道をデザインするように2011年01月13日 23:59

私は地元で町づくりのお手伝いをしているのですが、その中で重要な課題として道路があります。私の住む地域は密集地区で、狭い道や階段、行き止りが多く、ために自動車が入れないことが防災上のネックとなっているのです。
もっとも、それがこの地域の魅力であり、自動車の来ない路地で安心して子供を遊ばせられる、という理由で引っ越してこられる方もいらっしゃいます。

「道をデザインする」といいますと、道の表情となる舗装や配水等の機能から帰結する断面形状、道路に付帯する街頭やサインなどの道路を構成する要素、また都市計画としての交通計画と建築物の配置、法規などの決めごとまで、様々な断面と規模に渡ります。さらに、そこには様々な人々が関わっていますね。それら全てを内包して「道」があります。

以前に塩野七海さんの本を読んで「道というものは古代ローマ人の発明なのだ」と深く印象に残りましたが、「道」は一国の過去と現在の姿が凝縮された風景だといえるのかもしれません。

さて、、一つのプロダクトにも様々な断面が潜んでいます。その全てに心を砕き、具体的なアプローチが成功して始めて、人々の思いを凝縮する風景となるのでしょう。

チューニング2011年01月14日 23:59

今週、大学時代の友人が久しぶりに集まりました。進路が違うのでそれぞれの経験を聴くのはとても興味深かったです。(もっとも、秘密保持もあり具体的なことは話せないですし、学生時代の馬鹿な話がほとんどでしたけれど)

その中で、自動車のチューニングが話題になりました。欧州と米国ではサスペンションのセッティングが異なることは有名ですが、同様にパワーステアリングも大分違うそうです。欧州は重くしっかりとした手応えがあるもの、米国は手のひらで軽く回せるものが好まれるそうです。日本メーカーはどちらを向いているかで大分差があるとのこと。
確かに、私のわずかな経験でも、ドイツ車、イタリア車、日本車で明確に違いがありましたね。

また、感性価値の代名詞のように知られている「ドアを閉める音」にも好みの差があるようです。

これらは市場の価値観の差が大きく関わっている事は明白でしょう。そして自動車メーカーもそれに応えようとすることで、技術力の差が際立ってきたのだと思います。

一方、UIのデザインにおいてもこの「チューニング」が大切な事は以前から判っていました。
最近では、iPhoneのタッチUIと他のタッチデバイスとを使い比べて見て「操作感」の差を感じた方はとても多い事でしょう。
これはiOSのチューニングが優れているからなのですよね。

デジタル化モジュール化されたデバイスは、競争力を失い価格競争に陥いりやすく、実際その様な状況になってしまった市場は幾つもありますよね。
同じハード同じプラットフォームで違いを感じさせられるのは、操作感や、基本機能の仕上がり等の、ユーザー体験のベースとなる部分です。この部分のチューニングが素晴らしいものが評価されるのです。
UIをチューニングする現場にデザイナーはもっと入り込んで行かなければですね。

新春のミチクサ2011年01月17日 23:59

ミチクサ(土)に紅梅
お茶の師匠のお宅で飾って頂いたミチクサです。
ミチクサの透明なブラウンが、新春らしい赤との組み合せで渋い金のように利いていますね。素敵な色の取り合わせです。
流石師匠!

ミチクサは全部で3色あるのですが、2つ目にこの色を選ばれる方が多いようです。
この色はそれだけでは地味なため、写真のように鮮やかな色との組合せで華々しくしたり、銀やグレイッシュな色との組合せでクールにしたりと、いける人の創意がはっきりとでる色です。
もしこの色を選んで下さる時に、活けたい花のイメージが広がっているのだとしたら、それはとても嬉しいことですね。

金メダリスト2011年01月18日 19:21

米田功さん アテネオリンピック金メダリスト
先週末、娘の通う小学校で親子体操教室が行われ、アテネオリンピック金メダリストの米田功さんがいらっしゃいました。

米田さんはアテネ五輪の男子団体で、28年ぶりに金メダルを獲得した時のキャプテンです。あの時の熱狂は今でも新鮮に蘇ってきます。
2008年に引退され、今は子供たちに体操の楽しさを伝える活動をされているそうです。
体操選手って小さくて筋肉隆々のイメージだったのですが、米田さんはスラッとした長身なんですね。しかも雰囲気が優しく威圧感がないので子供たちに自然と溶け込んでいます。

でも実際にお話し伺ったら、やっぱり凄いお方でした。
子供たちの質問に平易で誠意ある答えを返そうとする態度、話し方、立ち居振る舞いのフラットさ。
出来ない事を楽しみ、気が遠くなるような努力を積み重ねて頂点へ向かう強靭さ、それを微塵も感じさせない柔らかさ。

7歳の時に小児喘息が切掛で体操を始め、金メダルを獲ったのは26歳だったそうです。
「毎日の楽しい遊びの遥か向こうに金メダルがある」は至言ですね。

公式サイト
http://www.yonedaisao.com/

欲しいものを作る2011年01月19日 23:59

ここのところ「欲しい!を強く言える人」の大切さを感じています。
今日はメーカーの中に実在するリアルな開発者の「自分が欲しい!」がいかに大切であるかを感じました。

長く同じメーカーや市場の中にいますと、企業内の立場や他者への気遣いから「こうあるべき」を、自分の本音とは別の所に構築してしまうこともあるようです。
よく「本当はこうしたい」という言葉を耳にしますが、その「本当のところ」が実はとても大切なのです。

なぜ大切なのかと言いますと、その「本当」が本当なのかどうか試していないことが多いからです。この点を踏まえて、「自分が欲しい」を試し、評価していくことで一歩前に出らるんですね。

ここで大切なのは、その実在の誰かの思いが、ブランドの目指すべき方向と合致しているかどうかなのですが、自身で試す事ではっまりと自覚出来るのです。
その結果、その場所に留まらないという結論もあるかも知れませんが、その可能性があるからこそ重みがあるのでしょう。

過去記事:Personal Brand パーソナルブランド
http://dmc.asablo.jp/blog/2011/01/06/
dmc.
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