ダメマシンクリニック39【自動注文食券販売機:誘導失調】2016年07月29日 12:40

みなさまこんにちは!

横浜は梅雨明けの夏らしい空が広がっております。近くの公園で虫取り網とスマホを両手に持った少年が歩いていきました。蝉とポケモン、どっちもゲットだぜ!(笑

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、兵庫のパーキングにあった食券販売機です。

ダメマシンクリニック39【自動注文食券販売機】

39 自動注文食券販売機01
一見、普通の食券販売機に見えますが、繰り返しアナウンスが流れています。

39 自動注文食券販売機02
詳しく見て見ましょう。
1:使い方の説明
2:使い方を説明するアナウンス

食券を購入すると注文内容が厨房に伝えられるので、利用者は厨房に半券を出す必要はなく席で待つ、、というスタイルですね。
この「厨房に半券を出さない」というところが、一般的な食券タイプの食堂と違うところです。なお、でき上がったら呼び出されるのは変わりありません。
看板をよく見ますと「自動注文」と書かれていますが、「自動注文」の意味が伝わっていないと推察できます。

さて、、これは何が便利になったのでしょう。整理してみますと、、
・利用者は厨房まで半券を出しに行かなくて良い
・結果的に、順番が守られる(と期待できる)
でしょうか。

対して、こちらでは、、
・利用者が販売機の前にいる時間が長引く。
 これは、「半券を出さなくてよい」ことを理解する時間が必要だと推察します。
・説明のアナウンスが繰り返されていて、うるさい。
・順番を含め、自分の注文が守られているかどうかは確認できない。
 (たまたまでしょうけれど、実際に私の注文は間違えられておりました。)

フードコートに混雑緩和のニーズがあることは確かですから、このシステムが生まれてきた背景は納得できます。
できますが、一般的ではないために、返ってストレスの原因になっているように見受けられました。


【診断】

食券購入後の行動を上手に誘導できていませんので「誘導失調」と診断します。


【処方】

では、処方です。
応急処置では、人の持っている対応力に期待した方法を処方します。
根本的な混雑緩和のためのソリューションとしてみた場合、マシン単体ではなく、場の設計を含めた創意工夫が望まれます。

処方01:応急処置
表示とアナウンスを以下の様にすると良いでしょう。
・遠くからも見える看板を注意書きとし、「次の行動」を明示する。
・「アナウンス」の音量を段階的に小さくし、最終的には停止する。

39 自動注文食券販売機03

39 自動注文食券販売機04
意味の伝わりにくかった看板を「食券購入後、そのままお席でお待ちください」という誘導に書き換えます。この注意書きは厨房付近にも掲示するとより効果的でしょう。

ただし、この方法は、システム全体を理解するのに時間がかかる事は解消できていません。時間がかかるのであれば、券売機の前で佇んでしまう(=他の利用者の妨げになる)ことを防止しすること、次の行動を促すことでできるだけ流れを加速させることを目指すべき、と判断しました。

アナウンスの実効性は十分ありますが、食事をとる空間としてはとてもストレスを感じるものでした。これは段階的に停止しても良いと考えます。
それは、「人は他の人の雰囲気から状況を察する」からですね。

たとえば、混雑する時間帯の駅で、プラットフォームに人が少なかったら電車が行ってしまったばかりだと感じるでしょう。入ってきた電車の一両がガラガラなら、何かトラブルがあったと避けるでしょう。また、イベント会場にフリーパスで入る人と並ぶ人がいたら、自分がどちらなのかは持っているチケットで自ずと識別するでしょう。
このような「雰囲気から情報を得る仕組み」(「シグニフィア」と言うそうです)がありますので、大勢の利用客がいる場所では、他の利用者の行動がヒントとなりえます。

この「雰囲気から情報を得る仕組み」はもっと利用されてもいいな、、と考えることが多くなりました。


ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.39
対象:自動注文食券販売機
設置場所:兵庫県パーキング施設のフードコート
報告者:ディーエムシー
報告日:2016.7.29
症例:誘導失調
ダメ度:××(表示で限定的な対応可)
応急処置:表示修正 アナウンス停止
治療方針:場を含む包括的な治療計画が必要。


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