ダメマシンクリニック85【コンビニの新型コーヒーマシン:配置性表示性干渉障害】 ― 2020年03月06日 17:23
ダメマシンクリニック85【コンビニの新型コーヒーマシン】
ダメ出しの表示(1·2·4·5)からは、どちらがホットかアイスかわからないい状況が多いことがわかります。ボタンの発光色がホットとアイスで変えられていますが、視野の中心から外れているため訴求に欠けていて、目視ですと写真以上にコントラストが弱いため、中央の目を引く大きな写真が(発光色による認識を)打ち消してしまうのでしょう。
次にボタンの目隠し(3·6)をみますと、使用不可のボタンを誤操作してしまう状況を示しています。もしかしたら3と6は使用不可なのに発光しているのかもしれません。
しかし、フル機能のマシンの左の1番下は点灯しているのに隠していないですし、右の下から2番目は点灯しています。さて、点灯と消灯の意味、隠されたボタンの機能はどうなっているのでしょうか。
(撮影:2020年3月横浜市)
こちらはダメ出しのない状態のマシンです。
じっくり見て見ますと、下田のお店で目隠しをされていたボタンは点灯しています。(a·a’)
フル機能のマシンの左下(b)は、メニュー写真との関連が切り離されていますが点灯しています。右下(c)はbと同様な状況ですが消灯しています。
また、アイスカフェラテの下のボタン(d)はaと同様な状況で点灯しています。
これらのイレギュラーなボタンを押すとどうなるでしょうか。それぞれ該当すると思われるメニューを購入して試して見ました。
その結果は、、
a:アイスコーヒーのMサイズ
b:ホットミルク
c:無反応
d:アイスカフェラテ
でした。
点灯するボタンが操作可能、ということがわかりました。
下田のお店では「操作可能ではあるけれどサイズが不明のボタン」(a)を隠すことで、便宜を図ったと推察します。しかし、フル機能マシンの左下ボタン(b:上のボタンと金貨額は同じ)と右側のアイスカフェラテの下のボタン(d:上のボタンと金貨額は同じ)を隠さないところを見ますと、「Sサイズを購入してMサイズボタンを押すというような不届き者にエクスキューズを与えない」という意図の方が大きいことが伺えます。
さて、下田のお店では「アイスかホットか」「曖昧なボタンの意味」が問題点として表出していますが、中央の写真とメニューの文字、ボタンの位置、発光の有無などが、操作性(この場合は認識性と誘導性)の混乱を招いているのは明確です。整理しましょう。
フル機能のマシンの操作部を見てみましょう。
まず、左右のボタンと中央のメニュー写真の領域が分割されています。
それから立体で表現された矢じりのような誘導がありますが、ともに発光するボタンと大きな写真の間に埋没してほとんど見えていません。この「矢じり」がしっかり見えていると、、
(ボタン)<□(写真]
のように、写真横の小さな四角□から誘引された視線をボタンまで届けることが出来たかもしれません。
メニュー写真内のメニュー表記もよく見ますと、左側は濃さの違い、右側はサイズの違いが括られていて統一感に欠けます。あわせて意味が曖昧に感じられるボタンの存在が、写真とボタンとの関連を妨げています。これらのことが多層的に「わかりづらさ」を作り出しています。
ところで話は主題からそれますが、なぜこのようなボタンの違いが生じたのでしょう。
写真は上のマシンがセルフクリーニング中と思われる状態のものです。中のポンプが作動し全ボタンが点滅していました。この時、消灯していたボタン(c)も赤く点灯していました。
このことから、消灯したボタンの下にもLEDはあり意図的に「ボタンを殺している」(消灯し操作不可とする)ことがわかります。つまり、a、b、dもcのように殺すことが出来るのにしなかった、ということですね。
ここからはさらに想像を逞しくした推察になりますが、開発工程の仕上げに近い段階(おそらく、メニュー内容の決定の後)でメニュー部のグラフィックデザインが変更になったのでしょう。
現状から「デザインはほぼ確定し操作性の不備はない段階」のものを想像したものです。
下2段のメニューは他のメニューと同じ表記ルールであったとしますと、中央のスペースが外側のボタンとの関連性を示唆する、意味のある分割スペースとなります。
この案で気になるのは右下の空間です。ここは赤いLEDが組み込まれていますので、他のホットメニューが最後まで検討されていたのかもしれません。例えばここのメニューが不採用になり、プログラム側でボタンを殺し、グラフィックデザインでは不本意にできた空間をうめた、、などといったシナリオが思い浮かびますね。はい、あくまで想像のお話でした。
経緯はともかく、最終決定ではプログラムとメニューのグラフィックに綻びが残ってしまいました。
【診断】
メニュー表記と誘導とボタンの位置と視認性の不備、そして不要な表示が互いに干渉して混乱を招いていますので「配置性表示性干渉障害」と診断とます。
【処方】
では、処方です。
応急処置では、干渉を起こしている要因を排除して整理します。
メーカーによる治療でも同様に、干渉を起こしている要因を排除して整理します。
処方01:応急処置
応急処置では、以下の様にするのがよいでしょう。
·使用可能でも触らせたくないボタンを隠す。
·使用不可のボタンを隠す。
·購入不可の写真を隠す。
·隠したボタンの視線誘導用の四角を隠す。
(撮影:左2020年3月横浜/右2020年1月大阪)
上は購入不可のメニューの写真とボタンを隠した実例です。
このままでも機能していると見受けられますが、せっかくですので不要な要素をすべて隠してしまいましょう。
ボタンを隠す丸いシールはどのお店でも同じものでしたので支給されているのかもしれませんね。このシールの様にしっかりと光を遮断する黒いテープでしっかり隠しましょう。
処方02:表示修正
メーカーの治療では、以下の様にするのがよいでしょう。
·下2段のメニューを他の表記ルールと合わせて左右に配置し、中央の分割化スペースを明確にする。
·明示されたメニューに対応するボタンのみ使用可能とする。
·使用不可のボタンは消灯し操作不可とする。
·使用不可のボタンの視線誘導用の四角を削除する、もしくは隠す。
·使用不可のボタンを隠す。
現状のデザインを尊重したマイナーバージョンアップでも、充分に機能することを想定しています。
重要なポイントはふたつ、
·中央の分割スペースを残す。
·メニューとボタンは1対1の関係になるようにする。
です。
そのために、メニューの表記を揃え、使用不可のボタンと視線誘導の四角を見えなくしています。
なお、コーヒーマシンは自動化の傾向も出て参りました。自動化については当クリニックで処方済みのこちら(ダメマシンクリニック02【コンビニコーヒーマシン:多重コミュニケーション不全】)もぜひご参照なさってください。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.:85
対象:コンビニの新型コーヒーマシン
設置場所:下田·横浜·大阪 ファミリーマート
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2020.3.6
症例:配置性表示性干渉障害
ダメ度:×(応急処置で対応可能)
治療方針:皮膚科「表示修正」
内科「表示連携更新」
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