ダメマシンクリニック78【多目的トイレの自動ドア:自動過多】2017年09月30日 10:38

みなさま こんにちは!

今週の横浜は金木犀が薫りはじめ、赤レンガではオクトーバーフェストの小屋も建って、すっかり秋めいてきました。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、みなとみらいのショッピングモールに設置された多目的トイレの自動ドアです。

ダメマシンクリニック78【多目的トイレの自動ドア】

78 多目的トイレの自動ドア01
こちらは2013年夏に新設されて以来とてもきれいに運用されていますが、トイレにはこの様なダメ出しが。

78 多目的トイレの自動ドア02
詳しく見てみますと、、
1:注意書(扉を開放したまま退出)
2:告知(禁煙)
3:表示(緊急連絡先)
禁煙と連絡先はさておきまして、「扉を開放したまま退出」とはどういうことでしょう?
退室時に扉を閉めるのは普通のこと、むしろ良いマナーであると思います。場所によっては「扉は必ず閉めてください。」という張り紙も見かけます。それをわざわざ「閉めるな」と書かれていることには、何か理由があるはずですね。

よく見ますと張り紙の下段には、、
「内側の『閉』ボタンを押して退室されると外側から開かなくなり、次の方のご利用ができなくなります。」
とあります。扉を内側から閉めると鍵がかかる仕組みなのですね。
エレベーターで「閉」ボタンを押して出られる方を見かけますが、同じような感覚でボタンを押して退室される方がおられるのでしょう。しかしそれをしてしまうと外から開かなくなる。。
普段からドアはきちんと閉められる方がトラブルの元とは、、なんとも残念ですね。

78 多目的トイレの自動ドア03
ここでボタンの周囲を見てみますと、ボタンは「開/閉」という表記になっていて、「施錠中」という表示はありますが、鍵がどこでかかるかは明示されていません。
その補間のためでしょう、ボタンの上に「施錠してください」という注意書が添えられています。
これらを全て丁寧に読めば、「ドアを閉めると鍵がかかる」ということが理解できます。
なお、細かい話になりすが「鍵」は開け閉めするためのもの(キー)、「錠」は固定する本体(ロック)です。こちらの場合は鍵は介在せず、内側から扉を閉じると自動的に錠が閉じる設定になっています。

ドアの開閉と施錠解錠が一つの動作の中に組み込まれていること、そしてそれらの関係性が混同され、ぱっと見ても判らない状態にあることが混乱の要因でしょう。言葉の使い方からも、ドアと鍵(錠)の扱いが混同されていることが滲み出ていますね。


【診断】

ドアを閉めると自動的に鍵がかかることが原因ですので「自動過多」と診断します。


【処方】

では処方です。
現状のダメ出しは、節度を保ちつつできるだけ気付いてもらえるような形態を模索しているとお見受けします。応急処置としては現状以上のものは望めないと考えます。
そこで、根本的な治療を検討しましょう。

処方01:メーカーによる治療
ドアの開閉と施錠解錠を別々の行為に分け、利用者にはそれぞれの動作を自然に受け入れられるよう配慮して以下の様にします。
・スライドドアの開閉はバーハンドルで行う。
・ドアは電動アシストとし、非力な利用者でも使えるようにする。
・施錠解錠は別ボタンとし、文言も「施錠/解錠」とする。また、理解のしやすさに配慮して、アイコンと英語表記を加える。
・施錠を表す色はより標準的な「赤」にする。
・禁煙の表示は既存の注意書きの近くに配置する。
・緊急連絡先は座った時の視界に入る位置に配置する。

78 多目的トイレの自動ドア04

78 多目的トイレの自動ドア05
ドアは押すかスライドさせるか、バーハンドル自体はどちらの行為も促す形態ですが、殆ど全ての多目的トイレが車椅子を考慮したスライドドアであることから、利用者は経験的に「スライドさせて開ける」と捉えてくれるでしょう。
入室時に「ドアを閉めたあと鍵を締める」ことで、退室時に「ドアは閉めて鍵は開けておく」という状態が無意識的に体現できます。(無意識的、と言いますのは「明確に考えなくても身体がその様に動く」という程の意味です。)

実は、手動のスライドドアと普通の鍵で充分なのです。手動であればわざわざドアの開閉と施錠解錠を一つの行為にまとめることはしないでしょう。しかし自動化するとこうなってしまう。。
「行為をまとめることは便利である」という思考が、それこそ「自動的に」支持されている現状が、今回のような状況を生むことを忘れてはなりません。

ここでは自動化ではなく省力化が本当のポイントなのですね。
ですので自動ドアではなく電動アシストドアがよく、鍵は操作の簡単なボタン(現状)がよい、ということになります。

ちなみにボタンを押すタイプの自動ドアもありますが、その場合は鍵をボタンではなく回すタイプにするなど、「動作を別のものにする」のが良いでしょう。記憶に残る手応えを分けておくことによって混同を避けるのですね。ちょっとしたコツです。

それからロックアイコンの「赤」ですが、現状はそれほど確定的な色は存在しないようです。ですので、今後スタンダードな色が決まってくる可能性がありますが、今回は信号機の止まれが赤であること、影響力のあるiOSのロックアイコンが赤であることから採用しました。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.78
対象:多目的トイレ
設置場所:みなとみらいのショッピングモール
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.9.30
症例:自動過多
ダメ度:××(治療が望ましい)
応急処置:ー
治療方針:外科「分離・移植」


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