デザインは「フォロー」 社会との接点をつくる2024年12月02日 10:22

みなさまこんにちは^^

デザインは相違を埋めるフォローである。
デザインは(何かに使える?)という根源的な仕組みから出てきたもの。
作り出したものとそれを社会的に利用するのは別のことだ。
みたいな話を続けてきました。

石器の喩えを続けますと、、

・割れた石そのまま     ・・・ 無用もしくは危険
・手で持てるよう柄を付ける ・・・ 役に立つ

柄を付けることはデザインそのものです。
つけた人はもしかしたら色々なものを切る遊び道具として楽しんだかもしれませんけれど、役に立つ道具として受け入れられたことでしょう。

この「受け入れられる」に着目すると、これは人間社会との接点を作った、と言えます。
この視点は、人を活かす、という考え方に通じます。

デザインには結果的に進歩的な側面が生じますが、その前段階には「相違を埋める」があります。
まずは、社会との接点を上手く作る、というのは人にもモノにも無理なく効果的なアプローチです。

デザインの根源「何かに使える?」2024年11月29日 10:29

みなさまこんにちは^^

デザインの問題解決は「相違を埋めること」であり人間が本来的に持っている性質、というお話をしました。

「人間本来」と大きく出ましたので、石器時代に遡ります。

石器は打製石器(石を割って作る)から磨製石器(磨いて作る)とあります。出土の時代性から、最初は割れた石をそのまま用い、つぎに柄を付けて用い、やがて割ったり磨いたして目当ての形を得るようになる、、。
これ、デザインそのものでしょう?

それで、大切なのは割れた石は切れるという「発見」と、それを記憶しておいて「概念化」し、他の場面で用いる「流用」という、それぞれ別の作用が働いているということです。
他にも、「火の近くで干からびた肉は腐らない」を発見し、「腐らない肉」という概念を知り、火の近くで干す以外の様々な保存方法を展開して行く、などなど。
発見を概念化して組み合わせて流用する、これは学問的に「設計の原型」だそうです。設計って日本語でデザインですよね。

この(これって使えるかも?)と思って、経験やものを取っておく行為は、現代の子供たちを観察してもみられます。この性質を強く持ち続けた人が「ブリコルール」になるのでしょう。私自身がこのタイプでした。

この性質は「遊び」の延長です。
人は遊びの中に有用物に至る思考と行動の回路を持っているのです。
(遊びから学ぶのは動物にも見られますね。)

遊びの延長で生まれたものが集団を変え、それを利用して社会的に利用する人が現れる。
これがデザインと進歩の関係性と言えるでしょう。

デザインは遊び。
デザインは楽しい。
お忘れなく^^

進歩と相違 デザインはフォロー2024年11月27日 16:35

みなさまこんにちは^^

デザインは「問題解決」ではあるけれど、「社会・人類の再定義」ではないというお話を書きました。

「社会・人類の再定義」の背景には、現在の社会はまだまだ発展途上だから、進歩してよりよい社会を作るのだ、という思想があります。
この思想を「進歩主義」といいます。進歩主義は政治思想のひとつですから、起業家が「社会を良くするために政治に干渉して行く」のは自然のことですね。

進歩主義というワードがさす内容は時代や国によって違うのですが、ヨーロッパの啓蒙思想が源流で、文明と非文明を対比し、非文明的社会を「劣っている」と見なしたことが始まりです。

これ、無理解による差別、と今なら言われそうですよね。
実際に、非文明的社会は単なる相違に過ぎず優劣はない、という考え方とそれに基づく学問も盛んで、人類学や大きな影響力を持った「構造主義」はその流れから生まれました。
(以後詳細は専門書を各自でお調べくださいませm(^^)m)

さて、デザインにおいての「問題解決」です。
これは、前回記事の通り、進歩の文脈でも成立します。
しかし、スマホを使いやすくするとか、タクシーをすぐ呼べるとかの「進歩」は、ほとんどの場合「社会の変化によって生じた溝を埋める」ものです。
これは「進歩」というより「フォロー」です。

そう、フォロー。

有名なAppleのMacのコピー「For the rest of us.」は、直訳しますと「私たち以外のために」となりますが、意味するところは「コンピューターに詳しくない人のために」です。これはデザインとマーケティングの目指すところを明確にしていますね。
この事象を追いかけて行くと「社会を良くする」に繋がって行くのですが、コンピューターが普及したことが社会を変えたのは事実だとしても、それが「良くなった」と呼べるかどうかはまだ分かりません。
鎌倉時代の後に戦国の世が来たように、ローマが席巻した後に長く中世が続いたように、改革のあとに「乱世」がくることもあります。

デザインの問題解決は相違を埋めること。
これは、依拠する思想とは関係なく、人間が本来的に持っている性質なのです。

(つづく

デザイン -9- まとめ・後編2024年11月22日 18:43

みなさまこんにちは^^

前回までに、身近でなじみ深い6つのデザインを手かがりに、以下のところまで抽象化しました。

美しく、機能的で、意味があること。
これらの総合的な「創意工夫」がデザイン。


さて、デザインには「何故デザインをするのか」という動機が潜在します。また、デザインする側とそれを享受する側という広がりと流れがあります。

この動機と流れは、静的で結果論的な「デザインとは何か」という定義では抜け落ちてしまいます。(これまで見てきたように)

そこで、動機と流れを意識して加えたのが以下の一文です。

デザインとは、誰かを幸せにするために、創意工夫して、意味を与える。

動機と流れは「自分以外の誰かを幸せにしたい」に収まっています。
この視点から見た時、デザイン行為は「創意工夫」に集約され、デザインの結果は「意味を与える」に集約されます。

この文は一言で言い表せます。
弊社が創業時よりかかげ、大事にしている言葉がです。

デザインは贈り物

・・・たどり着きました。
そう。デザインは贈り物なのです。
デザインに迷ったら、誰を喜ばせたいか、どう喜ばせたいかに立ち返りましょう。基本にして永遠の指針なのです。

(おわり

ここで、デザインが産業上の役割を担ってきたことは重要な指摘です。端的に言って「売れる」「利益が出る」という点こそ、産業におけるデザインの価値を語るには欠かせない視点です。
では、「売れるデザインとは何か」
これは個別の相談の際にお話させてくださいませ。よろしくお願い申し上げます。

デザイン -8- まとめ・前編2024年11月20日 18:23

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインについて、それぞれ無謀かつ大胆に3つの要素で表しました。
振り返って見ましょう。

・おしゃれ(トレンド)
・着心地
・帰属

・雰囲気
・居ごこち
・使いやすさ

・環境との調和
・使いやすさ
・美しさ・シンボル

・らしさ(アイデンティティ)
・かっこよさ
・機能・性能

・魅力的
・使いやすさ
・ライフスタイル

・わかりやすさ
・共感
・魅力的

それぞれは各記事をご参照いただくとしまして、さらにこれをまとめます。無謀かつ大胆に。

美しさ
・美しさ
・かっこよさ
・雰囲気
・魅力的

機能性
・使いやすさ
・機能・性能
・わかりやすさ
・着心地
・居ごこち

意味
・おしゃれ(トレンド)
・環境との調和
・シンボル
・らしさ
・ライフスタイル
・共感

美しく、機能的で、意味があること。
これらの総合的な「創意工夫」がデザインです。
既知の、当然の結論になりました。でもその当然性が大事なんです。

さて、デザインは「行為」です。
それについては次回に。(つづく

デザイン -7- グラフィック2024年11月18日 10:45

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインの最後、グラフィックデザインについてです。

自己紹介で「デザインをしています」と申しますと半数以上の方がウェブかチラシなどの媒体系のデザインをイメージされるようです。もっとも身近なデザイン領域なのでしょう。
媒体にはポスターやデジタルサイネージもありますし、商品パッケージや取説などもあって広い範囲にわたりますが、これらはひとまとめにしてグラフィックデザインと呼ばれています。

さて、領域の広いグラフィックデザインもこれまでと同じようにポイントを3つに整理しました。

・わかりやすさ
・共感
・魅力的

わかりやすさ
グラフィックデザインは、媒体の主目的の情報伝達を確実に行う必要があります。伝えたい相手に伝わるような工夫がデザインの肝要です。初見で届く文字数と伝えたい文字数のギャップをどううめるのか、腕の見せ所です。

共感
伝わった情報が感情に響くことを共感と言います。この感情は、「激情」のような強いものから、「ちょっとした気分」といった軽いものまで幅があります。強度は別にしても「心」に届かせることが、行動を起こすはじめの一歩です。

魅力的
情報が伝わって共感したら、あとは魅力的かどうかです。
街を歩いている時にみかけたコーヒーショップの例でお話しますと、、
→看板をみつけて(わかりやすさ)
→ちょっと休みたくなったし(共感)
→イラストが美味しそうだったので(魅力的)
→お店にはいった。
この流れの最後、魅力的でなかった場合は別のお店を探す(あっちのソフトクリーム屋さんの方が良さそう、など)ということもありますね。
お店の場合は店舗の佇まいもふくめた総合的なものですが、グラフィックデザインの力は大きいです。

以上、身近でなじみ深い6つのデザインについてでした。
次回はまとめです。

デザイン -6- プロダクト2024年11月13日 18:27

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその5、プロダクトデザインについてです。

プロダクトデザインというと、今では「ウェブサービス」をイメージする方もいらっしゃるはず。これはプロダクトが「製品」という意味だからなので間違いはありません。
しかしここでは昔ながらの、工業デザインや商業デザインと呼ばれる、実体物としての製品のデザインをプロダクトデザインとします。
一般消費者目線ですと、市場で買えるモノのデザイン、です。

さて、これまでと同じようにポイントを3つに整理しました。

・魅力的
・使いやすさ
・ライフスタイル

魅力的
モノとして魅力的かどうか。この魅力は「市場で買われる」という行為の中で発揮されるものです。
したがって、好きなキャラが描かれているとか、金で出来ているとか、破格とか、モノ自体のデザイン(意匠)とは別の要素が沢山あります。これらがプロダクトデザイン独特のはなやぎ、もしくは混とんを作っています。

使いやすさ
雑貨でも家電でも、機能と性能が「使える」と思ってもらえるレベルに無ければあっという間に排除されてしまいます。開発においてはここがとても重要な点です。

ライフスタイル
魅力的で使いやすいものであっても、自分のライフスタイルに合っていないと手が出しにくいものです。この点ではライフスタイルに合うかどうかが重要です。
それとは逆に、ライフスタイルを変化させるプロダクトがあります。ビデオやスマートフォンは分かりやすいと思いますけれど、これは発明品ですね。発明品はライフスタイルの提案(そのプロダクトを使うとどんな生活になるか)を含んでいないと受け入れられません。ですのでデザインがとても大事なのです。

(つづく

デザイン -5- カー2024年11月08日 16:35

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその4、カーデザインについてです。

私たち世代のプロダクトデザイナーは少なからずカーデザインを意識していたと思います。成績優秀な人はカーデザインに進むのが王道でした。花形ですね。私はプロダクト志望でしたが車も好きで、卒業制作は地面効果を使ったひとり乗りのヘリコプターで、今で言う空飛ぶ車でした。

さて、これまでと同じようにポイントを3つに整理しました。

・らしさ(アイデンティティ)
・かっこよさ
・機能・性能

らしさ(アイデンティティ)
これは、車自体の「らしさ」です。ポルシェらしさやホンダらしさというものを、デザイナーも意識していますし、ユーザーも気にしています。その意味で大事なデザインのポイントです。
また、乗る人の個性を表してもいます。ファッションにおける「帰属」と通ずるところです。

かっこよさ
カーデザインほど「かっこよさ」を前面に出しているプロダクトはないでしょう。
今は「かっこよさ」は細分化されていて、場合によっては「かわいさ」や「強さ」といった方が良いものもありますが、集約する言葉として「かっこよさ」は相応しいと思います。

機能・性能
速い車、小回りが利く車、沢山乗る車など、その車の性格はそのまま外形に出てきます。その車の機能、性能はそのままデザインの重要なポイントです。実際のところ、種々の構成要素をどうパッケージするかがその車を定義しています。

以上に加えて、ソフトウエアの部分、UI/UXデザインの比重が増していることも見逃せません。私は、現在この点は「らしさ」に含まれると考えています。それは、人が移動の主体者として自動車に乗っている間は変わりません。
近い将来、自動車が「移動するためのもの」ではなく「輸送するためのもの*」になったら変わるでしょう。

(つづく

*)「移動」と「輸送」については人類学者ティム・インゴルドの「徒歩旅行/輸送」の区分けを参照。

デザイン -4- 建築2024年11月06日 11:26

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその3、建築についてです。

これまでと同じように、建築の一ファンとしてポイントを3つに整理しました。

・環境との調和
・使いやすさ
・美しさ・シンボル

環境との調和
建築はまず、その場所に適合している必要があります。気候風土、法規制、風土習慣、地域の特性などです。準拠する法規が同じ国内でも、気温差が激しく景観条例などが厳しい都市部の住宅地と、温暖で規制の少ない新規開拓地では、建物に要求される条件が異なって当然です。その条件が建物のデザインに与える影響は少なくありません。

使いやすさ
建物には何かしらの目的があります。長い使用期間に耐える柔軟性を含ませながら、目的に添った使いやすさを持たせられるか。初期のデザインだけでなく、変化して行くことを受け入れられるか。ここもデザインに大きく影響します。

美しさ・シンボル
景観の中で、その建築が美しいと思えること。またはシンボルと思えること。ここは建築ならではのデザインの見どころです。
「環境との調和」とあわせてみますと、「その土地に馴染みながらその土地の特性を象徴するデザイン」「まったく異質の存在感を放つが、町の機能を集約するランドマークとして美しさを際立たせる」というようなことが成立します。建築の面白さですね。

(つづく

デザイン -3- インテリア2024年11月04日 10:05

みなさまこんにちは^^

身近でなじみ深い6つのデザインのその2、インテリアについてです。

ファッションのデザインに対してと同じところ、一ファンとしてポイントを3つに整理しました。

・雰囲気
・居ごこち
・使いやすさ

雰囲気
これはいわゆるスタイリング、デザインの方向性のことですね。クラシカルなデザイン、モダンな空間、趣味のモノに溢れた部屋、、。その空間がどんな雰囲気を湛えているのかは、デザインの細部ひとつひとつが重なって醸し出されるものです。

居ごこち
その空間で過ごした時に、実際に感じる感情のことです。これは雰囲気とはまた別の体験的な印象のことで、リラックス出来るのか、楽しくなるのか、緊張感を伴うのか。
それらが居心地の良し悪しを左右します。雰囲気は好みではないけれどリラックス出来た、という経験はよくあることです。

使いやすさ
空間がもつ機能性にどれだけ配慮されているか、ということです。例えば使いやすいキッチンは、装備以上にレイアウトが大切ですよね。
使いにくい空間は居心地が良いとは言えず、また雰囲気にも影響していきますが、使いやすさだけを前面化(優先)していきますと、全体としては雰囲気や居心地がつまらなくなるということも起きます。バランス、ここでも大切です。

(つづく
dmc.
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