彫刻的な車のインストゥルメントパネル2013年06月25日 23:39

ラフェラーリのインストゥルメントパネル
フェラーリ初のハイブリッドカー、499台限定のラフェラーリが日本でもお披露目されました。
ちょっと検索しても「かっこよすぎるー!」「かっちょええー」「やばい。ラ・フェラーリかっこよすぎる。」との声多数。
もちろん「フェラーリっぽさがないっていうか…」という声もつきものですが、それも「攻めてる」姿勢の傍証のようでもあります。

やはりこれだけ立体造形のセンスを駆使した工業製品は、他に見る事はなかなか出来ないでしょうね。
この車を前にしたら「フラットデザイン、何ですかそれは?」という声が聞こえてきそう(笑)

・・ということでUIが気になってインパネを見ますと、上のように「リッチな具象表現」でした。はい、この方があっていると私も思います。
(ちなみに車のUIはインパネだけではありませんが、その話しはまた別の機会にさせて頂ければと)

この点について、Kさんと意見交換していましたらこんな視点が浮かんできました。

・ラテン系は器用さから造形、料理が独創的で魅力的。
 →表現はセクシーに。
・ゲルマン系は不器用が故にシステム化され汎用性の高いサービスが得意。
 →表現はストレスフリーに。

ラテン、ゲルマンという切り方はやや乱暴ですが、個のユニークさと汎用性の対比、それらと表現との相関は判りやすいかもしれません。

ラフェラーリ公式サイト(日本語)
http://www.laferrari.com/ja/

インパネ(ムービーの3分25秒頃から)
http://www.laferrari.com/ja/architecture/

0.25mmの段差「XPERIA AX」2012年12月27日 22:58

昨日は、携帯電話を新調しました。
機種は「同じアンドロイドでもこれだけUX(ユーザーエクスペリエンス)が違うのか」と思わせてくれるのがソニーで良かったな、と日本贔屓な事も思いながら(笑)以前から愛用のXPERIAのAXを選びました。
いやほんと、同スペック機でも全然違うので要注意です。

XPERIA AX
スクエアで大画面という、一見無個性な端末にみえますが、、

XPERIA AX
Arc以来の薄型、背面逆R加えて画面周囲の小さな立ち上がり。
この僅か0.25mm(実測値)の段差がとても機能的なのです。

片手で持つと親指がSONYロゴの辺りに置かれるのですが、その時この立ち上がりが指に掛かり、とても持ちやすく安心感を与えます。
また指が移動したときにはこの段差が操作範囲を規定していて扱いやすくなっています。
もちろん伏せた時は画面保護にもなりますね。
この心遣い、憎いなぁ。

(一方的にですが)ライバル宣言をしたアップルのプロダクトも「0.1mmへのこだわり」を喧伝し、またそれを感じさせるデザインですが、こういうところはこちらの方が一日の長を感じますね。

こういう日本的な気づかいが(それだけでは勿論不足なのですが)ブランドの魅力として普遍的に波及させて行ければ、と常々思うところであります。

異次元カーブ スカイツリーを見上げる2012年09月14日 23:36

見上げたスカイツリー
昨日ある会合があり、その帰り道に夜のスカイツリーを案内して頂きました。

川を挟んだ目の前に建っているのに、何故か存在感の希薄さを感じてしまいます。これはツリーの形状が普段見慣れない「歪み」を持っていて、経験的に「この様に高いものは足下がしっかりしている」という思い込みにそぐわないからかも知れません。

その歪みとは、ツリーの断面形状の事です。
ツリーの最底面部の断面は三角形で、上に行くに従って丸くなり、展望台直下では真円になるようにデザインされています。この変化によって、写真では右手前の下方が凹んで見えたり、左端の太い稜線がねじれて見えているのですね。
また、遠近法を打ち消す効果もあるようで、東京タワーより高いはずの展望台があまり高く感じません。
本当に不思議な形ですねぇ。。「建つもの」より「飛んで行くもの」を感じさせる異次元を繋ぐカーブの様です。

ずっと眺めているとくらくらするのですが(笑)、もっと細く出来たと言う高い技術で造られた非常に繊細で特異な形状を、角度によって変わる歪みや遠近感を確かめながら、あちこちから眺めるのが楽しいですね。

12/200 丸亀城2012年08月22日 13:05

直島から高松に着き、丸亀に向かいました。
江戸期以前に建てられた天守閣で現存するのはわずか12、その中でもっとも小さいのが丸亀城です。

丸亀城

戦国時代に各地に築城されましたが(2万5千という数字も)、江戸期の一国一城令などで少しづつ減り続け幕末には200ほどになりました。更に明治維新の際に多くが打ち壊され、戦争などでも消失して現在の12城が残ったのだそうです。

丸亀城
1660年築とありますから、このヤリガンナの跡もそのころのものでしょうか。

丸亀城からに眺望 瀬戸大橋
天守閣は最小ですが、美しい石垣が高く積んであり、瀬戸内が一望出来ます。瀬戸大橋も見えますね。

淡路島の夕陽
淡路島から見た瀬戸内に沈む夕陽です。
丸亀の親切な方々から教えて頂いたとっておきのうどんやさんに寄り、淡路島を抜けて帰ってきました。

架線前2011年11月17日 23:59

埼玉県の寄居にある工場へ伺った後、秩父山系の山並みに惹かれてちょっと遠回りしてきました。

途中、鎌北湖という小さな人造湖がありました。ボードが沢山並んでいましたので春秋は人で賑わうのでしょうけれど、冬の気配の中では釣りから帰る方がお一人だけ。こういう静かな所も好きです。

架線前の鉄塔
そこで谷あいに見えたのがこの鉄塔です。よく見ると電線がかかっていません。
私は電線のある風景が好きなので、意識して見ている方だと思いますし、写真も良く撮るのですが、架線のない鉄塔は初めて見ました。

架線作業はヘリコプターを使ったりするのでしょうか、それとも何か特別な方法があるのかも、、と思ったらこんなムービーが。





ヘリを使ってロープを張り、それを使って電線を架けるという作業でしょうか。
やはり珍しいものらしく、ツイッターから「架線作業が見たい」という声を複数頂きましたです。私も見てみたい!

お近くにお住いの方は、ぜひこの機会に見て下さいね。

木通(あけび)2011年10月11日 02:59

勝沼で売っていた木通です。あんまり立派だったので見とれてしまいました。

木通

木通

木通

種の回りの部分(胎座というそうです)が甘く、ここを鳥や獣たちに与えて種子の拡散させているんですね。
これまでは薄甘い素朴な印象だったのですが、この木通は全然違いました。とろっと濃厚でとても甘かったです。驚きました。
皮も肉詰めや味噌炒めで食べるそうです。

それにしてもこの形、「食べて」というアフォーダンスが凄いなぁと思ってしまいます。
 山あいで目立つ紫色の実。
 一ヶ所に沢山の結実。
 食べごろを知らせる裂開。
 食べやすく甘い実。

どの果実も同じように進化しているのでしょうけれど、手でもいでかぶりつく形、と言う意味ではバナナを思わせる形ですね。

素材の意味2011年02月08日 23:59

ギブソンが考案した、UIデザインでお馴染の「アフォーダンス」という概念は、例えば椅子は座ることをアフォードしている、というように「形が行為を促す」という理解で広く知られるようになりました。

アフォーダンスは形状を中心に語られますが、テクスチャ(肌理)とレイアウトの認識の中に位置づけられていますので、それらによって意味が変るものでもあります。
極端な例ですが、真っ赤に燃えた椅子は座ることをアフォードしません。

あるもののアフォーダンスを考える時、テクスチャは主に素材に由来するため固定的(要素還元主義的)な意味あいをまとっています。
金属は冷たい、重い、硬い、などの素材の特性は、そのまま金属質のテクスチャに感じる事です。

しかし最近、新素材や技術革新により、テクスチャーが新しいアフォーダンス、新しい意味を獲得しているのでは、、と思うようになりました。

20年ほど前はモニターに動く映像を2〜3歳児に見せた時、じっと見入ることはあっても手を出すことはありませんでした。言葉でのコミュニケーションが未発達だと、GUIは上手く行かない、というような説明をする人もいました。
しかし、今では手を出して「操作」を試みる子供たちは少なくありません。YouTubeでも幼児が使いこなす動画が沢山ありますね。
この変化の要因はさておき、アフォーダンスの観点で言えば、モニターが操作をアフォードする様になったと言えます。
モニターの形状も表示される映像もそれほど変らないのに、映像という「テクスチャ」の意味が変ったと言えるかも知れません。

また、アルミは金属でありながら「軽い」素材でしたが、最近はシーンによっては「重い」素材になってきました。自動車のボディなどがカーボン等の新素材に取って替られたからですね。

ガラス、木材、繊維等々、伝統的な素材にも、旧来のイメージや使用法にこだわらない可能性がひらかれて行くでしょう。

平均と普通2011年01月31日 13:54

典型的な美人顔は平均的な顔である、というのは有名な事実のようですね。
先日も芸能人を使ったシミュレーションを見たと家族が言っていました。

虫を使った実験では、左右均等な個体ほど異性から好まれることが証明されているとか。生物として、平均的であるということが最もリスクが少ない、というのはなんとなく合点が行く事ですね。

70年代後半から80年代にかけて、統計から「好かれる色形」を求める手法が模索され、実際に商品化したものもありました。結果は芳しくなく、売れなかったと記憶しています。実際にその商品を見たこともありますが、確かにぐっと来るものではなかったと思います。
もう少し詳しく申しますと、仮説を多数作出し、それらを定性調査し、その偏差値を求め、意図する造形を決定して行くプロセスだったと思います。(細部に間違いがあるかも知れません。)

でもこの失敗が、「平均」ではなく「偏差」を依拠したからだったとしたらどうでしょう。もっと客観的に、新しく仮説を立てるのではなく「既にあるものの平均」をとっていたら全く違う形になったはずです。
当時の感覚として「新しさ」は最重要だったのですから、既にあるもの=過去の平均をとるなどという方法は即座に却下されていたと思います。
それでも冒頭の美人のお話からしますと、平均を探るアプローチはまた違った結果を生みそうな、そんな予感を与えてくれます。

さて、デザインの大きな傾向の一つに「シンプル」がありますね。その流れの先頭を行く方たちは「普通」という言葉をよく使われていると思います。
普通であること。長く広く愛される一つの指標なのでしょうね。

ところで、典型的美人と一人の個性として存在する美しい人との差違は何でしょうか。非完璧さは個性として際立ちそうですね。それから時間による変化とその変化の方向性、そもそもの人間性等々、色々ありそうです。

典型的でありながら、とても魅力的な差違を持つこと。これは一つの究極かもしれません。

造形の美を担う2010年09月14日 23:18

デザインの工程においてモデラーという専門家がいらっしゃって、デザイナーの描いたラインを立体化して下さいます。

私は修業時代、モデラーも経験させて頂きましたが、そこでとても大切な発見をしました。それは優れたモデラーの立体化したものは美しい、ということです。

モデラーさんは、デザイナーのイメージした形を忠実に立体化するのが仕事なのですが、時にデザイナーが思い描いた以上に美しい形を紡ぎ出します。
それは、デザイナーの意図した形を勝手に変更しているのではありません。直線と曲線の曲がる瞬間、面と面の繋がる変化という様なごく僅かなゆらぎを、統一された造形美として定着させて下さるのです。
私はこのモデラーの才を、曲に対する演奏家と同じだと感じています。

今、試作はかなりの部分が自動化されて来ていますが、デザイナーが立体を描いて終わり、というのはやはり画龍点晴を欠く思いがします。
音楽も作曲家がデータ化したものをそのまま自動演奏するのと、優れた演奏家が演奏するのでは大きな差が出るように、優れたモデラーによって立体化される事の価値は大きいでしょう。

トンパ文字2010年01月15日 23:50

我が中国茶の師匠から雲南省のお土産を沢山頂きました。

その中の一つ、トンパ文字のチャームです。
トンパ文字のチャーム

トンパ文字、日本でも一時期流行りましたのでご承知の方も多いことと存じますが、雲南省に住むナシ族のトンパと呼ばれる特別な立場の人に伝承された象形文字です。
象形文字のひとつとされていまが、トンパが自ら作りだすことも多く他の文字のように整然と並べたりしないトンパの書は絵そのものの様です。
江戸時代の案内看板や瓦版に漫画で意味を表したものがありますが、あの大らかでユーモラスな雰囲気に通ずるものを感じます。

以前、トンパの思考をなぞりたくていくつかの文字を創作したことがあります。
トンパ文字 史

「時間の始まりと終わり」という強引な、でも東洋的な世界観をイメージした「史」です。

師匠はだいぶ観光化されたとおっしゃっていましたが、日本の田園風景に似ると言うナシ族の土地は何時か一度旅してみたい所です。
dmc.
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