ダメマシンクリニック21【ホームへ登るエレベーター:表示失調およびエクスキューズ過敏症の注意】2016年03月25日 13:30

こんにちは!

桜が開花しはじめましたね。さあ、と街に出かけてみましたが景色がぼんやりと滲んでおります。春霞にしては随分とぼやけるなぁと思いましたら、ものもらいになっておりました。(笑

さて、ダメマシンはしっかりと見て行きたいと思います。今回の症例はこちら、JR桜木町駅のホームへ登るエレベーターです。

エレベーターは以前、品川駅の構内病院内のもをご紹介しましたね。シンプルな装置のはずですが、ダメ出しされてしまうことが多いようです。

ダメマシン21【ホームへ登るエレベーター

21 ホームへ登るエレベーター 01
駅構内の改札のある地上階とホームのある上階を繋ぐエレベーターです。

21 ホームへ登るエレベーター 02
詳しく見て見ましょう。
1:操作の誘導(階ボタンを押す)
2:表示(停止階の指定)
3:表示(開閉操作)
停止階は2つしかなく、操作もそれ程複雑ではなさそうですが、3ヶ所の追加表示がされていますね。なぜでしょう。

21 ホームへ登るエレベーター 03
ダメ出し(テプラ)を一度剥がして見ます。

「↑」「↓」で停止階を指定するようになっています。上に表示が追加されていることからここがポイントと捉えて良いでしょう。厳密な言い方になりますが、今自分のいる場所と行きたい場所の空間的な関係性をイメージしないと理解出来ない表示です。
(私はエレベーター内の上部にある行き先を表す表示で確認しました。)

ホームが上にあるのか下にあるのか、そのちょっと考える時間を「煩わしい」と感じる方もおられるかもしれませんね。

21 ホームへ登るエレベーター 04
また、全てのボタンに方向を示す記号が使われています。
それぞれはそれ程不自然ではないのですが、意味あいの異なるボタン(階の指定と開閉操作)で、均一に並べられることで微妙な間が出来てしまいました。

ここで、「エレベーターの階指定」の例を見て見ましよう。

21 ホームへ登るエレベーター 05
京都九条駅のエレベーターです。(2011年頃
指定階のボタンに「上/下」が使われていますね。「非常電話」にダメ出しされていますが、階指定にはされていません。その状況から「上/下」という表記で伝わっていると捉えてよいでしょう。
ここで「上下という文字」が便利なのは、方向(相対値)を指すだけでなく位置(絶対値)も表すこと、でしょうか。
余談ですが、「表意文字」は絵から進化発展したものです。絵(=シーン)の持つ複層的な意味を明確に伝えるものですので、ほぼ同じような意味の記号(今回の場合は矢印)よりも確実さがあるといえます。


【診断】

停止すべき階がどちらにあるか少し考えさせる(状況にある)ことから「表示失調」と診断します。
また、仮に表示が無くても全く使えない利用者がいることは考えにくいこと、ほとんど必用のない操作誘導(1・3)が追加されていることから、「エクスキューズ過敏症」の注意が必用であることを添えておきます。


【処方】

では、処方です。
停止すべき階が明確になるように表示します。

処方01:応急処置
応急処置(追加表示)は以下の様にするのがよいでしょう。
もともとある「改札/ホーム」を強調する。
他の追加表示(1・3)を消す

21 ホームへ登るエレベーター 06

21 ホームへ登るエレベーター 07
指定階が明確になればよいので、その点のみ強調します。操作誘導(1)と開閉(3)は無くしましょう。余計な情報が無い方がより強調の意図が明確になります。

もともとある文字を隠すことに躊躇されるかもしれませんが、複数にある方が判りにくいので、思い切って重ねてしまいましょう。
また、注意を引く黄色はどちらか1ヶ所(今回はホーム)に使った方がより効果があります。


処方02:
治療
根本的な改善には(メーカーによる)同様の処置が必要になります。
「停止階」を数字で表示
エレベーター内上部の表示と揃える

21 ホームへ登るエレベーター 08
一般的なエレベーターは数字で表されていますから、それに合わせる方が自然でしょう。親切につけられた「改札/ホーム」の表示は、数字に添えることで理解しやすくなります。
また、上部の表示と揃えることでより安心して使うことが出来ます。


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ちなみに、九条駅のエレベーターのダメ出しについて。

21 ホームへ登るエレベーター 09
文字が馴染んでいる環境ですので、受話器のマークではなく「電話」としたら良かったかもしれません。
ただ、京都は国際観光都市ですから、今後は多言語を前提にした表記に整えられる方向と拝しております。


ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.21
対象:ホームへ登るエレベーター
設置場所:JR桜木町駅
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2016.3.25
症例:表示失調およびエクスキューズ過敏症の注意
ダメ度:×(適切な処置で改善する)
応急処置:表示修正
治療方針:皮膚科「表示計画再考」


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