「今の普通」にアップデートする大切さ2024年04月15日 15:33

 いまさらデザインしても、、とお考えの皆さまこんにちは^^

 弊社の23周年ということであらためて振り返りますと、大変ありがたい事に、UIとプロダクトの両方で、ずっと現場にいさせてもらいました。修業時代を含めますと30年以上が経っています。もうとっくに若手ではありませんが、かといって貫録もベテラン感もまだちょっとありません。
 しかし、世の中がアナログからデジタルへ、手書きからコンピューターへ、さらにPCからスマホへ、、と、目まぐるしく変遷する間の、UIと製品の複雑化の過程をリアルに体感していることに驚きます。
そしてそれこそ「強み」なんじゃないの?と、プロ経営者のK女史に言われまして、あ、確かに!となりました。
 そしてこの経験は、最先端とは言えない製品の(従ってほとんどの製品の)、いかに「おいてけぼり」をなくして気持ちよく使ってもらえるか、という課題にめちゃくちゃ活かせる!と改めて思っております。

 弊社のUIデザインでは、限られたリソースや動かしがたい前提の中でも充分に効果*を発揮する方法を確立しています。
たとえば、既に実績のある機器のリデザインは慎重になりがちですが、きちんとアップデートして行く努力が大切です。これまでの使用者を尊重しながら、同時に「今の普通」を機器に体現させることは、デザインのすべき仕事でしょう。

 ぜひ、私を貴社の役に立たせて下さい。ご相談をお待ちしております。

*「効果」には、機能面(視認性・操作性・確実性...)と、アイデンティティ(認識性・安心感・愛着...)があります。

デザイナーのイメージ2024年04月05日 17:31

デザインを頼みたいけれどどのタイミングで頼めばいいかお悩みの皆さまこんばんは^^

怖いデザイナーのイメージ
少し前に、「デザインを頼むことに心理的ハードルがある」とある企業オーナーさまが仰っていました。うかつに相談すると色々と怒られそうだ、頼むこちら側もきっちりと作り込んでから頼まないといけない気がする、と。
ちなみに、デザイナーにどんなイメージをお持ちかを伺うと、メディアで見かけるスーパーデザイナーの印象が強かったようです。そして、無名でも「縦襟でちょっとすかしてて写真はモノクロ」みたいな印象をデザイナーにお持ちでした。「巨匠イメージ」、健在なんですね。

デザイナーっていくつか象徴的なイメージがありますが、最近のプロダクトデザイナーは「丸眼鏡をかけ髭を生やしたおじさん」というのも典型の一つだそうで。

プロダクトデザイナーのイメージ
AIもそんな感じに描いてくれました(笑

外観のイメージはともかく、気軽に頼めることと仕事のクオリティが相反するように思われて(思わせて)いるのは良くないことだと思いまして、フレンドリーで頼みやすく結果を出しているデザイナーは沢山いらっしゃいますよ、タイミングを意識すればスムーズに頼めますよとお伝えしました。

ではどんなタイミングが良いのでしょう。次回はその辺りをお話します。

「シンプル」へのアプローチ2024年03月29日 10:36

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

シンプルという王道
シンプルさを保ちながらいまの感覚を取り入れて、沢山の支持を集める無印良品やユニクロのようなブランド、日本的な価値観が世界で支持されるのは興味深い事ですし、学べる事も多いです。
日用品では、無印良品のようなシンプルさを基盤にしながらも、雰囲気や価格帯を変えたブランド、例えばKEYUKAや3coinsなども人気を博しています。これらのブランドは個性を保ちつつも、「シンプルでおしゃれ」という大きな方向性を共有しています。
デザインの現場においても、この「シンプルでおしゃれなデザイン」を求められる事はとても多いです。

シンプルの守りと攻め
シンプルなデザインには二つの方向性があります。
一つ目は「レス(less)」というアプローチです。主張を控えめにし、特徴を抑えることで、嫌われない(=万人に受け入れられる)デザインを目指すことです。
このアプローチは守備的ですが、無駄を省き研ぎ澄ますことで、バランスのよいデザインになっていきます。
もう一つのアプローチは、「伝えたいことを単純にする」です。製品が使用される場所や対象者、彼らのライフスタイルを詳細に描き、ブランドのメッセージや価値、提供したい機能を明確にして、単純化していくのです。これは積極的にデザインの特徴を創造するアプローチで、シンプルながらも深みのある「伝わるデザイン」が形作られていきます。

ふたつのアプローチをうまく使い分け、両者を行き来する事か大切です。メッセージや伝えたいことをより具体的に形と言語にし、一人でも多くの方に共感して頂ける表現を目指して参りましょう。

デザイナーに頼むと字が小さくなるのが嫌?2024年03月27日 10:02

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

名刺の文字
先日、ある名刺交換の際に「デザイナーに頼むと字が小さくなる」という会話がありました。あまりに懐かしくてしばしフラッシュバック・・・

「デザイナーに頼むと字が小さくなるのが嫌」

私(河野)がこの仕事を始めた頃、このセリフを何度か言われた事があります。海外のデザイナーに頼んだら使いにくくなったので、それを修正したいというのも一度ありました。
デザイナーがなぜその文字を小さくしたのか、そこに「かっこよくしたいから」以外の意図が感じられて、なおかつ納得出来る理由がある。もしくは、それ以外どうでもいいほどかっこいい。そのような心を動かすものがなければ、やはりそれは至らぬデザインだと言えました。

スタイルはゆらぐ
上の不幸なすれ違いは、当時の工業製品のスタイリングのトレンドと、求められる使い勝手ギャップがある事でした。スタイリングのトレンドというのは、いわゆるファッション的な流行です。シンプルで使いやすいものより特徴的な造形を持つことを優先するスタイリングが流行っていました。
ファッションも工業製品も、そののち「使いやすくて美しいというもの」に収斂して行ったのがここ20年ほどの傾向だったと思います。
それでも、特にファッションがそれを破壊しようとし続けています。今でも用と美の間で揺れ続けています。

工業製品の場合、しばらくは「美が用を優先する」ということは成立しないと思います。ロケットにしても空飛ぶ車にしても、はじめから美しさが折り込まれています。SF的な最先端のものでさえそれが当然の時代だからですね。
ですので、現在「美しければ使いにくくても良い」と考えるデザイナーはめったにいないと思います。(本音は分かりませんけれど)

スタイルの良さと使いやすさは両立する
前回ご紹介した炊飯器のUIは、ナビゲーションだけでなく、パネルのサイズ、物理ボタン、文字の配置とサイズなど、徹底的に使いやすくデザインしたものです。そのデザインがプロの目*でもユーザーの目**でも評価を得たのは、大変嬉しく、また頼もしく感じる事でした。これからも自信を持って使いやすくて美しいUIをデザインして行こうと思います。
タイガー炊飯器JRX-T 特集記事より

*プロの審査員によるグッドデザイン賞を受賞しています。
**ユーザー投票による家電大賞で総合グランプリになりました。

「好き嫌い」の力 私が「好き」と言える人を応援する理由2015年11月07日 11:14

みなさまの「大好きなもの」は何でしょう?
何をおいてもこれがやりたい!こういうことがしたい!ということはありますか?
私は仕事や子育てを通して「好き」は案外難しいものである、と思うようになりました。

経験則から申しますと、複数のデザイン案の中から最適なものを選ぶ際、「どれが良いですか?」という問いにスパッと答えられる人は少ないのです。初めはデザインの力不足が原因と思っておりました(もちろんその側面もあります)が、そうでもないことが多かったのです。

また、「好きでいくらでも続けられること」を尋ねますと、これだ!と言うものをすぐに挙げられない方も多いようです。
思春期のころ「好きなことをやってみよう」と言われても「それがよくわからない」と感じた方は多いかもしれません。

好みを言うのは憚れる、という感性もありますね。しかしそれだけなのかしら、、。

逆に「嫌い」はいかがでしょうか。例えば、多少の差があっても食べ物の好き嫌いがある方は少なくないと思います。そして「好き嫌い」と申しますが、実際は苦手なものをさして言いますね。好き嫌いとはつまり「嫌いなものがある」ということです。

たとえ話ですが、「大好きな食べ物」と「大嫌いな食べ物」を混ぜたものは食べられますか?ほとんどの方が「台無し!」と怒ったり残念がったりして手が付けられないです。つまり、「好き」より「嫌い」が勝ってしまうんですね。「嫌い」って強いんです。

回りくどい話をしましたが、私たちは「嫌い」により強く感応するように出来ています。危険を察知して忌避することで生き延びてきた、、とDNAに刻まれたことなのかもしれませんね。
何かを成し遂げる修業には古来「戒」が用いられてきました。理に適っていると感じます。またデザインを選ぶ時も「ダメなものを落とす」方(不美人法)がはるかに高精度です。
その分野の「専門性がない人」が精度を上げるために「嫌い」を利用する方法は有効なのです。

しかし、ネガティブな感性を磨きすぎますと、新しい価値を見落としたり創造性を失うことも指摘されています。(確証バイアスなど)

商品の値段や真贋をあてさせるテレビ番組が沢山ありますが、結構難しいですよね。いいと思っていたモノでもその値段が低いと知らされると、たちまち自信を失ってしまいます。「値段」という客観性のある価値観の前では自身の好みという主観は脆弱なのですね。

ですから、「これが好き!」と迷いなく言える方は、その価値観を長い間の努力を通して獲得した可能性が高いのです。
そしてそういう方は「こういうものが欲しい!」「こういうことをしたい!」という、まだ目に見えない価値に気づくことがあります。そしてその感性の向こう側に大勢の「まっている人」がいるのです。

私の友人の中には沢山「好き!」「これが欲しい!」と言える方がいますが、代表格の松本美佐さんをご紹介させて下さい。
松本さんはお菓子教室を運営、後進を育てる中で、教室運営に関連する社会的な課題とその意義に気づき、教室運営アプリ(顧客管理システム)を開発するに至りました。開発中も一貫して「これがしたい!」という芯を持ち続け、皆に喜んで使って頂けるところまであと一歩まで迫っています。
リリースしたら、ぜひ触って見て下さい。
そして、「好き」がいえる人の力を感じて頂ければ嬉しいです。

テトコ:https://www.facebook.com/tetocosystem/


ちなみに自分にとって「本当に好きなこと」の見分け方は「手抜きをしない」です。例えば「ゲームが好き」だとしても攻略法を検索したり強い武器を買ったりする人は、そこそこ好き、くらいかもしれませんヨ。。

過去記事:不美人法
http://dmc.asablo.jp/blog/2009/07/17/
dmc.
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