ダメマシンクリニック33【雑居ビルのトイレ:適応症なし(ただし経過観察による再評価が望ましい)】 ― 2016年06月17日 09:09
おはようございます!
最近の、何事にも徹底してミスを許さない風潮は「不寛容社会」と呼ぶ傾向の一端だそうです。行き過ぎた不寛容は巡り巡って自分自身を苦しめることは、古今東西の知恵に照らしてみれば明白なのですから、いずれ大きな舵が切られることでしょう。
ところで、UI(ユーザーインターフェイス)においても、利用者の「寛容」をどの程度期待するかによってデザインが変わってきます。
最近のUIは(5〜6インチ程度の画面に接する時間が増えたことが原因と思われますが)大変視野が狭くなりました。一般に、不寛容な利用者は視野が狭いのも特徴です。最近の視野の狭いUIは、潜在的に不寛容を助長しやすいと捉えておいたほうがよいでしょうね。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、新宿の雑居ビルの男性用トイレです。
ダメマシンクリニック33【雑居ビルのトイレ】
「雑居ビル」というと不潔なイメージを想像してしまいますが、こちらは清掃が行き届いていて気持ちが良かったです。
しかし、小さくダメ出しが。何でしょうね、、
近づいてみますと、「忘れ物確認」と書かれた注意喚起。
ダメ出しされていたのはマシンではなく私(利用者)だったのです!(笑
運用側の意図とは別に、男性用トイレのこの段差は荷物を置くのにちょうどよいスペースなのですね。不特定多数の出入りする雑居ビルであれば一定の割合で忘れてしまう方がいるのはいたしかたないことでしょう。このような表示がなされたのも頷けます。
この控えめな注意書、なくても良さそうですし、うがった見方をすれば先回りのエクスキューズとして受け取ることができます。
しかし、テプラの都合ということもあるでしょうけれど、目立つように大きく「忘れ物注意」とせず、威圧的に「物を置くべからず」と禁止するでもなく、小さく「忘れ物確認」とした方の逡巡や思いやりといった面も感じられます。
【診断】
ここに物を置かせないデザインもありますが、ここはこれでバランスが保たれているのでしょう。従いまして「適応症なし」と診断します。
なお、このビルの環境、管理者、利用者などは常に変化していますので、「経過観察による再評価が望ましい」と併記します。
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ところで、このような「不要かもしれない表示」をみなさんはどうお感じになりますか?「親切」それとも「おせっかい」でしょうか。この問題提起は冒頭の「寛容」とも密接にリンクしてなかなか難しいのですよね。
話が飛びますが、労働の分け方に「肉体労働と知識労働(もしくは知的労働)」というものがありますが、最近はここに「感情労働」という概念が加わっています。自身の感情を使い顧客に奉仕するような労働、例えばアイドルとかCAさんとか、旅館の女将とかですね。クレーム対応をされる方もそうでしょう。さらに兵長やスポーツの監督もでしょうね。
労働ではありませんが、UIはマシンの知的な操作であり表示はその一部です。そしてここはとても大切なことなのですが、「感情面へのファーストコンタクト」でもあります。
これまで当クリニックが処方してきた例では、混沌を整理することがとても多いです。
「混沌が使いにくい」というのは当然なことですが、実は感情面の作用も大きいのです。「嫌だな」と感じたものへは疑心が生まれ、視野が狭くなり、トライする手数も激減します。負のスパイラルですね。
「加飾」という意味のデザインも感情面で有効です。しかしそれもネガティブファクターを取り除くことに成功しなければなりません。
(「あばたもえくぼ」の様に、愛情を感じると弱点も魅力になる、ということもありますが、ここでは割愛します。)
なお、「自動的なマシンが感情労働をしている」のでしたら、これらがいずれコミュニケーションロボットになっていくのはある意味必然と言えるでしょう。
「感情をデザインする」はUIデザインの大切な視座ですので、改めて心に刻みたいと思います。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 33
対象:男性用トイレ
設置場所:新宿の雑居ビル
報告者:ディーエムシー
報告日:2016.6.17
症例:適応症なし(ただし経過観察による再評価が望ましい)
ダメ度:-
応急処置:-
治療方針:-
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