ダメマシンクリニック43【電子マネーチャージャー:誘導不全】2016年08月26日 12:13

みなさまこんにちは!

台風がV字ターンを決めるそうで、、進路が予想される方は十分注意してお過ごしください。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、M.F.さんからご投稿頂きました、東急東横線武蔵小杉駅の電子マネーのチャージャーです。
Mさん、ありがとうございます!

投稿内容はこちら(写真とも)
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43 電子マネーチャージャー01

43 電子マネーチャージャー02

【電子マネーチャージャー】

東急武蔵小杉駅で遭遇しました。
まず「ICカード入れちゃダメ!」というテプラが迎えてくれます。
そして「カードはすぐに取っちゃダメ」のオンパレード。
どうぞ診察をお願いいたします。

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首都圏にタッチ式の電子マネーが登場したのは2001年のSuicaからで、東急ではPASMOを2007年から順次導入しています。これまでの間に、十分に一般に認知され、またシステムも更新されて洗練してきたと思われますが、沢山のダメ出しがされていますね。

ダメマシンクリニック43【電子マネーチャージャー】

早速、詳しく見て見ましょう。

43 電子マネーチャージャー03

43 電子マネーチャージャー04
1:表示と注意書(チャージ専用マシン・カードの取り扱いについて)
2・4・8・10・1:注意書(カードを早取りしない)
3:注意書(カード挿入禁止)
5・9:誘導(カードを置く)
6:注意書(カードの取り忘れ・領収書)
7:誘導画面(カードを置く)
上記1〜5は管理者(駅員さん)によるもの、6〜は設置時(もしくはその後)に共通して用意されたと思われるものです。全てカードについてのもので、その半数以上(6点)は「カードを早取りしない、動かしてはいけない」ことが繰り返されています。

相当数の方がカードの取り扱いに迷うマシンとなっているようですね。
誤操作は、、
・カードを置く場所がわからず紙幣投入口に入れてしまう
・カードを早取りしてしまう(完了前に動かす)
の二点に集約されるでしょう。

先に書きましたように普及期間を十分に経ているシステムですから、利用者はある程度マシンの操作に慣れている(程度の差があっても)と捉えて良いでしょう。
この様な状況では「慣れた使い方と違う」ということが混乱を起こしやすいです。(例えばこちらの例のように)

ということでSuicaを確認しました。

09 改札内の新幹線券売機 01
こちらは品川駅構内の券売機です。Suicaはカード挿入口に入れるようになっています。

JR東日本のサイトの「利用方法 > 入金(チャージ)」には「1. 自動券売機・多機能券売機にて現金投入前にカードをお入れください。(以下略)」とあります。

Suica利用者なら普段使い慣れた「カードを挿入口に入れる」という行動を無意識的にとってしまうのも無理はないですね。武蔵小杉駅はJRと接続していますので、この「カードを置く場所がわからず紙幣投入口に入れてしまう」という状況が多発しているのでしょうね。

(比率はわかりませんでしたが、券売機に限れば、東急、京急、西武、東武、京成でも挿入式のものが導入されているようです。)

もうひとつの、最もやかましくダメだしされている「カードを早取りしてしまう」はどうでしょう。先の考察から、こちらは逆に「慣れない操作」として見た方が良さそうです。
一度注意書を取ってみましょう。

43 電子マネーチャージャー05
ICカードを置く場所(センサー部)は右手前に大きくあり、存在感がないとはいえませんね。置くのであればここだということは伝わっていると考えられます。よく見るとカードが滑り落ちないような段差にも気付くことができます。
しかし、はたしてここにおいて良いものかどうか、、ちょっと不安が残る姿をしています。

「アフォーダンス」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
私たちは、接した物の姿形から「どの様に振る舞うべきか」を無意識にイメージすることがあります。この「どう振る舞うかをイメージさせる姿形」は「アフォーダンスがある」と言います。
この視点で見てみますと、、

43 電子マネーチャージャー06
ボタンは置く形、画面は見る形、挿入口は出入りする形、、など操作とイメージが合致するものが並んでいますが、センサー部だけ「置く形」ではなく、「タッチする形」になっています。
「タッチする形」とは斜めに傾いたセンサーのことですね。多くの方は「斜めに傾いたセンサー」を前にすると「暫くかざす・触れる」行動を取ることがSuica導入期にユーザーモニターでも明らかにされました。

難しい言い方になっておりますが、要するに「斜めの台の上にカードを置きっぱなしにするイメージはない」、ということです。
また、物理的に不安定なので手が当たって落としてしまうということもあるかもしれません。
金券を不安定なところに置きっぱなしにするのは不安ですものね。何かのタイミングで取って(仕舞って)しまうのも無理がないと考えます。


【診断】

「券売機」という認識においては、ICカード(電子マネー)を挿入させずにセンサー部に置くというのは「特殊な扱い方」です。それをうまく誘導できず、誤操作を頻発していますので「誘導不全」と診断します。


【処方】

では処方です。「置く」誘導を強化し、散在する情報はまとめて整理しましょう。

処方01:応急処置(枠と表示の追加)
以下の様にします。
・透明版を加工して凹状の枠を設置する。
・センサー部に大きく注意書(誘導)をする。
・「紙幣投入口」を表示する。

43 電子マネーチャージャー07
設置時に追加されている表示はそのままにしてあります。

43 電子マネーチャージャー08
全体を見た時に「カードを置く」ことが一番目立つように、できるだけ大きくします。もともと光って目立つ部分ですので、枠と表示は透過素材が良いでしょう。
カードを挿入してしまいそうになる紙幣挿入口には、それを明示します。これまでも取り上げていますが、紙幣なら紙幣、カードならカード、と「使用可」のものを書くのが望ましいです。

現場で対応できそうな方法としては以上となりますが、「置く形」をもう少し検討してみます。


処方02:治療
「センサー部にカードを置く」方法をとる場合は、メーカーにて「置く形」を取り入れるとよいでしょう。
・センサー部を「置く形」である水平な台にする。
・注意書は操作するすぐ近くに表示する。
・「紙幣投入口」を表示する。(処方01)

43 電子マネーチャージャー09

43 電子マネーチャージャー10
「置く形」は、机や台などの水平面があることが大切でしょう。中央がへこんだ薄い器の形にしても良いかもしれません。

ただ、いずれの方法をとりましても「カードを入れる形」としては紙幣投入口の方が一般的ですので、それとの対比においてアフォーダンスが弱いことは否めません。

ところで、そもそもカードを挿入式にしなかったのはなぜか、という疑問をお持ちの方も多いでしょう。考えられるのはモバイルSuica(等のFeliCa内蔵機器)の現金によるチャージですね。もともとチャージマシンを使わずに入金できるのがサービスの特徴なのですが、それでも現金をチャージしたいという場面はあるかもしれません。(特にクレジット機能のない「EASYモバイルSuica」ならなおのこと)

このチャージマシンがモバイルSuica対応かどうかは確認できていませんが、関西圏のICOCAのチャージマシンはカードをスライドして入れるタイプ(下)になっておりまして、ここにFeliCa内蔵携帯を押し当ててチャージすることはできるようです。

ICOCA JR西日本より

とはいえ、モバイルSuicaが普及した現在でも頻度が高いとは言えず、置くスタイルは「あったら便利」という範囲と考えるのが自然といえるでしょう。


処方03:治療
より多くの利用者さんが便利に使えるよう、ICカードは一般的な挿入式を加え、以下の様にすると良いでしょう。
・カード挿入口を設ける。
・センサー部を水平な台にする。(処方02)
・現金投入、ICカード、受け取りのエリアを分けるように再配置する。
・注意書は操作するすぐ近くに表示する。(処方02)
・「紙幣投入口」等を表示する。(処方01)

43 電子マネーチャージャー11

43 電子マネーチャージャー12
エリアを操作のステップや概念毎に分けると理解しやすく誤操作を軽減することができます。ここでは、金額確認表示も合わせて左側に寄せ、チャージするICカードは右にまとめました。

このマシンであれば実際の使用状況を観測することもできますから、将来的なシステム設計の貴重な情報を得ることができるでしょう。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.43
対象:電子マネーチャージャー
設置場所:東急東横線武蔵小杉駅
報告者:M.F.
報告日:2016.8.29
症例:誘導不全
ダメ度:××(治療が望ましい)
応急処置:表示修正
治療方針:整形外科「水平台造形」
     外科「再配置/挿入口加設」



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・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
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