固有感覚のUI2013年05月29日 23:56

五感以外の感覚、いわゆる第六感とは「見えないものが見えてしまう」というものではなくて、固有感覚(運動感覚・身体感覚)のことだそうです。
自分の体がどうなっているか判る感覚のことですね。これが「感覚」にリストアップされなかったのは、自分自身である認識は感覚のベースと言えるからなのでしょう。そう思うと第六感ではなく第零感がふさわしいのかも。

この固有感覚、視覚や聴覚等の五感同様にデザインとの関わりがありますでしょうか?・・と思って見回しますと、いわゆる「道具の身体化」がありました。
バットや刃物といった道具から自動車や顕微鏡手術装置のような機械まで、自分の手足の延長のように感じて扱う「名人芸」「ゴッドハンド」は、訓練を通じて固有感覚が身体外まで拡張させたとイメージする事が出来ます。

また、セグウェイや介助補助装具(身体の外側に装着して力仕事を補う)のように、直接的に身体能力を拡張するものは、同時に固有感覚も拡張しているでしょう。
これは面白いなぁと思います。

一般にUI(ユーザーインターフェイス)には人とシステムの「対話」がベースにあります。「自然なUI」と形容されるタッチUIや研究中の「タンジブル」もそうですね。
しかし固有感覚を拡張するようなシステムは対話ではありません。対話している時間も、対話に必要なシステムとの関係性を意識する事も邪魔になります。
対話ではなく拡張、ですね。

UIの発展系としてUX(ユーザーエクスペリエンス:経験)が定着していますが、これが(一般的に言われる様に)ストーリーのデザインだとしたら、UXは対話型のインターフェイスに近いと言えそうです。
しかし、ストーリーを離れて、もっと本来の意味で「経験」を考えますと、固有感覚を拡張される方が遥かに面白いはずです。
前者を「特殊能力を持ったシステムを使いこなす経験」としますと、後者は「自身の身体に特殊能力が宿るような経験」と言えるでしょう。(理想的には、ですけれど)

身体感覚の拡張自体は既に沢山の前例がありますが、そこに「自動化」の視点にたってみますと、ひとつの形がありそうです。わくわくしてきました。
dmc.
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