビジネスは、中長期では現地ローカル企業に分があるといえそうです。
そこで、BOP地域の中で、恐らく虫食い状に点在するその地域ならではの開発課題を日本の中小企業がイノベーションの種として共有し、ソリューションを提供するリレーションをイメージします。
それぞれのソリューションは、開発を日本、調査生産販売サービスを(可能な限り)現地で行い、現地の経済と労働環境に与しながら、世界で闘えるものを作って行くことはできないか、、そんなことを夢想しています。
中国インドに次ぐ投資対象としての可能性だけでなく、BOP(ボトムオブピラミッド)と呼ばれる、経済的には小規模ながら人口的には90%を越える人々とその方々の暮らす地域の問題解決において、そのデザインが一役かっているのですね。
2010年には「世界を変えるデザイン展」が行われましたので、BOPとデザインについてご存知の方も多いと思います。
しかし、中国は主要民族が10少数民族が55以上あり、インドは共通語の他に21の公用語があり、アフリカは56ヶ国と、それぞれ民族宗教言語で細分化されたローカルの集合と言えそうです。
これらの地域をひと括りの大きな市場と捉えて参入することの難しさは、日本大手企業の中国、東南アジア、インドへの進出の際の数多のエピソードからも拝察されます。
一昨年、私たちがチャレンジしたBOP向けデザイン開発に際しては(水や燃料といった共通の悩みが最優先されるのは当然のこととして)、それらの地域毎に異なる必然性の高いローカルな課題を、個々のプロダクトの開発案件として落とし込むとともに、現地で継続性のあるビジネスモデルと結びつけて行く必要があると感じていました。
一方、日本のものづくりの現場はメーカーとしての独立に挑戦しているところも多いながら、日本の市場自体が縮小と統合の段階であるため、成果が非常に出難い状況となっているようです。欧米の成熟市場への挑戦においても、最先端の技術を持つごく一部の企業以外は日本ブランド(日本であるということ)以外の決め手に欠いてしまうことも多いと聞いています。
また規模の大小に関わらず、世界的な視野で継続性のあるビジネススタイルが求められていることもあり、地域間格差を利用したビジネスは、中長期では現地ローカル企業に分があるといえそうです。
そこで、BOP地域の中で、恐らく虫食い状に点在するその地域ならではの開発課題を日本の中小企業がイノベーションの種として共有し、ソリューションを提供するリレーションをイメージします。
それぞれのソリューションは、開発を日本、調査生産販売サービスを(可能な限り)現地で行い、現地の経済と労働環境に与しながら、世界で闘えるものを作って行くことはできないか、、そんなことを夢想しています。
薪をきれいに燃やす「BioLite Stove」 ― 2012年05月16日 23:45
昨日、BOPと町工場のソリューションの可能性を感じていることを少し書きました。その参考に「BioLite Stove」をご紹介します。
薪はそのまま燃やすと煙が出ます。その煙にはまだ燃やすことの出来る成分が多量に含まれています。効率の上でも環境性においても、その煙まで燃やすことが出来る方が良いことは明白ですね。この小さなストーブ(薪コンロ)は、その「煙まで燃やす」ことができるものです。
実は、一昨年参加撤退したBOPのプロジェクトでこのテーマに取り組もうと準備していました。
薪を燃料とする地域では、家の中で不完全燃焼させるため、煙害 による女性の健康被害が深刻で、地域の空気劣化も引き起こしています。以前より煙の出にくい炭焼きの提案がされていますが、かまどを新調する上に燃料代がかかり、更に炭の扱いも難しいため受容れられていません。
そこで、薪を無煙で燃焼させる技術を使ったコンロを家庭用に開発する事を考えました。この技術は「ウッドガスストーブ」と呼ばれ、北米等では以前からアウトドアに利用されていました。
当時私は不勉強で存じ上げなかったのですが、このアイデアを先行して開発されたのが「BioLite」です。アウトドアとBOP地域の意外な共通点に気付き、それぞれに最適なコンロを開発していますね。素晴らしいです。
http://biolitestove.com/
現在どのような課題があり、どのような開発が必用で、日本の会社はどのように関わるのがベストなのか、その時私はどの役回りが最も適しているのか、、それは今私が知っていることからは判りませんが、BOP地域のローカルなソリューションと日本の中小企業の技術をデザインで繋ぐプロジェクトには可能性を強く感じています。
薪はそのまま燃やすと煙が出ます。その煙にはまだ燃やすことの出来る成分が多量に含まれています。効率の上でも環境性においても、その煙まで燃やすことが出来る方が良いことは明白ですね。この小さなストーブ(薪コンロ)は、その「煙まで燃やす」ことができるものです。
実は、一昨年参加撤退したBOPのプロジェクトでこのテーマに取り組もうと準備していました。
薪を燃料とする地域では、家の中で不完全燃焼させるため、煙害 による女性の健康被害が深刻で、地域の空気劣化も引き起こしています。以前より煙の出にくい炭焼きの提案がされていますが、かまどを新調する上に燃料代がかかり、更に炭の扱いも難しいため受容れられていません。
そこで、薪を無煙で燃焼させる技術を使ったコンロを家庭用に開発する事を考えました。この技術は「ウッドガスストーブ」と呼ばれ、北米等では以前からアウトドアに利用されていました。
当時私は不勉強で存じ上げなかったのですが、このアイデアを先行して開発されたのが「BioLite」です。アウトドアとBOP地域の意外な共通点に気付き、それぞれに最適なコンロを開発していますね。素晴らしいです。
http://biolitestove.com/
現在どのような課題があり、どのような開発が必用で、日本の会社はどのように関わるのがベストなのか、その時私はどの役回りが最も適しているのか、、それは今私が知っていることからは判りませんが、BOP地域のローカルなソリューションと日本の中小企業の技術をデザインで繋ぐプロジェクトには可能性を強く感じています。
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