「100歳の美しい脳」2013年10月01日 23:56

100歳の美しい脳
原題の「Aging with Grace.」輝かしく老いる、という意味でしょうか。図書館で借りて読み、そのあと、中古を探して買いました。

大勢の修道女を長期間にわたって調査したスノウドン医師の有名な「ナン・スタディ」について書かれた本です。長期間同じような生活をしたシスターたちの健康状態を追跡し、アルツハイマー病の治療と予防に役立てようと言う研究です。
日本語タイトルにある「100歳の美しい脳」とは、死後解剖で100歳にして全く病変のなかったシスターの例についてです。その他、脳には明らかな病変があるにも関わらず発症しなかった例など興味深いエピソードが書かれています。

調査から浮かび上がるのはアルツハイマーの様々な要因や仮説に対する示唆と、長寿で健やかな老いと若い頃の精神活動とは深い相関関係を示す事です。
特に、20歳頃に書かれた自伝を分析すると、アルツハイマーの発症をある程度予測出来る(自伝の文章と発症率に相関関係がある)ということ。「意味密度の高い」「複雑な」文章を書いているほど発症率が低かったそうです。
また、感情表現が豊か(ポジティブな方が良いかどうかはまだ不明)な方が長命である事も判りました。
ここから著者は子供に対する読み聞かせを推奨しています。これは子供に関わる人には特に示唆に富む内容でしょう。

葉酸やリコピンなど可能性のある栄養素についても言及していますが、それは「葉酸さえ摂取すれば病気にならない」といった単純な話ではないようです。

また、研究者らしい懐疑的な態度は崩さずに、ここでも「最晩年の生きる希望」について書かれていました。
心豊かに前向きに生きるということは、そのまま魂の強さなのでしょうね。
dmc.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.