ダメマシンクリニック06【Suica対応コインロッカー:説明失調および表示過多】 ― 2015年12月11日 14:08
ダメマシンクリニック、続いての症例はこちらです。
JR桜木町駅のSuica対応コインロッカーです。今回は対象が複数あり、複雑な状況になっていましたので、2回に分けてお送りします。
ダメマシン06【Suica対応コインロッカー 1】
改札内コンコース階段下のデッドスペースを活用したコインロッカーです。
多数の注意書きが目を引きますね。
詳しく見て見ましょう。
出荷時または出荷後に貼付されたものと、現場でワープロ打ちのものがあります。
1〜2:利用時間について(23時以降の取出不可)
3・7:控(チケット)のとり忘れ注意
4:割増料金について
5・9:Suica以外のICカード使用について
6:現金利用の場合の使用方法
8:誘導線
同じ情報、特に利用時間について何度も繰り返していますね。さぞクレームが多いことと推察されます。
精算機周辺と誘導線です。
3・7:控(チケット)のとり忘れ注意
4:割増料金について
8:誘導線
9:Suica以外のICカード使用について
誘導線は「レバーを下げてタッチパネルへ」とあります。重要事項と考えられますが、他の情報に圧倒されていますね。
6:現金利用の場合の使用方法
現金の利用についてのみ説明がありました。また「ガイダンスに従い」とありますから、ここに書かれた手順だけではないと感じられます。
画面のガイダンスには5つの言語、日・英・中(簡・繁)・韓の選択と4つのメニューがあります。
ガイダンスを詳しく見て見ましょう。
左上:スクリーンセイバーになっていて、画面にタッチするように促されます。
右上:「荷物を入れる」を選択します。
下:荷物を入れるまでの説明文と2つのイラストが交互に表示されました。
荷物を入れ、ふたたびガイダンス(=この画面)に従う様に言い渡されます。
(実際に入れる操作画面は後ほどご紹介します。)
左上:今度は「荷物をとり出す」を選択します。
右上:「鍵」を選択します。
左下:Suicaの場合はタッチして終了です。
イラストや説明が何についてなのか、とても判りづらい印象が残ります。
左上:「ご利用ガイド」はどうでしょうか。
右上:Suicaが大きく表示されています。
左下:ここでSuicaと現金の二つに枝分かれします。
右下:ここから細かく説明に入ります。右上の画面は省略が可能で、さらに現金が使えることが判りにくくなっています。雰囲気も情報も古く、Suicaが使えることをアピールする必要のあった頃のものかもしれません。
続きです。
こちらは現金の場合の説明です。
全体にタイトルがボタンの形をしていたり、イラストの描画が不足していたり、説明が細かく別れていたり、説明する内容の複雑さと表現があっていない箇所が目立ちますね。知りたい内容の全体像が大変掴みづらくなっています。
しかも、このバネルは一つしかなく、説明を読む長い時間(私はさっさと流して5分くらいでした)独占することになります。
急いでいる方(大抵の方が急いでいるようですが)にとっては、電車を一本乗り逃がす時間かもしれません。
さらに(この写真の撮影中に遭遇したのですが)この説明を表示中でもロッカーのレバーを操作すると、「荷物を入れる操作の画面」に突然切り替わるのです。
私が何が起きたか判らずにいると画面が消え、ロッカーのレバーの操作もキャンセルされてしまいました。立ち尽くす二人・・。
順番をゆずったところ「判らないから」と一緒に操作することになり、写真を撮らせて頂きました。
左上:ロッカーに荷物を入れレバーを下げると現れる画面です。
右上:決済情報とSuicaのイラストが大きく表示されています。
左下:チケットを受け取っている所てす。
左上の入れた場所の確認画面ですが、色が変わっているところを直接タッチしてしまいました。(正しくは右下のOKボタン)スマホが普及した状況ではミスリードになってしまっています。Suicaのイラストはやはり「ここにタッチ」というミスリードになっています。実際にここにタッチしておられました。
その他、短時間の間に3人の方から使い方を聞かれ説明させて頂きました。非常に判りづらく、そのため当然伝えにくかったです。
この大量の貼付物は、このくらいしないと気が済まないという気持ちの表れなのだろう、、とひとりごちました。
それではもう一度全体像に戻り、時系列に沿ってユーザーが何処で何に注視しなければならないかを見て見ましょう。
1:開いているロッカーを見つける
2:使用時間を確認する
3:使い方を確認して、操作パネルに向かう必要を知る
4:操作パネルへ移動して使い方を学ぶ
5:お金のやり取りをする
6:出てきたチケットを確認する
7:ロッカーに戻って施錠を確認する
「荷物を預ける」という一つの明解な作業を行うために、大きくは3つのエリア(ロッカー周辺・バネル周辺・手もと)で、7つの注意を要する情報に接する必要があります。
まず、欠かせない情報が多量に分散して配置されたことから操作方法の全体像が見えなくなっていることが大きいですね。
そして、それを補完するはずの表示が、分散している情報に付随させて繰り返し表示されたために、さらに混乱を呼んでしまっていました。
【診断】
説明の全体像が失われた「説明失調」および繰り返される表示から「表示過多」と診断します。
【処方】
では、処方です。
説明をまとめることを計画します。
処方01:貼付物全体の応急処置
応急処置(貼付物)では、以下の様にするのがよいでしょう。
・利用時間を最大限に大きく上に掲げる。
・操作パネルに追加する情報はバネルの上にまとめる。
表示を大胆にまとめまた処置です。
「葉を隠すには落ち葉の中がいい」というたとえ話がありますが、大量に貼られていることでそれぞれが打ち消しあっています。今必要な情報はどれなのか、必要な情報は全て手に入れたのか、、情報の全体像を隠してしまうのですね。
ですから、まず大量に貼られた状態をなくします。その上で、まとめられるだけまとめてしまった方が全体像は掴みやすいのです。
情報を大きく整理しますと「利用時間について」と「操作方法」に二分出来ます。
利用時間は遠くから見えた方がいいので、大きく上の方に掲示します。
次に操作方法についてですが、画面のガイダンスは大変判りづらいのですが、この画面を読まないと操作出来ないようになっています。そのうえ、画面から離れたところ(ロッカー)とを「行き来しながら正しい順番で正しく操作」しないとなりません。
このような場合は「ここに必要な情報は全てある」という状況(認識)がある方が安心して操作を進めることが出来ます。(操作中の安心感は極めて重要なことなのですが、それはまた機会を改めます)ですので、追加する情報も画面のすぐ上にまとめます。
処方02:内科治療
改善にはガイダンスの刷新が必要でしょう。
・普及している機器に倣ったUIを計画する。
・「説明」と「操作」を区分けする。
ガイダンスは改良の余地が多分にあります。(実際、最近の機器ではフップデートが重ねられていることと思います。)
ここでは、最も身近になった「スマホ」のUIを倣うのが賢明、と申し上げておきます。
・・・しかし、今回の応急処置ではあまり使いやすくはならない(クレームを回避出来ない)でしょう。また、ガイダンスをアップデートしても使えないと感じる方は残るでしょう。
ではどうしたらよいのでしようか。次回はその点をもう少し探って見ます。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 06
対象:Suica対応コインロッカー
設置場所:JR桜木町駅改札内
報告者:ディーエムシー
報告日:2015.12.10
症例:説明失調および表示過多
ダメ度:××××(マシン単体では処置し切れない)
応急処置:貼付物修正
治療方針:内科「ガイダンス再考」
皮膚科「表示計画再考」
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