ダメマシンクリニック77【エアコンのリモコン:軽度の表示失調】2017年09月11日 18:00

みなさま
こんにちは!

昨日の電車の屋根が焼けたのは、線路脇のビル火災の延焼だそうですね。たまたま緊急停止ボタンが押されたタイミングと電車の位置が悪かったとのこと。。
防災システムは訓練された人々の運用に委ねられている事が多いと思いますが、今後はこのような「半自動」の部分は、センサーとAIを取り入れて高度化していくのでしょう。(すでにその過程にあるかもしれませんね。)

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、横浜のミーティングルームに設置されたエアコンのリモコンです。

 ダメマシンクリニック77【エアコンのリモコン】 

77 エアコンのリモコン01
時々利用するミーティングルームのエアコンのリモコンです。出荷時に貼られたと思われるシールが気になりました。

77 エアコンのリモコン02
あらためて見てみますと、、
1:誘導表示(画面消灯時の操作)
液晶表示が消えた状態(一定の時間が経過すると消えます)から復旧させるために「ホーム」キーを押す必要があるのですね。
「停止」「快適おまかせ」など、物理的なキーがあるものは、液晶が消えていても操作が可能でした。
物理的なキーがない(そのため表示が必要な)設定項目は「温度」「風量」などがありますが、それらを操作したくなった時に表示が消えている場合のための配慮と伺えます。

確認してみましょう。

77 エアコンのリモコン03
これはシールを取り、液晶を消した状態(合成)です。

この状態で「温度の変更」をしたくなったらどこを触りますか?
「風向」を変えるときはどうでしょう?
「お気に入り」「もっと」とはなんでしょう?
・・・
色々疑問を持っていても、どこかのキーを押せば表示が出ますので、結果的になんとなく使えてしまう方が多数と思われます。それでも、戸惑ったまま使えなくなってしまう方がいらっしゃるということですね。

さて、そもそもエアコンのリモコン表示は消えるものなのか、の確認が必要と考えまして、参考までに他社製(2013年)のものを。

77 エアコンのリモコン10
こちらも表示が消えるタイプでした。主要な操作に物理的なキーが設けられていること、キーの名称が一般的な名詞の組み合わせであることなどが今回のリモコンとの違いです。

その他にもいくつかサンプルをチェックしました。おおまかな傾向としては「昔は常時表示されていたが、最近のものは一定時間経過後に非表示」のようです。省エネを謳う流れの中で、リモコンにも省エネを求めたのかもしれません。

買い替えなどで、古いタイプ(常時表示)を使っていた方がこの表示が消えたリモコンを手にしたら、ちょっとびっくりするでしょうね。「電池が切れたかな?」と思っても不思議はありません。さらに、温度設定を細かく気になさる方はいちいち表示させるのは煩わしく思うでしょう。


【診断】

新たに使う方に対して必要な、操作に対する情報が不足しています。ただし暫く使うことで慣れると考えられるので「軽度の表示失調」と診断します。


【処方】

では処方です。
このダメ出しは注意喚起としては充分であり、シールなので剥がせることも好ましく思います。したがいまして、応急処置は現状でよいと考えます。

そこで、少ない手数で効果を期待できる治療を検討します。
一つは表示のみの変更で表示失調を軽減する処方、もうひとつは採用しているデバイスの変更による根本治療です。


処方01:メーカーによる治療(表示のみ)
液晶画面が消えている状態のときに、ボタンを押せば表示が出ることを明記します。
・「ホーム」を「メニュー表示」に変更する。

77 エアコンのリモコン04

77 エアコンのリモコン05
押すと画面が表示されることを明確にするため「○○表示」とします。
また「ホーム」は「メニュー」と置き換えました。「ホーム画面表示」の方が正確だとは思いますが、「メニュー表示」でも意味が通じてシンプルで良いと判断しました。
液晶画面が消えた状態でも発見しやすい「操作部の左上」にありますので、丁寧に文字を追って頂ければ通じる可能性が高いと考えます。

それでも、ぱっと全体を見た時の印象を大きくかえるものではありません。何より「電池が切れている感じ」は残ります。そこで、表示部分を治療する方法を処方します。


処方02:メーカーによる治療(表示デバイスの変更)
省エネ性能を犠牲にせず、常に表示を出すために以下の様にします。
・表示デバイスを液晶から電子ペーパーに変更。
・非操作時も表示は残す。(直前のメニュー項目を表示したままにする。)
・電池が切れた時は、その状態を表示して交換を促す。

77 エアコンのリモコン06

77 エアコンのリモコン07
電子ペーパーは待機電力を使いませんので、安心して常時表示することができます。

逆に、通電がなくても表示が消えませんので、電池が切れた状態を表現しなければなりません。ただ画面表示を消すだけだと、非操作時に表示が消えるタイプのリモコンにも見えます。そこで以下の様な画面を用意し、電池の寿命が尽きる直前に表示させ、積極的に電池交換を促すのが良いでしょう。

77 エアコンのリモコン08

77 エアコンのリモコン09

デバイスの変更にともなう開発コストがかかると思いますが、電子ペーパーの特徴である省エネ性と高コントラストによる見やすさは、リモコンにとても向いていると考えます。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.77
対象:エアコンのリモコン
設置場所:横浜 ミーティングルーム
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.9.11
症例:軽度の表示失調
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:表示変更
治療:移植(外科)



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・設置場所とマシンの目的 
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
・テプラなどの対処部分の写真と説明 

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ダメマシンクリニック78【多目的トイレの自動ドア:自動過多】2017年09月30日 10:38

みなさま こんにちは!

今週の横浜は金木犀が薫りはじめ、赤レンガではオクトーバーフェストの小屋も建って、すっかり秋めいてきました。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、みなとみらいのショッピングモールに設置された多目的トイレの自動ドアです。

ダメマシンクリニック78【多目的トイレの自動ドア】

78 多目的トイレの自動ドア01
こちらは2013年夏に新設されて以来とてもきれいに運用されていますが、トイレにはこの様なダメ出しが。

78 多目的トイレの自動ドア02
詳しく見てみますと、、
1:注意書(扉を開放したまま退出)
2:告知(禁煙)
3:表示(緊急連絡先)
禁煙と連絡先はさておきまして、「扉を開放したまま退出」とはどういうことでしょう?
退室時に扉を閉めるのは普通のこと、むしろ良いマナーであると思います。場所によっては「扉は必ず閉めてください。」という張り紙も見かけます。それをわざわざ「閉めるな」と書かれていることには、何か理由があるはずですね。

よく見ますと張り紙の下段には、、
「内側の『閉』ボタンを押して退室されると外側から開かなくなり、次の方のご利用ができなくなります。」
とあります。扉を内側から閉めると鍵がかかる仕組みなのですね。
エレベーターで「閉」ボタンを押して出られる方を見かけますが、同じような感覚でボタンを押して退室される方がおられるのでしょう。しかしそれをしてしまうと外から開かなくなる。。
普段からドアはきちんと閉められる方がトラブルの元とは、、なんとも残念ですね。

78 多目的トイレの自動ドア03
ここでボタンの周囲を見てみますと、ボタンは「開/閉」という表記になっていて、「施錠中」という表示はありますが、鍵がどこでかかるかは明示されていません。
その補間のためでしょう、ボタンの上に「施錠してください」という注意書が添えられています。
これらを全て丁寧に読めば、「ドアを閉めると鍵がかかる」ということが理解できます。
なお、細かい話になりすが「鍵」は開け閉めするためのもの(キー)、「錠」は固定する本体(ロック)です。こちらの場合は鍵は介在せず、内側から扉を閉じると自動的に錠が閉じる設定になっています。

ドアの開閉と施錠解錠が一つの動作の中に組み込まれていること、そしてそれらの関係性が混同され、ぱっと見ても判らない状態にあることが混乱の要因でしょう。言葉の使い方からも、ドアと鍵(錠)の扱いが混同されていることが滲み出ていますね。


【診断】

ドアを閉めると自動的に鍵がかかることが原因ですので「自動過多」と診断します。


【処方】

では処方です。
現状のダメ出しは、節度を保ちつつできるだけ気付いてもらえるような形態を模索しているとお見受けします。応急処置としては現状以上のものは望めないと考えます。
そこで、根本的な治療を検討しましょう。

処方01:メーカーによる治療
ドアの開閉と施錠解錠を別々の行為に分け、利用者にはそれぞれの動作を自然に受け入れられるよう配慮して以下の様にします。
・スライドドアの開閉はバーハンドルで行う。
・ドアは電動アシストとし、非力な利用者でも使えるようにする。
・施錠解錠は別ボタンとし、文言も「施錠/解錠」とする。また、理解のしやすさに配慮して、アイコンと英語表記を加える。
・施錠を表す色はより標準的な「赤」にする。
・禁煙の表示は既存の注意書きの近くに配置する。
・緊急連絡先は座った時の視界に入る位置に配置する。

78 多目的トイレの自動ドア04

78 多目的トイレの自動ドア05
ドアは押すかスライドさせるか、バーハンドル自体はどちらの行為も促す形態ですが、殆ど全ての多目的トイレが車椅子を考慮したスライドドアであることから、利用者は経験的に「スライドさせて開ける」と捉えてくれるでしょう。
入室時に「ドアを閉めたあと鍵を締める」ことで、退室時に「ドアは閉めて鍵は開けておく」という状態が無意識的に体現できます。(無意識的、と言いますのは「明確に考えなくても身体がその様に動く」という程の意味です。)

実は、手動のスライドドアと普通の鍵で充分なのです。手動であればわざわざドアの開閉と施錠解錠を一つの行為にまとめることはしないでしょう。しかし自動化するとこうなってしまう。。
「行為をまとめることは便利である」という思考が、それこそ「自動的に」支持されている現状が、今回のような状況を生むことを忘れてはなりません。

ここでは自動化ではなく省力化が本当のポイントなのですね。
ですので自動ドアではなく電動アシストドアがよく、鍵は操作の簡単なボタン(現状)がよい、ということになります。

ちなみにボタンを押すタイプの自動ドアもありますが、その場合は鍵をボタンではなく回すタイプにするなど、「動作を別のものにする」のが良いでしょう。記憶に残る手応えを分けておくことによって混同を避けるのですね。ちょっとしたコツです。

それからロックアイコンの「赤」ですが、現状はそれほど確定的な色は存在しないようです。ですので、今後スタンダードな色が決まってくる可能性がありますが、今回は信号機の止まれが赤であること、影響力のあるiOSのロックアイコンが赤であることから採用しました。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.78
対象:多目的トイレ
設置場所:みなとみらいのショッピングモール
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.9.30
症例:自動過多
ダメ度:××(治療が望ましい)
応急処置:ー
治療方針:外科「分離・移植」


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