ダメマシンクリニック80【エアコンのリモコン:複合性誤誘導および表示失調】2018年04月23日 18:00

みなさま
こんばんは!

昨日の晴れた日曜日、Tシャツで自転車に乗り、気分はすっかり夏でした。気持ちよく汗をかいて戻ると、部屋が少し蒸して感じられました。
「さて、今年初のエアコンを」とリモコンを手に取ったところから、今日のダメマシンクリニックが始まります。

ダメマシンクリニック80【エアコンのリモコン】

エアコンをつけようとしたかみさんいわく「電池変えたんだけどどのボタン押しても動かないの。リモコン壊れたみたい。」と。久しぶりなので電池切れしており、それを交換したところ壊れていたのを見つけたそうです。

その時のリモコンは時刻の設定を促す画面のまま固まっていました。

80 エアコンのリモコン01
この状態で画面が固定されていて、点滅などの動的な表現はありません。

80 エアコンのリモコン02
画面すぐ下の十時キー周辺だけではなく、ここに見えているどのボタンを押しても反応がありません。

80 エアコンのリモコン03
画面をよく見ますと「変更【△▽】→【確定】」と書かれています。
やはり十字キー(△▽)の操作で良さそうですが、どこを何度押しても反応はありません。「運転/停止キー」を押してもエアコンはつきません。

ここまで触ってみますと「表示の通りに操作しても動かない。どこを触っても反応がない。壊れた。」と思うのはごく自然なことのように思います。

80 エアコンのリモコン04
しかし、下部のカバーを開けたところにあるタイマー設定キーを触ると反応しました。正解はカバーの下だったのですね。ここで時刻を設定したあとは通常通りに使えました。故障ではなかった、ということですねぇ。先ほどの画面表示を見返しますと、「△▽」「確定」がこのキーをさしていたことがわかります。わかりますけど、、ふむ。

80 エアコンのリモコン05
ここでリモコンを俯瞰して見ますと、大きく上下に別れたレイアウトになっています。
上の範囲は「画面/十時・決定キー/運転・停止キー」となっており、いずれも大きく押しやすい位置(手に持った時に親指が届く範囲)にレイアウトされていますので、ここが「主な操作を行う」範囲と受け取れます。
対して下の範囲は「温度/風量/お知らせ/冷房/暖房/除湿/送風」と機能を直接操作できるキーが連なっており、ここは「操作を細かく行う」範囲と受け取れます。

この「大きい基本操作パネル」と「小さくてショートカットキーが並んだ操作パネル」の対比は、「上の範囲を触っていれば行いたいことが出来、操作に詳しければ下の範囲でさらに使いこなせる」という印象を持たせます。

これらのことから、ほとんどの人が最初に十時キーを触る(可能性1)、つまり操作を間違えると言って差し支えないでしょう。

その後は人によって、、
可能性2:他のボタンを触る →動かない
可能性3:画面をよく見る(熟読する) →十時キーを触る →動かない
可能性4:カバーを開ける →タイマー設定キーを触る →動く
などの可能性を試すでしょう。
もちろん、すぐカバーを開ける勘のよい方もおられると思いますけれど、可能性を3つ試しても動かない場合、諦めてしまう方も少なくないのではないでしょうか?


【診断】

いま見てきましたように、誤誘導してしまう状況が重なっています。整理しますと、、
1)配置性の誤誘導:キーレイアウトから十字キーを触らせる
2)表示性の誤誘導:文字表記が十字キーを触らせる
3)遷移性の誤誘導:時刻を確定しないと操作不可能な設定が判断を誤らせる
従いまして、配置性、表示性、遷移性の3つが重なる「複合性誤誘導」と診断します。
また、画面内の表記が意図と反していますので表示失調」を併記します。


【処方】

では、処方です。
今回は応急処置ではなく、メーカーによる操作設計と表示の改善を処方します。


処方01:操作設計変更
操作設計を以下の様に見直します。
・時刻を設定しなくても動作するようにする。
・十時キーでも時刻が設定できるようにする。

まず、「用意すべきハードが揃ったら動作する(ここでは時刻を設定しなくても使える)ことがとても大切です。エアコンのスイッチが入ったあとでも時刻設定は充分間に合います。
むしろ、快適な状況でゆっくり設定してもらう方がストレス無く使って頂けるでしょう。
設定を促すことと強制することを明確にわけて考え、普段使いでは「設定を促す」に留め、時刻を設定しないと使えないタイマー機能などの時に、時刻設定画面に誘導して設定できるようにすると良いでしょう。

その上で画面との相性が良い十時キーを活用します。現在の十字キーは風向の設定のみに用いられていますが、画面に表示されている内容は全て操作できるようにします。
ここではもともとのキー操作は変更せず、十時キー「でも」使える、ということが望ましいです。リモコン下部の「ショートカットキー」と「十時キー」で機能の振り分けをしないほうが誤操作する可能性が減るからですね。

しかし操作設計の変更には一定の時間がかかるでしょう。
そこで、それまでの応急処置を処方しておきます。


処方02:表示追加
誤操作時の表示を以下の様にします。
・正しいキー操作を促す誘導を表示する。
・誘導はイラストを併記して視覚的にわかりやすくする。

80 エアコンのリモコン06

80 エアコンのリモコン07
今回のポイント、キーがカバーの下にあることを図示します。
誤操作をした際は、操作に対するリアクションがあることと、それが次の操作のヒントになっていることが大切です。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.80
対象:エアコンのリモコン
設置場所:横浜 一般家庭
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2018.4.23
症例:複合性誤誘導および表示失調
ダメ度:××(応急処置不可)
メーカーによる応急処置:表示追加
メーカーによる治療:操作設計変更(外科)



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