「シンプル」へのアプローチ2024年03月29日 10:36

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

シンプルという王道
シンプルさを保ちながらいまの感覚を取り入れて、沢山の支持を集める無印良品やユニクロのようなブランド、日本的な価値観が世界で支持されるのは興味深い事ですし、学べる事も多いです。
日用品では、無印良品のようなシンプルさを基盤にしながらも、雰囲気や価格帯を変えたブランド、例えばKEYUKAや3coinsなども人気を博しています。これらのブランドは個性を保ちつつも、「シンプルでおしゃれ」という大きな方向性を共有しています。
デザインの現場においても、この「シンプルでおしゃれなデザイン」を求められる事はとても多いです。

シンプルの守りと攻め
シンプルなデザインには二つの方向性があります。
一つ目は「レス(less)」というアプローチです。主張を控えめにし、特徴を抑えることで、嫌われない(=万人に受け入れられる)デザインを目指すことです。
このアプローチは守備的ですが、無駄を省き研ぎ澄ますことで、バランスのよいデザインになっていきます。
もう一つのアプローチは、「伝えたいことを単純にする」です。製品が使用される場所や対象者、彼らのライフスタイルを詳細に描き、ブランドのメッセージや価値、提供したい機能を明確にして、単純化していくのです。これは積極的にデザインの特徴を創造するアプローチで、シンプルながらも深みのある「伝わるデザイン」が形作られていきます。

ふたつのアプローチをうまく使い分け、両者を行き来する事か大切です。メッセージや伝えたいことをより具体的に形と言語にし、一人でも多くの方に共感して頂ける表現を目指して参りましょう。

デザイナーに頼むと字が小さくなるのが嫌?2024年03月27日 10:02

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

名刺の文字
先日、ある名刺交換の際に「デザイナーに頼むと字が小さくなる」という会話がありました。あまりに懐かしくてしばしフラッシュバック・・・

「デザイナーに頼むと字が小さくなるのが嫌」

私(河野)がこの仕事を始めた頃、このセリフを何度か言われた事があります。海外のデザイナーに頼んだら使いにくくなったので、それを修正したいというのも一度ありました。
デザイナーがなぜその文字を小さくしたのか、そこに「かっこよくしたいから」以外の意図が感じられて、なおかつ納得出来る理由がある。もしくは、それ以外どうでもいいほどかっこいい。そのような心を動かすものがなければ、やはりそれは至らぬデザインだと言えました。

スタイルはゆらぐ
上の不幸なすれ違いは、当時の工業製品のスタイリングのトレンドと、求められる使い勝手ギャップがある事でした。スタイリングのトレンドというのは、いわゆるファッション的な流行です。シンプルで使いやすいものより特徴的な造形を持つことを優先するスタイリングが流行っていました。
ファッションも工業製品も、そののち「使いやすくて美しいというもの」に収斂して行ったのがここ20年ほどの傾向だったと思います。
それでも、特にファッションがそれを破壊しようとし続けています。今でも用と美の間で揺れ続けています。

工業製品の場合、しばらくは「美が用を優先する」ということは成立しないと思います。ロケットにしても空飛ぶ車にしても、はじめから美しさが折り込まれています。SF的な最先端のものでさえそれが当然の時代だからですね。
ですので、現在「美しければ使いにくくても良い」と考えるデザイナーはめったにいないと思います。(本音は分かりませんけれど)

スタイルの良さと使いやすさは両立する
前回ご紹介した炊飯器のUIは、ナビゲーションだけでなく、パネルのサイズ、物理ボタン、文字の配置とサイズなど、徹底的に使いやすくデザインしたものです。そのデザインがプロの目*でもユーザーの目**でも評価を得たのは、大変嬉しく、また頼もしく感じる事でした。これからも自信を持って使いやすくて美しいUIをデザインして行こうと思います。
タイガー炊飯器JRX-T 特集記事より

*プロの審査員によるグッドデザイン賞を受賞しています。
**ユーザー投票による家電大賞で総合グランプリになりました。

家電大賞2023-2024 総合グランプリ受賞!2024年03月25日 09:06

UIデザインを担当したタイガー炊飯器「土鍋ご泡火炊き JRX-T100」が、家電大賞 2023-2024 総合グランプリを受賞しました!
読者投票でノミネート全家電の中から最多得票を獲得しての快挙、あらためましてお祝い申し上げます!
UIも一定の貢献が出来たようでこころから嬉しいです。(特集記事参照
家電大賞総合グランプリ タイガー炊飯器 JRX-T100

ユーザーさまからこのような評価を頂くと、UIもブランドの大切な資産だということに改めて思いがいたりました。これからも頑張って参ります。

自動思考とデザイン2024年03月22日 12:27

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

昨日、人気と信頼を集めていた有名な方が「ギャンブル依存症」で犯罪に手を染め、その立場を失ったというニュースがありました。あわせて「○○依存症」についての解説や情報も繰り返されました。私、依存症の当事者としては、医学的に正しいとされる知見が「日々アップデートされる暫定的な情報だ」という認識を持って頂けるとありがたいな、と思います。

肉体疲労と自動思考
ところで、みなさまはメンタルクリニックに行かれた事はありますか?
うつや依存症になっていく機序は、人により、また状況によりさまざまとはいえ、いくつかの共通点があります。まず「肉体疲労」。心の疲れの前にまず身体が疲れてしまい、それが慢性化している状態ですね。自覚以上に危険なんですよねこれが。
そして「自動思考」と呼ばれる、思考のパターン化です。たとえば言われた事が全て(私が悪い)という思考パターンに結びついたり、何かにつけてお酒が飲みたくなったり、という「習慣的な思考」のことです。

今日は、この話題を掘り下げたいのではなくて、「自動思考」がUIでも使われているよ、というお話です。(うつと自動思考については厚生労働省の資料をご参照ください。)

あらためて自動思考とは、特定の状況や条件が揃うと無意識的に引き起こされる思考や感情の反応を指しします。
例えば、暑い日に汗をかくとビールが飲みたくなったり、仕事の一区切りがついたらコーヒーを欲したりするような状況がこれに該当します。これらは経験に基づく条件付けやルーティンから生じる反応であり、多くの人々が日常生活で経験することですよね。
(ちなみに、疲れてくると「条件」の部分がガバガバになっていきます。「暑い日に汗をかくと」→「汗をかくと」→「○○すると」→「いつでも」のように。)

自動思考とUI
デザインの文脈では、自動思考はユーザーの行動を導くナビゲーションの一形態として活用されることがあります。ユーザーがある状況に直面したとき、どのように行動するかというパターンを予測し、それに対応するインターフェースを提供することで、直感的な使用体験を実現します。
例えば、炊飯器の「取消」ボタン。画面の中で小さく扱われてもよさそうですが、大きく物理ボタンとして存在する機種が多いです。これは、使用者が迷った時にいつでも押せる、押してよい、という状況が心理的安全性をもたらします。この「誤ったら取消ボタン」という思考が自動思考にあたります。

心理的安全性のあるUI
この心理的安全性は、ユーザーが新しいまたは複雑なインターフェースを使用する際の心理的ハードルを下げる効果があります。実際は取り消さなくてもよい場面でも、面倒くさくなったら取り消しボタンを押せばよい、ということが、使用者の心に寄り添った状況を作ります。とても大事です。使用者は、間違いを恐れずに操作できる環境があることで、より積極的にシステムやアプリケーションを探索し、利用することが可能になるからです。

「面倒くさい」がポイント
自動思考が心理的安全性をつくるヒントになるためには、自動思考が起きる状況は「疲れる」「面倒くさくなる」場面だ、ということに注目しましょう。

やる気を出せばそれに応え、面倒くさくなったら簡単にすませられるUI、そんなUIがデザイン出来るために、自動思考も応用してみて下さい。

記憶とデザイン2024年03月20日 18:07

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

前回、UIは記憶の外部性を上手く使うというお話をしました。読み返してUIだけでなくデザイン全般にとって、「記憶」はとても大事なことだと思い直しました。

そこで、「記憶」について現在の正しい知識をおさらいします。
以下は「脳科学辞典」というウェブサイトから引用抜粋した記憶の分類です。

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保持時間に基づく記憶の分類
【感覚記憶】*1
 最も保持期間が短い記憶。
 各感覚器官に特有に存在し、瞬間的に保持されるのみで意識されない。
【短期記憶】*1,2
 保持期間が数十秒程度の記憶。
 一度に保持される情報の容量の大きさにも限界がある。
【長期記憶】*1,2
 短期記憶に含まれる情報の多くは忘却され、その一部が長期記憶として保持される。
 保持時間が長く、数分から一生にわたって保持される記憶。量の大きさに制限はない
【即時記憶】*3
 情報の記銘後すぐに想起させるもので、想起までに干渉を挟まない。
【近時記憶】*3
 即時記憶より保持時間の長い記憶。
 情報の記銘と想起の間に干渉が介在されるため、保持情報が一旦意識から消える。
【遠隔記憶】*3
 近時記憶よりもさらに保持時間の長い記憶である(~数十年)。

*1は心理学領域の区分
*2は動物実験生理学領域の区分
*3は臨床神経学領域の区分

内容に基づく記憶の分類
 長期記憶は内容により、陳述記憶と非陳述記憶に大別される。陳述記憶はイメージや言語として意識上に内容を想起でき、その内容を陳述できる記憶である。宣言的記憶とも。一方、非陳述記憶とは意識上に内容を想起できない記憶で、言語などを介してその内容を陳述できない記憶である。非宣言的記憶とも。

【陳述記憶】
 陳述記憶にはエピソード記憶と意味記憶(知識)がある。
<エピソード記憶>
 エピソード記憶とは、個人が経験した出来事に関する記憶で、例えば、昨日の夕食をどこで誰と何を食べたか、というような記憶に相当する。
その出来事を経験そのものと、それを経験した時の様々な付随情報(時間・空間的文脈、そのときの自己の身体的・心理的状態など)の両方が記憶されていることを特徴とする。
<意味記憶>
 意味記憶は知識に相当し、言語とその意味(概念)、知覚対象の意味や対象間の関係、社会的約束など、世の中に関する組織化された記憶である。例えば、「ミカン」が意味するもの(大きさ、色、形、味や、果物の一種であるという知識など)に関する記憶が相当する。その情報をいつ・どこで獲得したかのような付随情報の記憶は消失し、内容のみが記憶されたものと考える。

【非陳述記憶】
 非陳述記憶には手続き記憶、プライミング、古典的条件付け、非連合学習などが含まれる。
<手続き記憶>
 手続き記憶(運動技能、知覚技能、認知技能など・習慣)は、自転車に乗る方法やパズルの解き方などのように、同じ経験を反復することにより形成される。一般的に記憶が一旦形成されると自動的に機能し、長期間保たれるという特徴を持つ。
<プライミング>
 プライミングとは、以前の経験により、後に経験する対象の同定を促進(あるいは抑制)される現象を指し、直接プライミングと間接プライミングがある。
<古典的条件付け>
 古典的条件付けとは、梅干しを見ると唾液が出るなどのように、経験の繰り返しや訓練により本来は結びついていなかった刺激に対して、新しい反応(行動)が形成される現象をいう。
<非連合学習>
 非連合学習とは、一種類の刺激に関する学習であり、同じ刺激の反復によって反応が減弱したり(慣れ)、増強したり(感作)する現象である。

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こうして見ますと、デザインは「陳述記憶」に働き掛けて積極的に「意味をつくる」仕事と、「非陳述記憶」を利用して「体得させる」仕事の両面がありますね。
「意味をつくる」とは、ブランドイメージやストーリーや価値ある体験を与えるという側面です。「体得させる」は、上手く使わせてそのモノやサービスを自分のものにしてもらう側面です。そして、体得とは意味を実感する事でもありますから、相互に補完しあっていると言えるでしょう。
「UIデザインとブランドデザインは切っても切り離せない」ということが、記憶という視点からも見えてきます。UI、大事ですね。
dmc.
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「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.