ダメマシンクリニック20【シェアオフィスのコーヒーマシン(2/2):誘導失調-処方編-】 ― 2016年03月18日 15:15
こんにちは!
「春」が激しい季節となって随分と経ったように感じておりますが、今日の横浜のようなお天気だと、春ってやっぱりいい季節だなぁ、と。単純ですね(笑
ダメマシン20【シェアオフィスのコーヒーマシン-処方編-】
こちらのシェアオフィスの共用スペースに置かれたコーヒーマシンを【誘導失調】と診断しました。(詳しくは前記事をご参照下さい。)
今週は現場で対処出来る応急処置と、メーカーで変更対応ができる治療を処方します。
【処方】
では、処方です。
シーケンシャルな誘導をされている時、私たちは注意の範囲を絞りこみます。つまり目の前にある指示以外気を使わなくなるのです。その一方で前後の矛盾は感じとることが出来ます。
ですから、今何をするのかを明解にすることが大切です。そのために手順に沿った誘導と、各手順の明解な表示に改めます。また可能であれば注意を払う全体像が確認できるとより望ましいでしょう。
処方01:応急処置
左側のスペースを利用して、以下の様な誘導表示を追加するのがよいでしょう。
・手順をナンバリングする。
・ナンバー順に表示する。
・各手順の操作場所を明示(矢印)する。
正面から。水タンクと思われる左側のスペースを利用します。
5つの手順に分け、矢印で誘導します。
手作りの誘導だけで、この複雑な手順を説明し切ろうとしています。
ナンバリングは「順番を守りたくなる」心理的効果があります。その効果を頼り、上から下へ順番通り並べます。
矢印は表示された手順を何処で行うかを明示するためのものです。
特に手順の3と4は順番と位置が逆転していますので、すべきことの順番と、どこで行うかがともに明確に伝わることが大切なのですね。
さて、使いやすくなったでしょうか?
スマートなまとまりを欠き、読込むのに時間が掛かりますが、手作りの表示は既製のものよりも強い注意喚起力があることが判っています。効果を期待しても良さそうですね。
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さて、このシステムの特徴は飲みもののパックです。恐らく流通や衛生面、ユーザーニーズへの対処などから採用されたことと推察しますが、事業主にとってはこのパックを使うことが最重要なことでしょう。その前提を守った上で全自動のマシンをデザインすることも充分考えられますよね。(そしてそれはデザイナーにとってもやり甲斐のある楽しいことです)
しかしこちらは「ダメを憎んでマシンを憎まず」を掲げたクリニックです。現在のマシンの構成をできるだけ変えずに「誘導失調」の処方を試みます。
処方02:治療
「構成を出来るだけ変えない」という前提で以下の条件を設定します。
1)ハードウエアは、モジュールの変更、追加はしない。
2)ソフトウエア及び画面表示は、現在実行可能な範囲の修正追加を行う。
この条件を守りながら改善するために以下の様にします。
・本体に「100円」「コイン投入口」の表示を加える。
・本体ボタンとパックにマークをブリントする。・画面の文字サイズを大きくして指示を読みやすくする。
[条件の確認]
ハード、ソフトとも現状を参照していますのでその確認をします。
まず液晶画面です。
単色のドットマトリックスですね。表示されている一部を拡大し、ドットを数えて液晶の解像度を「128x64」と推定しました。(余談ですが、128は2の7乗、64は2の6乗と2進法に即しています。これは登載メモリーを最大限に活用するための伝統的な決め方です。)
次に液晶画面の表示の、ソフトウェアからの制限を見てみます。
文字は「カタカナ半角」のみの記載ですから、漢字やひらがなは使えないかもしれません。
ただし、イラストは表示可能。
このことから、文章をイラストとして表示することは可能と考えられます。
これらを勘案して処方したのがこちらです。
スタンバイの状態です。変わった所がお分かりになりますでしょうか?
少しよって見て見ましょう。
値段表示と「コイン投入口」を本体に表記します。
飲み物によって押す所が異なるボタンには、それぞれのマークをプリントします。
現在コーヒーと紅茶は同じボタンですが、余剰ボタンを活用してそれぞれ別ボタンに割り振ります。一対一対応になるとそれぞれの重みづけが平等になり、その方が見やすく、また判断しやすいです。
画面には最初の手順を大きめの文字で表示します。
128x64の解像度であれば、漢字ひらがな表記も可能です。(搭載フォントは使用せずイラストとしてデータ化されています)
また「100円」がユーザー側で変更するものなら「お金」でもいいかもしれません。
画面とここの表記から、購いたい人が「ここにお金を入れると始まる」と理解するのは容易ですね。
100円を入れると表示が切り替わります。
このように「ユーザーの操作を受けて誘導を切り替える」と、ユーザーは「自分のアクションがシステムに通じている感覚」が生まれます。(インタラクションの認知)
この感覚は大切で、この感覚が守られていれば最後までやり遂げるのが容易になります
ここでは「コップを置き」と「ボタンを押す」り2つの指示が同時に出されています。
シーケンシャルな誘導を行っている状況で、これはあまり良いことではありません。
コップは、パックを入れてカバーを閉める前ならいつ置いても構いませんので、お金を入れる時に誘導してもよいでしょう。
(条件をはみ出しますが、コップの有無のセンサーを設ければ万が一の事故を防ぐとともに、この手順を二段階に分けることが出来るでしょう。)
指示通りコップを置きます。
パックにも押したボタンと同じマークが入っていると判りやすいです。
イラストはパックの向きが分かりやすい正面とし、マークを大きく描きます。
この様な感じで入れます。
ここの入れやすさは、表示よりもカバー内のガイドの形状による所が大きいですね。
カバーを閉じると抽出が始まります。
動作音がしてやがて香りもたちますので、ここの表示は補佐的な確認が主な目的です。
終了すると表示が切り替わります。
動作音が消え、表示が明解ならコップを覗き込む必要はないでしょう。
いかがでしたでしょうか?
ちょっとしたことで大分印象が変わるものですね。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 20
対象:シェアオフィスのコーヒーマシン
設置場所:横浜関内のシェアオフィス
報告者:M.M./ディーエムシー
報告日:2016.3.18
症例:誘導失調
ダメ度:×(追加表示で対応可能)
応急処置:追加表示
治療方針:皮膚科「表示修正」
内科「誘導方針修正・表示修正」
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・明瞭な写真または動画(複数歓迎)
・設置場所とマシンの目的
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に)
・テプラなどの対処部分の写真と説明
※プロの方へ
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。)
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
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