ダメマシンクリニック84【コンビニの新型自動コーヒーマシン:多重コミュニケーション不全】2019年04月25日 08:00

みなさまおはようございます!

この時期には珍しい雨ですね。平成も残すところあと6日、テレビやネットでは平成を振り返る番組や企画が沢山あって懐かしんでおります。UI(ユーザーインターフェイス)という言葉や概念がプロダクトデザインの分野に登場、浸透しはじめたのも丁度平成へと変わる1980年代末でした。
現場視点で振り返りますと、パソコンの普及によってGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)が認知されたこと、iPhoneの登場によってタッチインターフェイスが主流になったことが大きなインパクトでした。その他ATMマシンの普及、改札の非接触化、音声アシスタントの浸透など、UIに変化をもたらすものが沢山ありました。
現在は高レベルの自動化や集団内の個人認証、AR(拡張現実)機器の普及などがUIの現場を変えつつあり、AIやロボット(の普及)などが待ち受けています。それらが身近で頼もしいものになるよう、UIデザインはまだまだ頑張らなくては、です。

さて、平成最後のダメマシンクリニックはコンビニの新型コーヒーマシンです。

ダメマシンクリニック84【コンビニの新型自動コーヒーマシン】

コンビニのコーヒーマシンは2013年に登場し、その使いにくさからテプラや手書き表示を施されたマシンが多数見られました。当クリニックでは第2回から登場しています。
そのマシンの新型が登場したようです。5年分のフィードバックを活用して、使い慣れた人から初心者まで習熟度の広がった利用者の、誰もが使えるものになっているでしょうか。早速診て参りしょう。

84 コンビニの新型コーヒーマシン 01
操作部分が大きなディスプレイに変わった以外は、外観のイメージは従来のものと変わらないですね。ディスプレイにはゆっくりとしたアニメーションでメニューが表示されています。

84 コンビニの新型コーヒーマシン 02
1:使用法の説明
2:アニメーション表示(メニュー紹介)
ダメ出しはありませんが、使用法の説明表示が最初から用意されています。

84 コンビニの新型コーヒーマシン 03
説明表示には明記されていませんが、購入したカップを置くとマシンが「ホット/アイス」「レギュラー/ラージ」を自動で識別します。
しかしよく見ますと「ブラック専用」(3)とあるではありませんか。
購入したカップがカフェオレの時は識別してくれないのでしょうかね?(試していません)

このマシンの横にはカフェオレが作れるタイプの大型のものがあります。そちらを使えと言う事なのでしょう。
そうしますと、利用者は自分の購入したカップが「ホットかアイスか」「レギュラーかラージか」「ブラックかカフェオレか」を最後まで意識しないといけません。これでは自動化した意味があまりないと言えます。
それは「意思決定の回数が減らない」からです。

どういう事かと申しますと、利用者は購入時に一度意思決定します。支払いが済んでいますので、その意思決定は短時間ではあっても過去のものです。しかし、マシンの前で再度同じ意思決定をし、マシンに正しく伝えなければなりません。(間違えると不利益を被る)これは案外大きな負荷になるなのですね。
自動化の最大のメリットは二回目の意思決定がなくなること(による不利益の軽減)なのですが、今回のブラック専用マシンではそれが必要なままとなっています。

84 コンビニの新型コーヒーマシン 04
購入手順と意思決定と自動化については当クリニックで処方済み(ダメマシンクリニック02【コンビニコーヒーマシン:多重コミュニケーション不全】)ですので、ぜひご参照なさってください。


【診断】

従来マシンの「コミュニケーション不全」は自動化によって軽減されましたが、従来機と併設されマシンを選ぶ必要性が新たに生じましたので「多重コミュニケーション不全」と診断とます。


【処方】

では、処方です。
ここではダメ出しがありませんでしたので応急処置は省きます。
メーカーによる治療では、機器の仕様は現行のまま行える処方をします。
根本治療は前述の方法を強く推奨します。

処方01:治療
ディスプレイの内容を以下の様にするのがよいでしょう。
・「ブラック専用」であることを遠方から視認できるように表示。
待機時(カップをセットしていない状態)は、使用法をアニメーションで説明。
・稼働時(カップを認識した状態)は操作ボタンと誘導アニメーションを表示。
・カフェオレカップを置いた際は、他機への誘導アニメーションを表示。

84 コンビニの新型コーヒーマシン 05

84 コンビニの新型コーヒーマシン 06
画面一杯に「ブラック専用」と表示した方がよい状況も想定できますが、ここでは使用方法と併記しておきます。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.84
対象:コンビニの新型自動コーヒーマシン
設置場所:横浜セブンイレブン
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2019.4.25
症例:多重コミュニケーション不全
ダメ度:×××(マシン単体では処置し切れない)
治療方針:外科「センサー追加/操作系再考/表示系再考」
     内科「システム連携」「表示系再考」



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