ダメマシンクリニック77【エアコンのリモコン:軽度の表示失調】2017年09月11日 18:00

みなさま
こんにちは!

昨日の電車の屋根が焼けたのは、線路脇のビル火災の延焼だそうですね。たまたま緊急停止ボタンが押されたタイミングと電車の位置が悪かったとのこと。。
防災システムは訓練された人々の運用に委ねられている事が多いと思いますが、今後はこのような「半自動」の部分は、センサーとAIを取り入れて高度化していくのでしょう。(すでにその過程にあるかもしれませんね。)

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、横浜のミーティングルームに設置されたエアコンのリモコンです。

 ダメマシンクリニック77【エアコンのリモコン】 

77 エアコンのリモコン01
時々利用するミーティングルームのエアコンのリモコンです。出荷時に貼られたと思われるシールが気になりました。

77 エアコンのリモコン02
あらためて見てみますと、、
1:誘導表示(画面消灯時の操作)
液晶表示が消えた状態(一定の時間が経過すると消えます)から復旧させるために「ホーム」キーを押す必要があるのですね。
「停止」「快適おまかせ」など、物理的なキーがあるものは、液晶が消えていても操作が可能でした。
物理的なキーがない(そのため表示が必要な)設定項目は「温度」「風量」などがありますが、それらを操作したくなった時に表示が消えている場合のための配慮と伺えます。

確認してみましょう。

77 エアコンのリモコン03
これはシールを取り、液晶を消した状態(合成)です。

この状態で「温度の変更」をしたくなったらどこを触りますか?
「風向」を変えるときはどうでしょう?
「お気に入り」「もっと」とはなんでしょう?
・・・
色々疑問を持っていても、どこかのキーを押せば表示が出ますので、結果的になんとなく使えてしまう方が多数と思われます。それでも、戸惑ったまま使えなくなってしまう方がいらっしゃるということですね。

さて、そもそもエアコンのリモコン表示は消えるものなのか、の確認が必要と考えまして、参考までに他社製(2013年)のものを。

77 エアコンのリモコン10
こちらも表示が消えるタイプでした。主要な操作に物理的なキーが設けられていること、キーの名称が一般的な名詞の組み合わせであることなどが今回のリモコンとの違いです。

その他にもいくつかサンプルをチェックしました。おおまかな傾向としては「昔は常時表示されていたが、最近のものは一定時間経過後に非表示」のようです。省エネを謳う流れの中で、リモコンにも省エネを求めたのかもしれません。

買い替えなどで、古いタイプ(常時表示)を使っていた方がこの表示が消えたリモコンを手にしたら、ちょっとびっくりするでしょうね。「電池が切れたかな?」と思っても不思議はありません。さらに、温度設定を細かく気になさる方はいちいち表示させるのは煩わしく思うでしょう。


【診断】

新たに使う方に対して必要な、操作に対する情報が不足しています。ただし暫く使うことで慣れると考えられるので「軽度の表示失調」と診断します。


【処方】

では処方です。
このダメ出しは注意喚起としては充分であり、シールなので剥がせることも好ましく思います。したがいまして、応急処置は現状でよいと考えます。

そこで、少ない手数で効果を期待できる治療を検討します。
一つは表示のみの変更で表示失調を軽減する処方、もうひとつは採用しているデバイスの変更による根本治療です。


処方01:メーカーによる治療(表示のみ)
液晶画面が消えている状態のときに、ボタンを押せば表示が出ることを明記します。
・「ホーム」を「メニュー表示」に変更する。

77 エアコンのリモコン04

77 エアコンのリモコン05
押すと画面が表示されることを明確にするため「○○表示」とします。
また「ホーム」は「メニュー」と置き換えました。「ホーム画面表示」の方が正確だとは思いますが、「メニュー表示」でも意味が通じてシンプルで良いと判断しました。
液晶画面が消えた状態でも発見しやすい「操作部の左上」にありますので、丁寧に文字を追って頂ければ通じる可能性が高いと考えます。

それでも、ぱっと全体を見た時の印象を大きくかえるものではありません。何より「電池が切れている感じ」は残ります。そこで、表示部分を治療する方法を処方します。


処方02:メーカーによる治療(表示デバイスの変更)
省エネ性能を犠牲にせず、常に表示を出すために以下の様にします。
・表示デバイスを液晶から電子ペーパーに変更。
・非操作時も表示は残す。(直前のメニュー項目を表示したままにする。)
・電池が切れた時は、その状態を表示して交換を促す。

77 エアコンのリモコン06

77 エアコンのリモコン07
電子ペーパーは待機電力を使いませんので、安心して常時表示することができます。

逆に、通電がなくても表示が消えませんので、電池が切れた状態を表現しなければなりません。ただ画面表示を消すだけだと、非操作時に表示が消えるタイプのリモコンにも見えます。そこで以下の様な画面を用意し、電池の寿命が尽きる直前に表示させ、積極的に電池交換を促すのが良いでしょう。

77 エアコンのリモコン08

77 エアコンのリモコン09

デバイスの変更にともなう開発コストがかかると思いますが、電子ペーパーの特徴である省エネ性と高コントラストによる見やすさは、リモコンにとても向いていると考えます。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.77
対象:エアコンのリモコン
設置場所:横浜 ミーティングルーム
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.9.11
症例:軽度の表示失調
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:表示変更
治療:移植(外科)



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個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。

ダメマシンクリニック76【カフェのトイレのリモコン:誤選および表示失調】2017年08月28日 18:11

みなさま
こんばんは!

「しっかり充電します」との宣言通り、仙台、軽井沢、都内各地に参じて、自然や人々の活力を沢山浴びて参りました。デザインの仕事もしっかりさせて頂いたので、とても長い夏に感じましたです。もう気分はすっかり秋です(笑)

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、軽井沢のカフェで入ったトイレのリモコンです。

ダメマシンクリニック76【カフェのトイレのリモコン】

76 カフェのトイレのリモコン01
旧軽井沢のとてもオシャレな一軒家のカフェで、設えの全てに目が行き届き、トイレ内にもアートがちりばめられていました。しかし、リモコンには唯一のダメ出しが。

76 カフェのトイレのリモコン02
詳しく診るまでもありませんけれど、、
1:表示(上面の便器洗浄ボタン)
正面から見えない上面の便器洗浄ボタンの位置を示しています。
なお、リモコンの下部に「オート洗浄」とありますが、このトイレはオートではありませんでした。(表示もオフになっています。)

この「洗浄ボタンが上面」タイプのリモコンはあちらこちらでダメだしされているのを見かけます。そのほとんどが、家庭用と思われるこのタイプのリモコンを店舗に設置していることが原因です。家庭内では「慣れ」が期待できますが、不特定多数が使う場合は初めてでもすぐ使えるよう、ぱっと見た判りやすさが重要なのですね。

このタイプのリモコンは、これまでも取り上げていますので、ご興味のある方は以下もご参照くださいませ。
 ダメマシンクリニック03【カフェのトイレ:優先順位障害】
 
ダメマシンクリニック04【カフェのトイレ:高機能化症候群および自社中毒の疑い】
 
ダメマシンクリニック64【そば屋のトイレのリモコン:誤選および表示失調】


【診断】

公共の使用に適した設備が必要があったとして「誤選」と診断します。
また、誤選により設置されたリモコンの「表示失調」を併記します。


【処方】

では処方です。
こちらのダメ出しは最小限で、味のある手描きのデザインからは店主の工夫と愛着を感じます。機能的にもしっかりと目に留まりますので、このままでよいでしょう。
また、施設の見直し時には適切なリモコンの置き換えを検討してもよいでしょう。



さて、ここからは余談です。
上に「適切なリモコン」と書きましたが、そもそもメーカーに店舗用のリモコンは用意されているのでしょうか?「公共用」とうたいますと、以下の様なものを想像します。

76 カフェのトイレのリモコン03
参考:駅構内の多目的トイレ

これはちょっと物々しいと言いますか、個人店にはそぐわない印象ですね。

日本の大手2社のウェブカタログ(TOTOLIXILを見たところ、一般家庭や店舗で使うことを想定したいわゆるユニバーサルデザインのものもありました。
なんと、JIS規格もあるとのことなので確認してみましょう。

JIS S 0026(一部)
この規格は「洗浄ボタン」「非常呼び出しボタン」の位置が主眼でした。これは国際規格にも採用されたそうです。(参考:メーカーの解説サイト

ペーパーホルダーの上に、大きく洗浄ボタンがあるのが好ましいとの結論。ありふれた解答ではありますが、開かれた場所では必要な見識なのでしょう。
そして、カタログにあるユニバーサルデザインのリモコンが、このカフェに似あうかどうかは店主の判断にお任せするとしまして、カフェのような「開かれたプライベート」を意識したデザインはもっとあってもいいと思います。ご参考までに。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.76
対象:カフェのトイレのリモコン
設置場所:軽井沢のカフェ
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.8.28
症例:誤選および表示失調
ダメ度:×(治療が望ましい)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「再配置」


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ダメマシンクリニック75【コンビニの新コーヒーマシン:多重コミュニケーション不全】2017年07月14日 10:00

みなさま
おはようございます!

みなさまこの夏はどちらかへ行かれますか?
私は知人からモンゴル旅行に行ってきたお話を伺いまして、旅情が募っております。。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、厚木のコンビニで見かけた新型のコーヒーマシンです。

ダメマシンクリニック75【コンビニの新コーヒーマシン】

75 コンビニの新コーヒーマシン 01
新商品のカフェラテ(正しくは製造方法の違う商品からの切り替え)の登場にともなって新設されたマシンですね。
旧型は以前から各地で多くのダメ出しを受けてきたマシンです。注目を浴び、大量の指摘を受けてきたからには、、と思いましたが、登場早々にダメ出しされていますね。

75 コンビニの新コーヒーマシン 02
詳しく診ていきましょう。
1:注意書(ボタンの押し間違いによる返金交換は出来ないこと)
2:誘導(カフェラテは左側へ)
3:表示(カフェラテ)
4:注意喚起(カップの置き間違い)
5:表示(コーヒー)
新型マシンは、カフェラテ用の抽出システムとコーヒー用のシステムを並べた構造になっています。従来のデザインを横に並べ、文字とボタンの色の差で誘導するようになっています。従来のマシンは設置から年月が経ち、利用者が学習したことによってダメ出しのないマシンも見かけるようになっていました。しかし、もともと誤操作を誘発しやすいデザインでしたから、並べた事によって複雑さ、間違えやすさが再び表面化したといえるでしょう。うーん、、残念。

ここでコンビニコーヒーを利用されない方に簡単なご説明を。
まず、レジで飲みたいもの(コーヒー・アイスコーヒー・カフェラテ・アイスラテ)のカップを購入ます。
次に、自分でマシンにカップをセットし、購入した飲み物のボタンを押します。
飲み物の抽出が終わったらカップをとり出し、砂糖やミルクなどお好みのものを入れて出来上がり、です。

ここで問題なのは、利用者が「購入」と「マシン操作」の二度にわたり、意思決定と伝達を行わなければならない、という煩わしさです。「ものを買う」という流れ(行為)の中で、精算した後にもう一度商品を指定する、というのは心理的な二度手間となります。極端な言い方をしますと「お金を払い終わっているのに正しい商品が受け取れる保証がない状態」なのです。大分見慣れましたけれど、他にはあまりないシステムなのですね。(似たような「食券」の方式では、通常は購入した食品が出てきます。また、悪知恵が働く人はここを悪用している事でしょう。)

無自覚でも心理的ストレスがかかっていると誤操作しやすいものです。その上、小さな文字をしっかりと読む必要がある、、。ケアレスミスが起きやすいのは当然と言えるでしょう。

この点の詳細につきまして、従来マシンの処方をご参照くださいませ。(ダメマシンクリニック02【コンビニコーヒーマシン:多重コミュニケーション不全】



【診断】

従来マシンの「コミュニケーション不全」が治癒されないまま、新たな操作系が加わった事により混乱を招いていますので「多重コミュニケーション不全」と診断とます。


【処方】

では、処方です。
応急処置では「2つのマシンが並んでいること」「カフェラテは新しいマシンで出す必要がある事」を強調します。
メーカーによる治療では、意思決定を購入時の一回で済ます方法を処方します。

処方01:応急処置
応急処置では、以下の様にするのがよいでしょう。
・左右がそれぞれ独立したシステムであることを明確にする。(ラインをいれる。)
・イラストを用いた大きな誘導表示をする。
・誘導は利用者との接点である「カップ」「ボタン」のそれぞれの近いところで行う。
75 コンビニの新コーヒーマシン 03

75 コンビニの新コーヒーマシン 04
人は「文字」より「絵」を先に見るようにできています。そして、文字は「読む」行為が必要ですが、絵には要りません。ですので、対象が具体的なものであればイラストやピクトグラムがあれば「一目瞭然」となるのですね。
ここに使ったイラストは、みんな大好き「いらすとや」さんのものです。フリー素材なら絵が苦手という方にも積極的に使っていけるでしょう。

この処方は、、
従来マシンは利用できる利用者さんが対象で、
カフェラテかコーヒーかを明確に分けることが主目的、です。
従来マシン、といいますか、従来のシステムの治療はされていません。
従来マシンの治療と処方は、基本的に以前診た時と変わりませんので、その時のものを再掲する事といたします。

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以下2015.11.20付

【オペレーション全体から操作系をデザイン】

そこで、以下の様なオペレーションを考えて見ます。
・意思決定は一度で済ます。(購入の際の一度)
・操作は単純化する。

75 コンビニの新コーヒーマシン 05
マシンはボタン一つです。
自動で購入したメニューがドリップされます。

75 コンビニの新コーヒーマシン 06
ホットの小が作られているところです。

75 コンビニの新コーヒーマシン 07
上部の液晶(現在ほとんど認識されている様子が伺えていませんが、せっかくなので活用します)に「購入したメニュー」を表示させます。
ボタンは「操作を受け付けたこと」と「正しく動作していること」を示すために、メニューに合わせた色のイルミネーションを付けます。

このオペレーションでは「購入商品が何かをマシンに伝える仕組み」が必用です。
例えば、、
・購入したカップにタグがあり、それをマシンがセンシングしてメニューを判断。
・さらに、レジから「購入済」と「メニュー」の情報が連動する。

このオペレーションでは、意思決定は一度(商品を選びや金を支払うまで)であり、あとは唯一の操作を実行(カップをセットしてドリップボタンを押す)すればよい、となります。

また、このシステムでは以下の効果も期待出来ます。
・故意の誤操作(Rを購入してLを押すなど)や未購入での操作を防ぐ。
・メニューが増えてもシステムのソフトウエアだけで対応が可能。

なお、既存のシステムが、、
・専用マシンであること。
・蓋と連動したセンサーが働いていること。
・レジを含めて比較的早い周期で装置が刷新されること。
などから、この案は十分に実現可能なのでは、、と考えます。

(引用終わり)
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上記内の「購入商品が何かをマシンに伝える仕組み」は、最近のレジなら「レシートにコードをプリント」でもよさそうですね。システムの更新頻度も高く店舗数が多いことを考えれば十分現実的だと考えます。

念のため店舗数を見ておきましょう。
セブンイレブンの店舗数 2017年6月末
国内で2万弱、海外店舗をいれると6万強。
コーヒーマシンだけでなく、様々なローカルカルチャーに合わせて、農産物の供給と消費をシステムにするくらいのインパクトが出せる規模感でした。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.75
対象:コンビニの新コーヒーマシン
設置場所:厚木セブンイレブン
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.7.14
症例:多重コミュニケーション不全
ダメ度:××××(マシン単体では処置し切れない)
応急処置:表示追加修正
治療方針:外科「センサー追加/操作系再考/表示系再考」
     内科「システム連携」
     皮膚科「表示計画再考」


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ダメマシンクリニック74【イコカのチャージマシン:表示失調および軽度の誤形】2017年06月25日 15:00

みなさま
こんばんは!

金曜日に更新の予定でしたが所用があって今日になってしまいました。楽しみにして下さっていた方にお詫び申し上げます。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、大阪のJRの駅で見かけたイコカのチャージマシンです

ダメマシンクリニック74【イコカのチャージマシン】

74 イコカのチャージマシン01
JR京橋駅の改札前に設置してあるイコカのチャージマシン、以前から気になっておりました。いつも足早に通り過ぎてしまうのですが、今回初めて立ち止まって拝見しました。

74 イコカのチャージマシン02
1:表示(使用可能カード)
2:誘導(カード)
3:表示(カード挿入口)
4:注意書(つり札)
5:注意書(紙幣の入れ方)
6:注意書(旧札の使用不可)
1の表示は、下のLEDに干渉していることから後から追加されたものと推察します。
他はカードの扱い方(2〜3)と紙幣に関する注意書(4〜6)に2分されますね。

このチャージマシンは経年を感じさせる外装、押しボタン式のインターフェイス、「旧札」の表示から、イコカの導入と同時期または数年以内に設置されたものと推察します。イコカは2003年、新札は2004年とのことですので、2004〜5年頃のものでしょうかね。
そして、この頃の機器やサービスを思い起こせば、ダメ出しの背景が見えてきます。一つづつ見て行きましょう。

まず自動販売機とATMです

当時、高額紙幣が扱える自動販売機では珍しかったはずです。紙幣が使えても千円札のみで、硬貨しか使えない自販機もまだまだ現役でした。
銀行のATMでは高額紙幣が扱えましたが、札束を一度に扱える(紙幣投入口が大きく開く)タイプが、店舗内の少し狭まった場所に設置されているのが普通でした。
また、コンビニATMも普及していましたが、設置場所には今見かけるものよりも慎重な設置基準でしたよね。(一番奥にあったり、壁が設けてあったり、など。)

つまり、この頃(2004〜5年頃)は、このチャージマシンのようなオープンな環境で高額紙幣を扱う自動機器を扱うことは希でした。
例えば一万円札しか持っていない利用者が「2,000円だけチャージしたい」という時、「このマシンはおつりを出すことが出来るのか?」と疑問に思っても不思議ではなかったのですね。
そして、複数の紙幣を挿入するという行為も他にはありませんでした。
したがって、紙幣に関する注意書は、設置当時においてはとても有用だったと推察できます。

次に「カード」の扱い方です。

非接触カードの普及期ではありますが、プロトタイプの実験も良好で「タッチ」という動作イメージは充分に周知されていました。しかし、交通系の電子マネーは「おサイフケータイ」とともに2004年頃からありましたが、それを利用できるのは一部の売店やコンビニに限られていました。(ちなみに、バスには2007年頃から普及していきます。このころから、「電車に乗る」以外の利用が普及していったようです。)
したがって、この頃の「タッチ」は「改札を通る時」の特別な行為で、カードの「非接触性」が充分理解されているとは言えませんでした。

ここで、このマシンを見てみますと、カードは「立て掛ける」ようになっています。突出させた円形の台に赤い矢印で誘導しているデザインからは、非接触の特徴を示す新しい体験を提供する」という意気込みが感じられます。
しかし、「立て掛ける」という行為は他に例がなく、どのように振る舞うべきか、迷う利用者さんは少なくなかったことでしょう。「挿入口」という表示からは、「立て掛ける」より「入れる」方が、「カードにふさわしい行為」という認識があったことが伺えます。


【診断】

高額紙幣とつり札の扱いおよび非接触カードの扱いにおいて、利用者の認識とのズレがあったことが根本原因です。症状としては、紙幣に関しては「表示失調」と診断します。

カードについては、誘導したい行為(センサーの近くにカードを静止させる)と形状のシグニフィア(行為を誘発する形状のこと。アフォーダンスとも。)にややズレがありましたので「軽度の誤形」と診断します。


【処方】

では、処方です。
一般に、誤形に伴うシグニフィアの間違いは、表示で解決することが殆ど出来ません。それは、「人は形態や状態の情報を優先する」からです。ですので根本的にはカードを置かせる形を直す必要があるでしょう。

しかし、経年による「利用者の認識の変化」を考慮しますと、「利用者がここにカードを置く」ことはある程度一般化されたと考えてもよいでしょう。(これはこのマシンのダメ出しによる周知ではなく、非接触カードを利用する場面が多様化したためです。)

従いまして、応急処置は現状の追加表示のままとします。
今回は、「新しい方法(ここではカードの置かせ方)が受け入れられるようにするにはどうしたらよいか」という重要なポイントがありますので、当時の環境にさかのぼって可能であった治療を処方したいと思います。

処方01:応急処置
現状の追加表示のまま。
ただし設備刷新時に同等のマシンが設置された場合は、表示は最小限にとどめる。


処方02:メーカーによる治療(センサー部のみ)
当時(2004〜5年頃)の環境を考慮して、以下の様にします。
・センサーは水平にして、物を置かせる形(受け皿)とする。
正面からみえる位置に誘導を表示する。
・「ここに置く」と文字で明快に行為を指示する。

74 イコカのチャージマシン03

74 イコカのチャージマシン04
この形は「置くこと」が明快です。誘導する行為が明確であれば、そこに戸惑いは生まれにくいものです。
ただし、「台に置くことが自然」だったとは言えません。この行為もまた「他に例のない行為」でした。「立て掛ける」も「置く」も、どちらも不自然ではありました。
しかし、普及に伴って自然になっていくのはどちらか、という観点で見れば「置く」方が優位であることは、当時関わった方なら言えるのではないでしょうか。

なお、既に普及していた「おサイフケータイ」を考慮して図に加えていますが、設置のタイミングによっては不可だったかもしれません。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
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No.74
対象:イコカのチャージマシン
設置場所:JR京橋駅 改札外
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.6.25
症例:表示失調および軽度の誤形
ダメ度:×(応急処置可)
応急処置:追加表示
治療:整形(外科)



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ダメマシンクリニック72【トイレのサイン:誤選による表示失調】2017年06月09日 19:30

みなさま
こんばんは!

横浜は梅雨のはしりの湿気た風が、港の方から気持ちよく吹いております。ちょっと汐の匂いがまざって、地元なのに旅情を誘うのですよね。

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、レストランで入ったトイレのサインです

ダメマシンクリニック72【トイレのサイン】

73 トイレのサイン01
トイレのサインほど、広く普及して認知されているものはないと思うのですが、それでもダメだしされてしまうことがアルのですね。診て行きましょう。

73 トイレのサイン02
1:追加のサイン(トイレマーク)
既存のもののすぐ上に、別デザインのものが表示されています。
既存のものは凝ったデザインではありますが、判らないと言う程でもないような気もします。どういうことでしょうか・・。

73 トイレのサイン03
トイレの位置関係を確認しますと、細長い廊下の突き当たりが女子トイレ、途中の左側が男子トイレとなっています。廊下の入り口からですと、女子トイレは遠く、男子トイレは角度がきつく、どちらも見やすいとはいえない状況です。また両方のサインを見比べるのは難しいでしょう。この状況では、色や明快な形のないサインでは、識別性がぐっと落ちてしまいます。女子トイレの写真がなくてすみません、自粛しました。)
もう少し詳しくお話しますと、男女のサインが並んでいたら、デザインの差が見えやすくなります。もともとのデザインでも、並んでいたら見分けがつくと感じました。
しかしここでは、どちらか1ヶ所を遠目から見て、ぱっと「男子(女子)トイレだ」とわかる必要があります。見比べなくても識別できるようにするには、広く認知されている「色(赤系と青系)」「形(単純化された人型)」が必要なのですね。


【診断】

設置環境にあわないデザインが選定されたことによりサインの機能が充分に発揮されていませんので「誤選による表示失調」と診断します。


【処方】

では、処方です。
応急処置でかまいませんので、サインを貼り替えましょう。

処方01:応急処置
応急処置(表示貼り替え)は現状のもので機能していますが、以下の様にすると良いでしょう。
・遠目から見える色と形のサインを選定し、既存のものと差し替える。

73 トイレのサイン04

73 トイレのサイン05
もともとのデザインは、レストランの雰囲気を演出する意図があったと推察します。ですので、少しでも雰囲気を壊す要素は除きたいところです。
従いまして、貼り替える方がスッキリと収まって良いでしょう。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.73
対象:レストランのトイレのサイン
設置場所:横浜市
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.6.9
症例:誤選による表示失調
ダメ度:×(応急処置で対応可能)
応急処置:表示貼り替え


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・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
・テプラなどの対処部分の写真と説明 

※プロの方へ 
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。) 
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dmc.
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