デザイン -2- ファッション2024年11月01日 10:33

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその1、ファッションについてです。

ファッションのデザイン。
これをもらさず語るには、一生を費やすほどの熱量と経験がないと難しいですね。
それでも、ファッションは好きです。いちファッションファンとして、ファッションが何を表しているのか、ユーザーは何を求めているのか、という観点からファッションデザインのポイントを3つに整理しました。

・おしゃれ(トレンド)
・着心地
・帰属

おしゃれ(トレンド)
これは、いわゆるTPOです。
「今」をどの程度の時間感覚(歴史的な長い時間から、数日単位まで)で捉えるのがいいか、それをどのくらい取り入れるか、外すのか、どんなアイデアがあるのか、、主戦場です。

着心地
これは「服としての性能」です。おしゃれより優先する人もいますし、おしゃれと両立させたい人もいます。

帰属
ファッションで表現されるおしゃれさ、性能へ求めるもの、それらが複合的に表れるのは「私はこういう人です」という帰属です。
制服のようにルール化されたもの、ギャルファッションのように生き様を共有するもの、社会へ溶け込みたいと思うような欲求も、「人となり」を表さずにはいられません。

身近でなじみ深い6つのデザインのひとつめ、ファッションデザインのポイントを3つにまとめました。のこりの5つもやっていきましょう。(つづく

デザイン -3- インテリア2024年11月04日 10:05

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその2、インテリアについてです。

ファッションのデザインに対してと同じところ、一ファンとしてポイントを3つに整理しました。

・雰囲気
・居ごこち
・使いやすさ

雰囲気
これはいわゆるスタイリング、デザインの方向性のことですね。クラシカルなデザイン、モダンな空間、趣味のモノに溢れた部屋、、。その空間がどんな雰囲気を湛えているのかは、デザインの細部ひとつひとつが重なって醸し出されるものです。

居ごこち
その空間で過ごした時に、実際に感じる感情のことです。これは雰囲気とはまた別の体験的な印象のことで、リラックス出来るのか、楽しくなるのか、緊張感を伴うのか。
それらが居心地の良し悪しを左右します。雰囲気は好みではないけれどリラックス出来た、という経験はよくあることです。

使いやすさ
空間がもつ機能性にどれだけ配慮されているか、ということです。例えば使いやすいキッチンは、装備以上にレイアウトが大切ですよね。
使いにくい空間は居心地が良いとは言えず、また雰囲気にも影響していきますが、使いやすさだけを前面化(優先)していきますと、全体としては雰囲気や居心地がつまらなくなるということも起きます。バランス、ここでも大切です。

(つづく

デザイン -4- 建築2024年11月06日 11:26

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその3、建築についてです。

これまでと同じように、建築の一ファンとしてポイントを3つに整理しました。

・環境との調和
・使いやすさ
・美しさ・シンボル

環境との調和
建築はまず、その場所に適合している必要があります。気候風土、法規制、風土習慣、地域の特性などです。準拠する法規が同じ国内でも、気温差が激しく景観条例などが厳しい都市部の住宅地と、温暖で規制の少ない新規開拓地では、建物に要求される条件が異なって当然です。その条件が建物のデザインに与える影響は少なくありません。

使いやすさ
建物には何かしらの目的があります。長い使用期間に耐える柔軟性を含ませながら、目的に添った使いやすさを持たせられるか。初期のデザインだけでなく、変化して行くことを受け入れられるか。ここもデザインに大きく影響します。

美しさ・シンボル
景観の中で、その建築が美しいと思えること。またはシンボルと思えること。ここは建築ならではのデザインの見どころです。
「環境との調和」とあわせてみますと、「その土地に馴染みながらその土地の特性を象徴するデザイン」「まったく異質の存在感を放つが、町の機能を集約するランドマークとして美しさを際立たせる」というようなことが成立します。建築の面白さですね。

(つづく

デザイン -5- カー2024年11月08日 16:35

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその4、カーデザインについてです。

私たち世代のプロダクトデザイナーは少なからずカーデザインを意識していたと思います。成績優秀な人はカーデザインに進むのが王道でした。花形ですね。私はプロダクト志望でしたが車も好きで、卒業制作は地面効果を使ったひとり乗りのヘリコプターで、今で言う空飛ぶ車でした。

さて、これまでと同じようにポイントを3つに整理しました。

・らしさ(アイデンティティ)
・かっこよさ
・機能・性能

らしさ(アイデンティティ)
これは、車自体の「らしさ」です。ポルシェらしさやホンダらしさというものを、デザイナーも意識していますし、ユーザーも気にしています。その意味で大事なデザインのポイントです。
また、乗る人の個性を表してもいます。ファッションにおける「帰属」と通ずるところです。

かっこよさ
カーデザインほど「かっこよさ」を前面に出しているプロダクトはないでしょう。
今は「かっこよさ」は細分化されていて、場合によっては「かわいさ」や「強さ」といった方が良いものもありますが、集約する言葉として「かっこよさ」は相応しいと思います。

機能・性能
速い車、小回りが利く車、沢山乗る車など、その車の性格はそのまま外形に出てきます。その車の機能、性能はそのままデザインの重要なポイントです。実際のところ、種々の構成要素をどうパッケージするかがその車を定義しています。

以上に加えて、ソフトウエアの部分、UI/UXデザインの比重が増していることも見逃せません。私は、現在この点は「らしさ」に含まれると考えています。それは、人が移動の主体者として自動車に乗っている間は変わりません。
近い将来、自動車が「移動するためのもの」ではなく「輸送するためのもの*」になったら変わるでしょう。

(つづく

*)「移動」と「輸送」については人類学者ティム・インゴルドの「徒歩旅行/輸送」の区分けを参照。

「はじめての人類学」"差違"から"共通"への転換を2024年11月11日 11:11

みなさまこんにちは^^

先日の記事で人類学者ティム・インゴルドの「徒歩旅行/輸送」について触れました。
ある部族の狩が2部隊制で、先発隊が獲物を狩り、後発隊がその獲物を回収するシステムになっている、と。インゴルドは先発隊の移動を「徒歩旅行」、後発隊の移動を「輸送」と区別しました。徒歩旅行は環境との相互作用(獲物がいつ何がどこで現れるかは行って見ないと分からない)が大きいが、輸送は環境との相互作用は小さい、という。
この視点はUI・UX文脈でも有用で、機器とのインタラクションで思いもよらない体験をうむ(=徒歩旅行)のか、効率的にゴールに導く(=輸送)のかを意識する場面は多々あります。

正解主義とタイパが前面化していると感じる今は、徒歩旅行の価値、つまり不確定要素を楽しむマインドは減少しているのでしょう。

さらに、アルゴリズムが支配的なネット空間では、ユーザーには徒歩旅行も選べる自由を錯覚させつつ、プラットフォーム側の意図する輸送となっていることが多い、と言えましょう。余談。

さて、本日の主題、奥野克巳著「はじめての人類学」です。

はじめての人類学

著名な4人の人類学者を通して、人類学の成立してきた時代背景とその変遷を分かりやすく紹介されています。人類学は大航海時代に西洋が「発見」する他の民族を理解し、取り込む(利用する)ことから始まっていること。また、ある集団にとって「外部」の存在が人類学の刺激になっていることが分かります。そしてグローバリズムの過渡期にある現代では、人類学が相互理解のために発展すべきという望みを感じさせて終わります。

あらゆる場面で「分断」が言われるようになりました。それを一旦受け入れたとして、それらを俯瞰出来た方が良いでしょう。「差違」を「共通」に変換して行く作業が必要ですね。

ちなみにティム・インゴルドが4番手として登場しますので、ご興味がありましたらぜひ。

デザイン -6- プロダクト2024年11月13日 18:27

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその5、プロダクトデザインについてです。

プロダクトデザインというと、今では「ウェブサービス」をイメージする方もいらっしゃるはず。これはプロダクトが「製品」という意味だからなので間違いはありません。
しかしここでは昔ながらの、工業デザインや商業デザインと呼ばれる、実体物としての製品のデザインをプロダクトデザインとします。
一般消費者目線ですと、市場で買えるモノのデザイン、です。

さて、これまでと同じようにポイントを3つに整理しました。

・魅力的
・使いやすさ
・ライフスタイル

魅力的
モノとして魅力的かどうか。この魅力は「市場で買われる」という行為の中で発揮されるものです。
したがって、好きなキャラが描かれているとか、金で出来ているとか、破格とか、モノ自体のデザイン(意匠)とは別の要素が沢山あります。これらがプロダクトデザイン独特のはなやぎ、もしくは混とんを作っています。

使いやすさ
雑貨でも家電でも、機能と性能が「使える」と思ってもらえるレベルに無ければあっという間に排除されてしまいます。開発においてはここがとても重要な点です。

ライフスタイル
魅力的で使いやすいものであっても、自分のライフスタイルに合っていないと手が出しにくいものです。この点ではライフスタイルに合うかどうかが重要です。
それとは逆に、ライフスタイルを変化させるプロダクトがあります。ビデオやスマートフォンは分かりやすいと思いますけれど、これは発明品ですね。発明品はライフスタイルの提案(そのプロダクトを使うとどんな生活になるか)を含んでいないと受け入れられません。ですのでデザインがとても大事なのです。

(つづく

やる気は「押しがけ」一択2024年11月15日 18:13

みなさまこんにちは^^

今日の雑談の中でモチベーションの話が出たんですね。やらなくてはならないのにやる気が出ない時どうするか、という。
私は「心のスイッチを切って、(立ち机なので)机の前に立ち、とりあえず手を付ける」ことで作業に入ります。みなさんも概ね作業を始めるルーティンをお持ちでした。

ちょっと前に「やる気スイッチ」というワードが流行りましたけれど、これをすればやる気が出る、というものは発見されてないそうです。一つはっきりしているのは「作業興奮」という仕組み。作業をすることで身体的な刺激がうまれ、その刺激が脳の興奮を促すという。私のルーティンはまさにこの「作業興奮」を利用したものでした。

ところでみなさんはバイクの「押しがけ」ってご存知ですか?
バイクのエンジンをかけるにはセルモーターを回す、またはキック(足で蹴ってエンジンを回転させる装置)するんでずけれど、それで上手くかからない時は、ギアを入れてクラッチを握ったまま(エンジンとタイヤは繋がっていない状態で)バイクを押して動かし、勢いがついたところでクラッチを放す(エンジンとタイヤが繋がる)と、車体の勢いで強制的にエンジンを回し、結果的に燃焼が継続する(=エンジンがかかる)という。
これって作業興奮と同じですよね。

やる気を出すには「押しがけ」。おすすめです。

デザイン -7- グラフィック2024年11月18日 10:45

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインの最後、グラフィックデザインについてです。

自己紹介で「デザインをしています」と申しますと半数以上の方がウェブかチラシなどの媒体系のデザインをイメージされるようです。もっとも身近なデザイン領域なのでしょう。
媒体にはポスターやデジタルサイネージもありますし、商品パッケージや取説などもあって広い範囲にわたりますが、これらはひとまとめにしてグラフィックデザインと呼ばれています。

さて、領域の広いグラフィックデザインもこれまでと同じようにポイントを3つに整理しました。

・わかりやすさ
・共感
・魅力的

わかりやすさ
グラフィックデザインは、媒体の主目的の情報伝達を確実に行う必要があります。伝えたい相手に伝わるような工夫がデザインの肝要です。初見で届く文字数と伝えたい文字数のギャップをどううめるのか、腕の見せ所です。

共感
伝わった情報が感情に響くことを共感と言います。この感情は、「激情」のような強いものから、「ちょっとした気分」といった軽いものまで幅があります。強度は別にしても「心」に届かせることが、行動を起こすはじめの一歩です。

魅力的
情報が伝わって共感したら、あとは魅力的かどうかです。
街を歩いている時にみかけたコーヒーショップの例でお話しますと、、
→看板をみつけて(わかりやすさ)
→ちょっと休みたくなったし(共感)
→イラストが美味しそうだったので(魅力的)
→お店にはいった。
この流れの最後、魅力的でなかった場合は別のお店を探す(あっちのソフトクリーム屋さんの方が良さそう、など)ということもありますね。
お店の場合は店舗の佇まいもふくめた総合的なものですが、グラフィックデザインの力は大きいです。

以上、身近でなじみ深い6つのデザインについてでした。
次回はまとめです。

デザイン -8- まとめ・前編2024年11月20日 18:23

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインについて、それぞれ無謀かつ大胆に3つの要素で表しました。
振り返って見ましょう。

・おしゃれ(トレンド)
・着心地
・帰属

・雰囲気
・居ごこち
・使いやすさ

・環境との調和
・使いやすさ
・美しさ・シンボル

・らしさ(アイデンティティ)
・かっこよさ
・機能・性能

・魅力的
・使いやすさ
・ライフスタイル

・わかりやすさ
・共感
・魅力的

それぞれは各記事をご参照いただくとしまして、さらにこれをまとめます。無謀かつ大胆に。

美しさ
・美しさ
・かっこよさ
・雰囲気
・魅力的

機能性
・使いやすさ
・機能・性能
・わかりやすさ
・着心地
・居ごこち

意味
・おしゃれ(トレンド)
・環境との調和
・シンボル
・らしさ
・ライフスタイル
・共感

美しく、機能的で、意味があること。
これらの総合的な「創意工夫」がデザインです。
既知の、当然の結論になりました。でもその当然性が大事なんです。

さて、デザインは「行為」です。
それについては次回に。(つづく

デザイン -9- まとめ・後編2024年11月22日 18:43

みなさまこんにちは^^

前回までに、身近でなじみ深い6つのデザインを手かがりに、以下のところまで抽象化しました。

美しく、機能的で、意味があること。
これらの総合的な「創意工夫」がデザイン。


さて、デザインには「何故デザインをするのか」という動機が潜在します。また、デザインする側とそれを享受する側という広がりと流れがあります。

この動機と流れは、静的で結果論的な「デザインとは何か」という定義では抜け落ちてしまいます。(これまで見てきたように)

そこで、動機と流れを意識して加えたのが以下の一文です。

デザインとは、誰かを幸せにするために、創意工夫して、意味を与える。

動機と流れは「自分以外の誰かを幸せにしたい」に収まっています。
この視点から見た時、デザイン行為は「創意工夫」に集約され、デザインの結果は「意味を与える」に集約されます。

この文は一言で言い表せます。
弊社が創業時よりかかげ、大事にしている言葉がです。

デザインは贈り物

・・・たどり着きました。
そう。デザインは贈り物なのです。
デザインに迷ったら、誰を喜ばせたいか、どう喜ばせたいかに立ち返りましょう。基本にして永遠の指針なのです。

(おわり

ここで、デザインが産業上の役割を担ってきたことは重要な指摘です。端的に言って「売れる」「利益が出る」という点こそ、産業におけるデザインの価値を語るには欠かせない視点です。
では、「売れるデザインとは何か」
これは個別の相談の際にお話させてくださいませ。よろしくお願い申し上げます。
dmc.
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