ダメマシンクリニック55【引き戸の自動ドア:誤設】2016年12月02日 23:59

みなさまこんばんは!

師走になりまして街のあちこちに年末らしい空気が流れ始めました。気ぜわしい気持ちをちょっと引き締めるきりっとした空気、私は結構好きです。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、温泉施設内の引き戸タイプの自動度ドアです。

ダメマシンクリニック55【引き戸の自動ドア】

55 引き戸の自動ドア01
浴場の入り口が自動ドアになっていますが、複数個所ダメだしされていますね。

55 引き戸の自動ドア02
詳しく見て見ましょう。
1〜3:誘導表示(スイッチ)
何ヶ所も「スイッチを押して」と誘導しています。
このちょっとした距離が、利用者さんを惑わせているのですね。

ただ、自動ドアのスイッチは戸(扉)の取っ手のある位置にあるのが一般的です。何故そうしなかったのでしょう、ここでは特別な事情があるのでしょうか?ちょっと調べてみました。

55 引き戸の自動ドア03
逆側は戸の上に設置されています。
こちら側にもダメ出しがありますね。(4)

55 引き戸の自動ドア04
戻って全体を見ますと、やはりそうでした。
戸が全開した時に、戸の上にスイッチがあると段差に当たってしまうのですね。それでスイッチを戸の上から避けた、というのがこちらの事情のようです。

ここで設置時の状況を確認してみましょう。

55 引き戸の自動ドア05
このスイッチの位置、一見悪くなさそうにも思いますが絶妙に遠いんですね。
実際に、自動ドアとは思わず手をかけて開けようとした、という傷跡が沢山ついています。木製の大きな戸ですし、目の前に立っても開かないですから、「これは手動の引き戸である」と思えてしまうのでしょう。

思い返しますと、自動ドアが登場した時は、取っ手の位置に「自動」と書かれていました。今でも多くを見かけることが出来ます。その後、センサーではなくスイッチで開閉させるタイプのものが登場しますと、取っ手の位置にあった表示がスイッチになりました。
ここで大切なことは、スイッチの「自動」という表記が、「ここは自動ドアである」という表示を兼ねていたということです。

今回の症例を見ますと、スイッチが視野の中にあっても「ここが自動ドアである」ということを伝えられる場所が実に狭い範囲だということが判ります。なかなかシビアですね。


【診断】

スイッチの位置が混乱の原因ですので「誤設」と診断します。


【処方】

では、処方です。
応急処置では誘導表示を行います。
治療はスイッチを適正な場所に移設するのがよいでしょう。

処方01:表示による応急処置
表示を以下の様にします。
・複数が散在している現在の追加表示をなくす。
・目に付きやすいところに一ヶ所、大きく表示する。

55 引き戸の自動ドア06

55 引き戸の自動ドア07
戸とスイッチの間に大きく誘導表示をします。
手動と思って手を伸ばした先の視野に、誘導表示が入りやすいこの位置がベストです。
表示を一つに絞るのは勇気がいりますが、迷わせる要素がないことの方が大切なのですね。

また、この図のようにパネルを使って戸とスイッチの間を埋めることができますと、戸とスイッチの関係性が強く感じられます。(接続される、とも言えます。)


処方02:応急処置
応急処置ではありますが、メーカーではなく現場にて可能な治療方法があります。スイッチを戸のごく近くに移設させるのです。
・戸のすぐ横、枠の上にスイッチを移設する。
・この際、スイッチが設置できるよう壁との段差を埋める台座を加設しておく。

55 引き戸の自動ドア08

55 引き戸の自動ドア09
手が行く場所に出来るだけ近く設置することが重要です。
移設する「枠」は戸の一部と捉えることも出来ます。台座を木質で作るなどして、出来るだけスイッチが「戸の一部」と感じてもらえる様工夫しましょう。


処方03:治療
根本的には、メーカーにてスイッチを戸の上に移設するのが望ましいです。
・戸の上、取っ手のある位置にスイッチを移設する。
・戸が全開してもスイッチが当たらないよう、戸の移動量を調節する。

55 引き戸の自動ドア10

55 引き戸の自動ドア11
これが自然ですね。

ただ、停電などで戸を力づくで開ける場合などは、スイッチが段差にあたって壊れることもあり得ます。そのような場合に備えて物理的なストッパーの加設もあるとなお良いでしょう。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.55
対象:温泉施設の引き戸の自動ドア
設置場所:長野県南西部
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2016.12.2
症例:誤設
ダメ度:××(応急処置で対応可能だが治療が望ましい)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「移設」「移動量調整」



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