ダメマシンクリニック44【トイレドアのロック:表示失調および誘導不全の疑い】2016年09月02日 15:30

みなさまこんにちは!

9月になりましたね。年を追う毎に感覚時間が短くなるといいますが、私はなぜかこの夏がとても長く感じられました。秋の始まりから年末年始のにぎわいまで一気に進むのが常ですが、今年はどうなるか、、ちょっと楽しみにしております。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、横浜のジェラテリア、トイレドアのロックです。

ダメマシンクリニック44【トイレドアのロック】

44 トイレドアのロック01
トイレドアの内側からかけるロックです。ドアは引き戸タイプで、左が施錠(ロック)された状態、右が解錠(オープン)された状態です。

44 トイレドアのロック02
詳しく見てみましょう。
1:表示(施錠)
2:表示(解錠)

鍵をかける/外すだけのシンプルな操作ですが、追加表示が必要と感じて追加されたのでしょう。追加表示をなくして見てみましょう。

44 トイレドアのロック03
いかがでしょう。
(お時間があれば、一度何か別のことをなさった後にご覧になってみてください。)

どちらがロックかを確信を持って感じ取れる方は少ないと思います。
私自身はなんとなくではありますが、右の方が「ロック」に見えます。

一般的にはどちらなのでしょうか。
「トイレの内鍵 引き戸」で検索したところでは似たようなロックは見つけられませんでした。(なお、「赤」表示で施錠を表しているものが多い印象です。また回転式は水平がロックが一般的なようです。)

そこで国際標準(ISOIEC)のシンボルマークを確認してみます。

44 トイレドアのロック04
上二つが錠、下がドアの開閉のシンボルマークです。
左右を対比してみますと、左側の「ロック/クローズ」は、、
 閉じた
 収まった
 整った
  等々の形
右側の「オープン」は、、
 開いた
 広げた
 崩れた
  等々の形をしています。
(IECのドアの開閉は矢印の方向だけで表現していますが、もとのドアの形状には開閉の差があると見立てました。)

わずかな差ではありますが、変化した形状が「閉じた形」の方がロックをイメージさせると考えるのが自然といえます。

44 トイレドアのロック05
ここで見直してみますと、左(ロック)の方が「開いた形」で、右(オープン)の方が「閉じた形」に見えなくもありません。
もともとの形状に「ロック/オープン」のイメージが薄いところ、形状変化の方向が一般的な認知イメージと逆であったことが災いしたといえるでしょう。


【診断】

不特定の利用者向けとしては表示(ロック/オープン)が不足していますので「表示失調」と診断します。
また、形状変化が一般的な認知イメージと逆であることから「誘導不全の疑い」と併記します。


【処方】

では処方です。
表示の不足を補います。

処方01:応急処置
応急処置(追加表示)で十分対処可能です。現在のダメ出しでも問題ありませんが、以下の様にするとよりよいでしょう。
・表示を「LOCK」一つにする。
・透明シールまたはレタリングで文字だけを目立たせる。

44 トイレドアのロック06

44 トイレドアのロック07
英語表記になっているのはこちらのジェラテリアは外国の方も多い場所柄のことと推察します。ですのでそのまま「LOCK」とします。
そして、英語表現としては「UNLOCK」が正しいということ、日本の方にも「LOCK」は読めること、英語が読めない方にはこの場面で重要な「施錠」のみに追加表示があることから「OPEN」は削除します。「この場面」とは、トイレに入ってドアを閉めて、さあ鍵をかけよう、というタイミングですね。このタイミングは「どうすれば鍵がかかるか」が大切です。
また、小さい範囲ですので文字だけが目立つ透明シールまたはレタリングの方が望ましいでしょう。

なお、今回の例は家庭用の設えをお店に使ったものと推察できます。家庭では利用者が固定的ですので慣れにより問題は潜在化しているでしょう。リデザインの機会があれば形状を逆にされることを推奨します。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.44
対象:トイレドアのロック
設置場所:お店のトイレ
報告者:ディーエムシー
報告日:2016.9.2
症例:表示失調および誘導不全の疑い
ダメ度:×(応急処置で対応可)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「再構成」



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上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい! 
・明瞭な写真または動画(複数歓迎) 
・設置場所とマシンの目的 
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
・テプラなどの対処部分の写真と説明 

※プロの方へ 
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。) 
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。

ダメマシンクリニック45【私鉄の券売機:表示失調および軽度の配置失調】2016年09月09日 23:45

こんばんは!

このブログのサーバーはクラシックな仕様、はっきりと申し上げますと古めの技術による時代遅れの感が否めませんでした。そこに「Chrome、2017年1月からHTTPSでないページに警告を表示」というニュースが。
「制限されたところでの表現」には面白みもあって続けていましたが、スマホの表示にも未対応(一部を除く)ですし、そろそろ潮時なのかもしれません。。
数ヶ月以内にこちらの更新を停止し、新しいブログに引っ越します。詳細はまた改めてご報告させて頂きますね。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、大阪の私鉄の券売機です。

ダメマシンクリニック45【私鉄の券売機】

45 私鉄の券売機01
現金とICカードが使える券売機です。

45 私鉄の券売機02
ダメ出しは1ヶ所のようです。
寄ってみましょう。

45 私鉄の券売機03
以下の追加表示が控え目にされていますね。
1:表示(ICカード)
このダメだしから、ICカードの挿入口に戸惑う利用者が少なくない、という状況なのでしょう。

45 私鉄の券売機04
赤いLEDの点滅で、最初に入れる「お金」と「ICカード」の挿入口の注意を引いています。この点滅は気付けば十分に認識できると感じましたが、そもそも目線に入らない方もおられる、ということなのでしょう。

45 私鉄の券売機05
この私鉄ではこの位置にカードの挿入口のある券売機がありました(目視確認)から、このマシンでは埋まっているカードリーダーの痕跡(上の写真の黄枠)によって、「カードの挿入口は?」「ICカードが使えない?」等の疑問が誘発されている方がいてもおかしくないでしょう。
また、現金は上が挿入口(投入口)、下が排出口と分かれていますが、ICカードは入出口が同一です。配置によってこの口が「何かを排出するもの」に見えてもおかしくはありません。
また「ICカードだけ入出口が同一」ということは一度使えば理解できるものでしょうけれど、初見で「何かの入り口」と認識するに、は少し考えを巡らす必要がある配置といえるでしょう。


【診断】

表示(ICカード)が不足していますので「表示失調」と診断します。
また、ICカードリーダーの位置がやや不適切ですので「軽度の配置失調」と併記します。


【処方】

では処方です。
応急処置では表示の不足を補います。
治療では配置を修正し適切な表示を加えます。

処方01:応急処置
応急処置(追加表示)で対処可能です。現在のダメ出しがすでに適切な対処となっています。派手にしてしまいがちな追加表示ですが、控え目で収まり良い印象です。


処方02:治療
メーカーにて、投入口(挿入口)のエリアにICカードリーダーを設置するとよいでしょう。
・ICカードリーダーを紙幣挿入口の横に設置する。
・対応するICカードのサービスマークを表示する。
・ICカード挿入の誘導は「紙幣」と同じ表示方法(位置と様式)にする。

45 私鉄の券売機06

45 私鉄の券売機07
ICカードの操作は最初が「挿入」です。そのタイミングでベストな位置にある方が理解しやすいといえるでしょう。

ただし、以下の点を考慮してあえて現在の位置にしたということも推察できます。
・ICカードの取り忘れが多い。(カードが「排出エリア」にないため

もしそうだとしましたら、ICカードリーダーの位置でどの程度の差が出るのか、ぜひ実数を知りたいですね。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.45
対象:私鉄の券売機
設置場所:京阪京橋駅
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2016.9.9
症例:表示失調および軽度の配置不全
ダメ度:×(応急処置で対応可)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「再構成」



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今日のダメマシンクリニックはお休みです。2016年09月16日 15:56

みなさま、いつも当ブログをお読み下さりありがとうございます。
今週のダメマシンクリニックはお休みにいたします。
来週をお楽しみに!

ダメマシンクリニック46【コインパーキングの精算機:軽度の配置失調】2016年09月23日 23:59

みなさまこんばんは!

秋の長雨といいますが、一つ前の晴れの日がいつだったか思い出せないくらい雨が続いております。横浜は谷戸が多いので意外とがけ崩れが頻発します。もちろん横浜だけでなく、これ以上の被害がありませんように。。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、兵庫のコインパーキングの精算機です。

ダメマシンクリニック46【コインパーキングの精算機】

46 コインパーキングの精算機01
背後の大きな注意書きとあわせて、精算機のパネルが雑然としていますね。

46 コインパーキングの精算機03
バネルを詳しく見て見ましょう。
1:表示(使用可能コイン)
一見、沢山ありそうに見えましたが、よく見ますと操作に関するダメ出しは一ヶ所だけでした。しかも、このダメ出しは出荷時から貼られているようにも見えます。全体の印象ほどダメだしされる状況ではないのかもしれません。
しかし雑然とした印象の操作パネルでは、エラー率が低くても効率は悪くなりがちです。早速診断しましょう。


【診断】

操作不能なほど深刻ではありませんが、表示、情報、操作などが整理されていないことが雑然とした印象となっていますので、「軽度な配置失調」と診断します。


【処方】

では、処方です。操作パネルを整理しましょう。

処方01:応急処置(追加表示)
配置失調の応急処置としては、追加の表示は少ない方が賢明です。また、目立ち具合も他の要素とのバランスをみます。今回は以下のようにするとよいでしょう。
見やすい横並びの配置で、硬貨とメタルを分ける。

46 コインパーキングの精算機04

46 コインパーキングの精算機05
使用可能硬貨の追加表示は現状でも機能していると思いますが、全体をすっきり見せたいので色をなくします。今回は投入口の近くの空間が横長なので横並びにしました。
また「×」をつけた10円はなくします。使用可能な選択肢のみを示す方が理解しやすいです。


処方02:治療
配置失調の治療はメーカーにて行う必要があります。
今回は、現状の要素を配置変更するだけで、どの程度の改善が得られるか見て見ましょう。以下のように再配置します。
・操作、モニター、説明書き、管理関係の領域を分ける。
・操作パネルは時系列に並べる。
・操作バネルと説明書きの対応を揃える。

46 コインパーキングの精算機06

46 コインパーキングの精算機07
操作手順に沿って上から並べています。領収書発行ボタンは精算ボタン、訂正ボタンと一つのモジュールとして捉えていましたが、分離できるなら最下部に配置した方がよいでしょう。
管理情報は優先度を下げ、ロゴと合わせて右下にまとめます。
また、パネルの下に貼られた注意書きは、背後の他の注意書きと合わせ、まとめて掲示する方がよいでしょう。

(ちなみに、兵庫県では別のパーキングの精算機にもダメ出しがありました。詳しくはこちらをどうぞ。)


ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.46
対象:コインパーキングの精算機
設置場所:兵庫県
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2016.9.23
症例:軽度な配置失調
ダメ度:×(追加表示で対応可)
応急処置:追加表示
治療方針:外科「再配置」


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・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
・テプラなどの対処部分の写真と説明 

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ダメマシンクリニック47【電子マネー対応券売機:適応症なし】2016年09月30日 22:24

みなさんこんばんは!

さかりの金木犀の香りを運ぶ夕方の風が、暖かいと涼しいの間を揺れている横浜です。一気に晩秋へと加速していくのでしょうね。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、横浜駅の電子マネー対応券売機です。

ダメマシンクリニック47【電子マネー対応券売機】

47 電子マネー対応券売機01
東急東横線とみなとみらい線(横浜で接続)の券売機です。下の方に一ヶ所、ダメ出しがありますね。

47 電子マネー対応券売機02
詳しく見て見ましょう。
1:注意書(つり銭忘れ注意)
ダメ出しはこの一つです。これまで電子マネー対応機器のダメ出しをいくつか見てきましたが、こちらのマシンでは電子マネーについてのダメ出しはありませんでした。

まず、このマシンやこの場所が他と比べて「つり銭忘れが多い」特別な事情は考えにくいです。むしろ、他では多い電子マネーに関してのダメ出しがありません。また一般的に、忘れ物や見落としといったケアレスミスを完全になくすことは出来ません。
これらからは、避けて通れない利用者側のエラー(つり銭忘れ)以外のトラブルが少ないことが見てとれます。
管理者からみて、最も気になるマシントラブルが「つり銭忘れ」なのだとしたら、自動マシンとしてはなかなかうまく行っているとしてよいでしょう。


【診断】

ダメ出しが避けては通れない利用者側のエラー(つり銭忘れ)に対してであり、マシンそのものに問題があるとは言えないですので「適応症なし」と診断します。


【処方】

マシンの適応症はありませんが、ダメだしされていますので、参考までに処方します。

処方01:応急処置(追加表示)
注意書の位置は現状でも機能していそうですが、以下の様にする方が効果的です。
利用者が操作する際の視線を考慮して、上から見やすい水平面に掲示する。

47 電子マネー対応券売機03

47 電子マネー対応券売機04
つり銭を忘れるほど他に注意を向けている利用者さんを想定すると、このくらい目立つものをみやすい位置にするのもよいでしょう。
(ただし、ケアレスミスをなくすほどの効果があるとは言えませんけれど。)


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ところで、この券売機は以前の記事『ダメマシンクリニック43【電子マネーチャージャー:誘導不全】』と同じ私鉄の電子マネー対応端末で、形状からも同一メーカーの別機種と捉えられます。

前記事のマシンでは電子マネー(ICカード)の差し込み口がないためトラブルを誘発していました。

47 電子マネー対応券売機05
今回のマシンを見ますと、電子マネー(ICカード)は挿入式で、しかもトラブルが少ない状況です。
利用者の多くが「電子マネー(ICカード)は左側の挿入口に差し込む」という認識を持っていると言えるでしょう。

既存機種を「改良」することはよくあることですが、利用者の認識を軽んじてはならない、ということを再度確認して参りましょう。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.47
対象:電子マネー対応券売機
設置場所:横浜駅
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2016.9.30
症例:適応症なし
ダメ度:-(利用者側のヒューマンエラー)
応急処置:追加表示


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「ダメマシン」でお困りの方へ 
https://www.facebook.com/damemachine 
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい! 
・明瞭な写真または動画(複数歓迎) 
・設置場所とマシンの目的 
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
・テプラなどの対処部分の写真と説明 

※プロの方へ 
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。) 
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dmc.
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