ダメマシンクリニック04【カフェのトイレ:高機能化症候群および自社中毒の疑い】2015年11月28日 19:58

ダメマシンクリニック、次の症例は、前回の「カフェのトイレ」について、再診の結果をお伝えします。

(本文をお読みになる前に前記事(ダメマシンクリニック03【優先順位障害】)をどうぞご覧ください。)

ダメマシン04【続・カフェのトイレ】

04 カフェのトイレ 01
前回、Nさんにご投稿頂いた写真です。

04 カフェのトイレ 02
ーー『必ず使うはずの「流しボタン」と使わない人もいる「お尻洗浄ボタン」が同列に並び、かつ、必ず使う方の流しボタンが目立たなくなっています。』
ここには、ボタン配置の根本的な困難がありました。

ーー『さて、そもそもなぜこのような「わざわざ流すボタンの優先順位を下げる」ボタン配置になったのか、、という疑問が湧いて参ります。』
そして、この疑問が残りました。。


【重要参考品】

表参道のカフェ:

「何故あのような配置になったのか・・」という疑問を抱いておりましたところ、表参道のカフェにて大変参考になりそうなリモコンに遭遇しました。

04 カフェのトイレ 03
正面。
みなさん、上手く使えているのでしょう、ダメ出しはされていませんね。

04 カフェのトイレ 04
やや上から見たところ。

04 カフェのトイレ 05
関内のカフェのトイレ内にあったものと、流しボタンの配置に共通点を見いだせます。

後日、両者とも同じT社のものであると推定出来ました。同じ会社のものでしたら、同じ考え方でレイアウトされた可能性は高いと思います。

参考品を詳しく見て見ましょう。

04 カフェのトイレ 06
便座に座っている状態では、この様に見えています。

上面のボタンは見えず前面の四隅に「お尻洗浄ボタン」が見えます。
「座っている時に使うボタンだけを見せている」のですね。

04 カフェのトイレ 07
立ち上がる「流しボタン」が見えてきます。

04 カフェのトイレ 08
ここまでも、またここからも私見の域を出ていませんが、恐らくは「座った時にアクセスするボタン」「立った時にアクセスするボタン」を分け、それぞれの姿勢に近い位置にボタンを配した、、と推察出来ます。
これは状況に合わせて選択肢を提示すると理解しやすいという事実に裏付けられた考え方です。

何か説明があるかもしれません。T社のカタログを確認して見ましょう。

04 カフェのトイレ 09
T社では「トイレ」に関わるカタログ8冊(2015.11.28現在)をウェブ上で確認することが出来ました。その中にリモコン等の操作部の写真は36頁(前428頁)に登場していましたが、操作の詳細にわたる説明は見当たりませんでした。*
上のものがリモコンの代表的な3タイプになるようです。

04 カフェのトイレ 10
そのうちの2タイプが、今回の「関内のカフェのリモコン」「表参道のカフェのリモコン」と同じように「上面と前面にボタンを配置する」ものでした。
カタログからは上面のボタンが何かは識別出来ませんでした。)

04 カフェのトイレ 11
形状やデザインの考え方の類似から、上のような2つのラインナップが続いており、2012年頃モデルチェンジしたものと推察されました。

通常、前面だけを使ってボタンを配置した方が製造が容易で価格も安いです。そこをあえて上面と前面の2面を用いたのですから、「上面と前面の2面を使い分けるボタン配置」は相応の説得力を持った(もしくは持っていた)考え方だと拝することか出来ます。
その視点で見ますと「表参道のカフェのトイレ」は最も理解しやすいですね。

04 カフェのトイレ 02
しかし、ダメ出しされた「関内のカフェのトイレ」の方は、2面に分ける根拠となったと思われる状況に合わせて選択肢を提示すると理解しやすいが完全に崩れています。


【診断】


以降に述べる理由により【高機能化症候群及び自社中毒の疑い】と診断します。


高機能化症候群の疑い:

高機能化が様々な障害を引き起こすことをさしています。
俯瞰して見ますと、伝統的な位置に操作するもの(UI)がなく、壁の一部に多数のボタンが並ぶ状況は、ユーザーに高度な判断を求めます。本来、シンプルな手順であったものが、高機能化によって複雑化しました。高機能化がユーザーにとって価値のあるものであっても、ユーザーが煩わしいと感じる場合はこの診断が成り立ちます。

さらに、カタログ情報(詳細は割愛します)から、「自動洗浄便器」とも組み合わせて使うようになっています。自動洗浄便器専用ではないのですが、それでも高価格帯商品である自動洗浄便器を優先してデザインされるでしょうから、「流すボタンの優先順位を高くとらなくともよい」というバイアスがかかったかもしれません。
しかし、自動で流れることと、ユーザーが流したい時に流せることとは根本的に異なります。結果的に「流したい時に流せない」という障害が起きています。


自社中毒の疑い:

メーカーの統一的な意思決定や取り決めが、個別機種の事情により障害となることをさしています。
もしこのリモコンが推察通りに『「状況に合わせて選択肢を提示すると理解しやすい」という理由から上面のボタンが配置された機種の派生から生まれたとするならば、上面のボタンの並びが、その出自と矛盾してしまいます。以前の判断(上面にボタンを置く)と、該当機種の事情(狭い範囲にボタンを並べる)が障害を起こしていると言えます。

また、「自動洗浄の有無に関わらず同じリモコンを使う」というのは商品全体を通しての意思決定です。しかし、自動洗浄の有無によって手順が異なる(つまり、ボタンの配置が異なってくる)こととぶつかってしまうのです。


【T社の処方】

ここまでの推論は、あくまで「そう見える」というだけで、本当のところは判りません。それでも「ユーザーにとってメリットがある合理的な理由」があるとの前提で考察して参りました。みなさまは、それを「私のことを考えてくれている」とお感じになりましたでしょうか?
それとも、「ユーザーよりも他の事情へ気持ちが向いているのでは?」とお感じになられたでしょうか?
もしみなさまのお感じになったことが後者ならば、勇気を持って大きく遡り、修正をすべきなのでしょう。

あらためてカタログ内をつぶさに見ますと、新処方のリモコンが登場しておりました。様々な事情を勘案した上での力作と拝したいと思います。

04 カフェのトイレ 12
「流すボタン」が別物になっているもの、前面に大きく並んでいるもの。

04 カフェのトイレ 13
「流すボタン」と他のボタンの距離を置いたもの。


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ところで、少し前に「子どもがトイレを流さない理由」というネット記事が話題になりました。いわく、「家のトイレは自動で流れるので流すことを知らない」とか。
私たちは慣れ親しんだ方法で操作することを好みます。
日本では人口減、高齢化、海外からの利用者が増えて行く状況の中で、様々な人(つまり経験値の異なる人々)がここちよく使えるUI(ユーザーインターフェイス)デザインをしたいと思います。(できますよ、きっと)


ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.04
対象:カフェのトイレ
設置場所:横浜関内のカフェ
報告者:N.U.さん
報告日:2015.11.21
重要参考品:表参道のカフェ
報告者:ディーエムシー
報告日:2015.11.28
症例:高機能化症候群および自社中毒の疑い
ダメ度:××××(マシンの出自の事情による)
応急処置:-
治療方針:-


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個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。

*カタログ8冊のうち、アクセサリーのカタログは含みません。またページ数及び登場ページ数は目視確認ですので誤差を含む可能性があります。

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