進歩と相違 デザインはフォロー2024年11月27日 16:35

みなさまこんにちは^^

デザインは「問題解決」ではあるけれど、「社会・人類の再定義」ではないというお話を書きました。

「社会・人類の再定義」の背景には、現在の社会はまだまだ発展途上だから、進歩してよりよい社会を作るのだ、という思想があります。
この思想を「進歩主義」といいます。進歩主義は政治思想のひとつですから、起業家が「社会を良くするために政治に干渉して行く」のは自然のことですね。

進歩主義というワードがさす内容は時代や国によって違うのですが、ヨーロッパの啓蒙思想が源流で、文明と非文明を対比し、非文明的社会を「劣っている」と見なしたことが始まりです。

これ、無理解による差別、と今なら言われそうですよね。
実際に、非文明的社会は単なる相違に過ぎず優劣はない、という考え方とそれに基づく学問も盛んで、人類学や大きな影響力を持った「構造主義」はその流れから生まれました。
(以後詳細は専門書を各自でお調べくださいませm(^^)m)

さて、デザインにおいての「問題解決」です。
これは、前回記事の通り、進歩の文脈でも成立します。
しかし、スマホを使いやすくするとか、タクシーをすぐ呼べるとかの「進歩」は、ほとんどの場合「社会の変化によって生じた溝を埋める」ものです。
これは「進歩」というより「フォロー」です。

そう、フォロー。

有名なAppleのMacのコピー「For the rest of us.」は、直訳しますと「私たち以外のために」となりますが、意味するところは「コンピューターに詳しくない人のために」です。これはデザインとマーケティングの目指すところを明確にしていますね。
この事象を追いかけて行くと「社会を良くする」に繋がって行くのですが、コンピューターが普及したことが社会を変えたのは事実だとしても、それが「良くなった」と呼べるかどうかはまだ分かりません。
鎌倉時代の後に戦国の世が来たように、ローマが席巻した後に長く中世が続いたように、改革のあとに「乱世」がくることもあります。

デザインの問題解決は相違を埋めること。
これは、依拠する思想とは関係なく、人間が本来的に持っている性質なのです。

(つづく
dmc.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.