自動思考とデザイン2024年03月22日 12:27

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

昨日、人気と信頼を集めていた有名な方が「ギャンブル依存症」で犯罪に手を染め、その立場を失ったというニュースがありました。あわせて「○○依存症」についての解説や情報も繰り返されました。私、依存症の当事者としては、医学的に正しいとされる知見が「日々アップデートされる暫定的な情報だ」という認識を持って頂けるとありがたいな、と思います。

肉体疲労と自動思考
ところで、みなさまはメンタルクリニックに行かれた事はありますか?
うつや依存症になっていく機序は、人により、また状況によりさまざまとはいえ、いくつかの共通点があります。まず「肉体疲労」。心の疲れの前にまず身体が疲れてしまい、それが慢性化している状態ですね。自覚以上に危険なんですよねこれが。
そして「自動思考」と呼ばれる、思考のパターン化です。たとえば言われた事が全て(私が悪い)という思考パターンに結びついたり、何かにつけてお酒が飲みたくなったり、という「習慣的な思考」のことです。

今日は、この話題を掘り下げたいのではなくて、「自動思考」がUIでも使われているよ、というお話です。(うつと自動思考については厚生労働省の資料をご参照ください。)

あらためて自動思考とは、特定の状況や条件が揃うと無意識的に引き起こされる思考や感情の反応を指しします。
例えば、暑い日に汗をかくとビールが飲みたくなったり、仕事の一区切りがついたらコーヒーを欲したりするような状況がこれに該当します。これらは経験に基づく条件付けやルーティンから生じる反応であり、多くの人々が日常生活で経験することですよね。
(ちなみに、疲れてくると「条件」の部分がガバガバになっていきます。「暑い日に汗をかくと」→「汗をかくと」→「○○すると」→「いつでも」のように。)

自動思考とUI
デザインの文脈では、自動思考はユーザーの行動を導くナビゲーションの一形態として活用されることがあります。ユーザーがある状況に直面したとき、どのように行動するかというパターンを予測し、それに対応するインターフェースを提供することで、直感的な使用体験を実現します。
例えば、炊飯器の「取消」ボタン。画面の中で小さく扱われてもよさそうですが、大きく物理ボタンとして存在する機種が多いです。これは、使用者が迷った時にいつでも押せる、押してよい、という状況が心理的安全性をもたらします。この「誤ったら取消ボタン」という思考が自動思考にあたります。

心理的安全性のあるUI
この心理的安全性は、ユーザーが新しいまたは複雑なインターフェースを使用する際の心理的ハードルを下げる効果があります。実際は取り消さなくてもよい場面でも、面倒くさくなったら取り消しボタンを押せばよい、ということが、使用者の心に寄り添った状況を作ります。とても大事です。使用者は、間違いを恐れずに操作できる環境があることで、より積極的にシステムやアプリケーションを探索し、利用することが可能になるからです。

「面倒くさい」がポイント
自動思考が心理的安全性をつくるヒントになるためには、自動思考が起きる状況は「疲れる」「面倒くさくなる」場面だ、ということに注目しましょう。

やる気を出せばそれに応え、面倒くさくなったら簡単にすませられるUI、そんなUIがデザイン出来るために、自動思考も応用してみて下さい。
dmc.
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「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.