あけましておめでとうございます!2016年01月01日 10:00

2016年元旦
新年あけましておめでとうございます!
本年も倍旧のご愛顧を賜ります様、よろしくお願い申し上げます。

昨年は人々を分断させる事が多くありました。事実は事実として認め、後に横たわる大きなことに心を配りながら、いつも通り目の前の1人のため、百年後の子供たちのためにデザインをして行きたいと改めて思いました。
そして、沢山の皆さまのご協力を得て、opunaは形になり、またテトコは発表イベントを迎えることが出来ました。この他にも沢山の新たな局面を迎えたプロジェクトがありました。あらためまして御礼申し上げます。寄せて頂いたご期待に叶いますよういっそう努力して参る所存です。よろしくお願い申し上げます。

opuna(オプナ)
https://www.facebook.com/opunafans/

テトコ
https://www.facebook.com/tetocosystem/

また、このブログを始めて8年目(昨年11月)を機に、ダメマシンクリニックをスタートさせました。デザインによって困っている現場が少しでも改善されれば、と思っております。

ダメマシンクリニック
http://dmc.asablo.jp/blog/cat/dmc/

本年はこの一見バラバラな活動と世の中を繋ぐもの、皆さまにとって意味のある「大きな物語り」と言えるものを、少しづつ紡いで行けたらと思っております。

それでは本年が皆さまにとりまして、益々拓ける素晴らしい一年となりますようお祈り申し上げます!

(写真は、今日元旦の柳宗理の歩道橋から見える富士山と半月です。)

ダメマシンクリニック09【改札内の新幹線券売機:場合分け失調による誘導不全】2016年01月01日 17:00

ダメマシンクリニック、新年最初の症例はこちら、品川駅の改札内にある新幹線の自動券売機です。駅内のマシンは年をまたいで4回連続になりました。

ダメマシン09【改札内の新幹線券売機】

09 改札内の新幹線券売機 01
一見よくあるタイプの新幹線の券売機ですが、随所に表示が追加されていますね。何が問題なのでしょうか。

09 改札内の新幹線券売機 02

09 改札内の新幹線券売機 03
詳しく見て見ましょう。
1:自由席が買えることを示す表示
2・5:購入の際に「最初にきっぷ・IC乗車券の挿入が必要」なことの告知
3:ICカード・クレジットカードは1枚しか入らないことの告知
4:乗車券つきのきっぷはICカードでの購入が出来ないことの告知
6・7:挿入口の表示
8:「きっぷ・IC乗車券の挿入」の誘導

掲示物からは「この券売機で新幹線の切符を購入するためには、きっぷ・ICカードの挿入が必要である」ということ、そしてそれが判りづらい状況になっていることが推察されます。

そんな簡単なことが・・?
とお思いになるかもしれませんが、この徹底した表示の貼られ方からは、相当数の方がそこで実際に戸惑うと拝されます。ではが難しいのでしょう。

難しさのもとを考察するために、改札の外と中での利用者の気持ちと、券売機の振る舞いを整理します。

利用者
 改札の外:「きっぷを購入したい」
 改札の中:「きっぷを購入したい」
券売機
 改札の外:購入受付→発券・清算
 改札の中:乗車券確認→購入受付→発券・清算

これを流れで比べて見ますと、、
 改札の外:「きっぷを購入したい」→購入受付→発券・清算
 改札の中:「きっぷを購入したい」→乗車券確認購入受付→発券・清算
乗車券確認」の部分だけが異なっていますね。

券売機の最初のリアクションが、利用者をうまく誘導出来ていないことが混乱の原因のようです。


09 改札内の新幹線券売機 04
さらに、一般的には「同じ目的で同じ(ように見える)システム」に関わる場合、システムには「同じ振るまい」を期待します。この「期待」は同類のマシンとの比較においてだけでなく、日常的に触れている他の機器やサービスとの比較においても抱くものです。

一般的な一連の行為として「きっぷの購入」を振り返って見ますと、乗車券を確認すること自体は想定外でも特別な行為でもありません。
しかし、乗車券を最初に確認しなければ先に進めないほどの重要事項ではないと推察出来ます。駅員さんに「新幹線のきっぷをください」と言ったら「どちらまで?」と聞かれるのが普通です。ここを「先に乗車券見せて」と返されたらどんな印象でしょうか?
相手が駅員さんかシステムかは別にして、利用者の「買いたい」という気持ちを「引き受ける」反応があるのが最も自然だと考えます。


【診断】

改札内の券売機の最初の反応が誘導を滞らせていますので「誘導不全」と言えるでしょう。これは「改札の外と中」という状況の違い(場合分け)を、きっぷ購入という一連の行為の中につながりを持って取り込むことが出来なかったことに由来すると考えられます。従いまして場合分け失調による誘導不全診断します。


【処方】

では、処方です。
利用者の期待に従った誘導を計画します。

処方01:応急処置
応急処置(表示整理)では、以下の様にするのがよいでしょう。
最重要な情報(乗車券確認)を最も目立つ位置に表示する。
・個別の情報はそのもののの近くに表示する。
表現の統一をはかる。

09 改札内の新幹線券売機 05

09 改札内の新幹線券売機 06
日本など文字の書き出しが左上の文化圏では、正対した時の左上部分が最も目立つ場所です。そこに最も重要な『購入の際に「最初にきっぷ・IC乗車券の挿入が必要」なこと』を表示します。
ICカードに関する注意書きはICカードマークの近くに、挿入口に関する表示は挿入口の近くに配置します。
利用者の見やすさと理解しやすさに配慮して、「自由席が購入出来る」告知は、券売機と表現を揃えた表示にします。

処方02:治療
根本的な改善には(メーカー及び鉄道事業主による)以下の処置が必要になります。
・操作画面の誘導を「購入受付→乗車券確認→発券・清算」に変更する。
・各挿入口の表示の関連性を強化する。
・券売機、什器、その他の表示を揃える

マシンの設置場所の違い自体は軽微な附加条件かもしれませんが、その軽微さに比して誘導に掛けるべき配慮は軽くなかった、、とも言えそうです。
この配慮不足が利用者にも運営者にも負担をかけていることを、開発をなさる方にはよくよく知って頂きたいですね。

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ところで、「エキナカ」(改札内の商業施設)の拡張や複数の会社にまたがる路線接続など、首都圏の鉄道はますます高度なシステムになってきていますね。「より便利に」を追求した結果であり、受益者も多数いらっしゃると思います。
しかし、渋谷駅は「ダンジョン」などと揶揄されて乗降数が減少したり、沢山の路線接続が災いして、ダイヤの乱れが恒常的に定着しています。関係者が目指されているだろう理想に対して、実体はまだまだかけ離れた状態なのだと拝します。

その理想から離れているところ、様々な未解決課題は重なって複雑さとなり、掲示物やアナウンスとなってあふれ出している、と言えるでしょう。前回のエレベーターや先日のSuicaのコインロッカー等の所狭しと貼り出された注意書きや、頻繁に起きるダイヤの乱れとその訂正や、発車してから停車するまでの間のほとんど絶えることのないアナウンスなど、随所で確認することが出来ます。
そして、これらの優先順位も適切なタイミングもなく繰り返される掲示情報やアナウンスは、人々の注意力を奪い、時間を無駄にし、迷わせます

結果的に「鉄道を利用するためには沢山の学習・訓練が必要である」という観念と「情報同志が打ち消しあい学習が進まない」という状況が生じており、ますます加速しているようです。利用者も駅員さんも、みなさま大変です。

なぜこのような状況が当然のように成立してしまうのでしょうか?

施設や路線の開発も、細部のコインロッカーやエレベーターも、少しでも便利にしよう、よりよいサービスをしようという思いの表れに違いありません。それなのに、、です。

それはやはり狭い範囲のひとつひとつの問題解決だけを繰り返して全体を構成してしまう」という状態からも全体観の欠如が根本的な問題であることは想像に難くありません。デザインで捉えれば『「鉄道を利用する」という行為全体へのデザイン思考の欠如』と言えるでしょう。

利用者は「あたかも最初から知っていたように」使え、運用者は「トラブルを小さなうちに解決」でき、鉄道の利用を「ため息が出るものから気持ちの良い経験に変える」、、そんなデザインは不可能でしょうか?
そのためにすべきことは沢山ありますれど、私はできると考えています。

「デザイン思考」を「関わる全ての人のそれぞれの立場に立った総合的な問題解決とその共有」と読みくだして頂きまして、一度「鉄道を利用することの全体像」を利用者と運用者の両方から整理されて見たらよいのではないでしょうか、、と僭越ながら申し添えておきます。


ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.09
対象:改札内の新幹線券売機
設置場所:JR品川駅
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2016.1.1
症例:場合分け失調による誘導不全
ダメ度:××(表示での対処に限界がある)
応急処置:表示修正
治療方針:皮膚科「表示計画再考」
     内科「誘導計画再考」
     根本治療は精密検査による治療計画が必用



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