プロダクトの「顔」2012年01月20日 23:59

カッターの「顔」
昨日ご紹介したフライ返しには顔がありました。
ブランドのアイデンティティーを表す全ての可視物は顔と呼べますが、抽象化した意味の顔ではなく、少なくとも目と口のあるモチーフとしての顔のことですね。
このプロダクトの「顔」については、多くの方が沢山の実例と思索を重ねていますので、その考え方は様々だとしましても「重要である」ことは間違いないです。

私は様々な点で効力があるので、必然性もしくは蓋然性のある中で有効的に使いたいと思っています。
では必然性、蓋然性とはなんだ、ということなのですが、それはそこに顔のある意味が、プロダクトの意味を強化するためだけに存在するということです。言い換えれば、顔がある事で別の意味を作り出さない事です。

こんな例があります。
40年ほど前、動物園にペンギンの形をしたごみ箱が設置されました。斬新でとてもかわいらしく、それまでの無粋なごみ箱に取って替わって歓迎されました。ゴミをその場に捨てることも減ったそうです。そこまでは大成功でした。
しかし暫くすると、子供たちが本物のペンギンもゴミを食べるものだと思い、実際にあげようとする子もいたというのです。
どこまでが実話なのか、またどのような配慮からか定かではありませんが、ペンギン型のごみ箱はある時期を境に無くなったことを記憶しています。

同じ鳥の顔では、以前ご紹介させて頂いた「キッチンカッター」で、「刃」の位置と機能を子供でも直感的に判るように「鳥の横顔」をデザインに取り入れました。
このデザインの評価は一定の使用期間を経ての事と思いますので成功例ではありませんが、デザインに際しては子供たちの反応を1年近く見守り、上記の例のような事がないかとても慎重に検討しました。

プロダクトに「顔」を付加する事は、喩えれば良く切れる刃物なので、丁寧に扱いたいと思っています。
dmc.
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