ダメマシンクリニック27【有料老人ホームのピンク電話:表示失調及び継承不全】 ― 2016年05月06日 19:35
みなさま
こんばんは!
お休みに千葉県の手賀沼にサイクリングに行きまして、すっかり魅せられました。都心から近く自然と街がコンパクトにまとまっている魅力あふれる地域、またあの美味しいコーヒーを頂きにあがりたいと思っております。
さて、ダメマシンクリニック、続いての症例はこちらです。H.K.さんがフェイスブックにシェアされていた、石巻市の有料老人ホームで、そちらの玄関に設置されていたピンク電話です。
ダメマシンクリニック27【有料老人ホームのピンク電話】
NTTの公式サイトからこちらは「ピンク電話PてれほんCII」(もしくはPてれほんC)と推察出来ます。
「ピンク電話」とは「特殊簡易公衆電話」の通称ですが、商品名として使われていますから公式のものなのですね。
そして「特殊簡易公衆電話」とは、電話機を設置管理者が購入(以前はレンタルもあり)し、利用者から代金を徴収するタイプの公衆電話です。
ちなみに、電電公社が設置施設に管理を委託するタイプの公衆電話は「赤電話」でした。黒電話と赤電話の中間だからピンク、、これは想像です。(笑
詳しく見て見ましょう。
1:注意書き(お釣りは出ません)
コイン投入口の近くに小さく書かれていますが、見落とす方が多いのでしょうね。
【診断】
注意書きが利用者に充分伝わっていないことから「表示失調」と診断します。
また、後述する理由により「継承不全」を併記します。
【処方】
では、処方です。
「表示失調」は応急処置で対応しましょう。
「継承不全」は、こちらも後述するような根本治療が必要です。
処方01:応急処置
応急処置(追加表示)は以下の様にするのがよいでしょう。
・注意書きを正面に大きく表示します。
場所柄も考慮しまして、特に大きく、目立つように(この場合は本体の上につき出す形で)正面に表示します。文面は製品の注意書きをそのままか、利用者の方々によっては「公衆電話」を加筆しても良いかもしれません。
[継承不全]
さて、「継承不全」についてです。
何を継承しなかったのか、それはずばり「ピンク電話のイメージ」です。
こちらの電話は残念ながら「ピンク電話」に見えません。むしろ、家庭用電話機としてはありえる外観ですから、公衆電話にも見えていないかもしれませんね。
ピンク電話には社会的な共通イメージがあったものと推察されます。「ピンク電話ってこういうもの」というイメージですね、これを継承することが出来ていないのです。
では、「社会的な共通イメージ」の推移を確認するために、総務省のデータを見て見ましょう。
こちらは日本国内の1990年(平成2年)から2013年(平成25年)の電話契約数と公衆電話台数の推移です。
「ピンク色の公衆電話」は60年代からあり、85年の電話自由化まで活用されていました。自由化の後も携帯電話が普及するまで「ピンク」は存在し続けています。この25年から30年の間には共通イメージがしっかりと形成されたと思います。
しかし、2001年頃から移動電話の世の中になり公衆電話が消えはじめます。公衆電話そのものが珍しくなりはじめた2005年、ピンク電話から「ピンク」が無くなりました。
「白いピンク電話」が登場した2004年には、台数の差の何十倍も頻度の差が開いていたはずで、既にあまり使われないものとなっていました。実際に登場から10年以上が経った今でも、初めてご覧になる方が多いようです。共通イメージを形成するには遅すぎたと言えるでしょう。
あらためて、社会的な共通イメージがあるものは、、
・実際に使用したことがある利用者は経験の延長でとらえることが出来る
・使用したことがない利用者は、イメージにもとづいて判断出来る
このような「受け入れられやすさ」があります。
この利点を活用すれば、、
・使用頻度の低い「公衆電話」であること
・他に例を見ない「お釣りが出ない機器」であること
これらの理解を助けたでしょう。
頻度が低いものだからこそ、いざ使う状況となって迷わせないものが望ましいのです。
処方02:治療
継承不全の治療はメーカーに委ねられます。昔ながらのピンク電話をイメージさせるデザインはそう難しく無いはずです。魅力的なレトロフィーチャーデザインを成功させて欲しいですね。
処方03:治療(別の方法)
実は継承しない場合の治療法がもう一つあります。100円玉のお釣りが出るようにするのです。しかしこれはコスト、サイズ、管理面でハードルが高く、それらが変わらない限り現実的ではないでしょう。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 27
対象:有料老人ホームのピンク電話
設置場所:石巻市の有料老人ホームの玄関
報告者:H.K.
報告日:2016.5.6
症例:表示失調および継承不全
ダメ度:××(治療が望ましいが表示での対応が可能)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「外観再構築」または「機能追加」
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