「引受ける」2010年09月30日 23:52

普段はあまり意識しないのですが、例えば新しい契約書を交わすような時には、自身の立場やお客様との関わり方について確認をします。その確認作業は、一般論としてのデザイナーのポジションの確認作業を伴うものです。

不定期ではありますが、長い時間の中でこの作業を繰返してきたことで、はっきりとした方向性を感じるようになりました。

それは「誰がそのデザインを引受けているのか」という意識が、組織でもなく、少数の著名デザイナーでもなく、関わる全ての実名に向けられてきている、ということです。

日本の商品の特徴として、デザインの匿名性(アノニマス)が言われますが、それを理想とした柳宗理さんは、そのデザインの素晴らしさで知られるようになりました。
またアノニマスをブランド化した「無印」も、関わったデザイナーは知られるようになり、その中にはスターデザイナーと言われる方もいらっしゃいますね。

音楽や映画といった芸術作品とは異なりますが、手に取った商品について、ブランドや製造元だけでなくデザイナーやエンジニアを気にかけるのは、今の消費者にとっては当然の意識だと思います。

しかし、著名なデザイナーだけが名前を出してきたこれまでとは根本的に違うのは、「売れるからその名を使う」のではなく、その方が「自然で安心」だからです。
それは、スーパーの野菜にも生産者の名があることに似ています。その名を知らなくても責任を引受ける名前がある方が安心なのです。
「誰がデザインしたか」ではなく、「デザインした誰かを特定出来るか」と言い換えてもいいかもしれません。

また、ハード、ソフト、UI、サービス等々、一つの商品でも多くのエキスパートが関わりますから、誰か特定の一人だけが背負うのも実情とあわないはずですから、複数の名前が出て行くようになると思っています。

当然ではありますが、デザイナーはそのデザインを引受ける覚悟が必要です。
これは、とても大きな変化を産むベースとなるでしょう。


過去記事:ファイン、アノニマス、それから。
http://dmc.asablo.jp/blog/2009/06/09/
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