ダメマシンクリニック08【ホームへ降りるエレベーター:エクスキューズ過敏症および表示転移】2015年12月25日 07:07

ダメマシンクリニック、次の症例はこちらです。
品川駅のコンコースからホームへ降りるエレベーターの乗り口です。


ダメマシン08【ホームへ降りるエレベーター

08 ホームへ降りるエレベーター 01
沢山の注意書が貼られていますね。このエレベーターを利用するには何か特別な注意が必要なのでしょうか

08 ホームへ降りるエレベーター 02

08 ホームへ降りるエレベーター 03
詳しく見て見ましょう。
1:警告(防犯カメラ作動中)
2:ホームでの注意(Suica券売機について)
3:エレベーター利用者へ(優先利用のお願い)
4:ホームでの注意(ホームの傾斜について)
5:車椅子用ボタンの表示
6:呼出ボタンの表示

掲示物の詳細を見て行きますと、、
a:犯罪を犯してはならないという警告(上記1)
b:ホームで気をつける事が多数あるという注意(同2・4)
c:優先利用の設定があるという告知(同3・5)
に整理出来そうです。

さらに、重要度を想定して整理してみますと、、

a(1/警告):既に周知されていると捉えれば優先度は低いと考えられます。

b(2・4/注意):エレベーターを降りた先での注意を促しているのは親切ですね。特に4の「ベビーカー利用者への注意喚起」は、わずかな待ち時間の有効利用という意味ではなるほどと感じます。ただし、この場での優先順位はそれ程高くないと言えるかもしれません。

c(3・5/告知):当事者(優先利用者)に確実に伝えられるべき情報と考えられます。

従いまして優先順位は、、

c>>>b>a

となるでしょう。a、bは「近くに来た利用者の空き時間を有効利用する」に対して、cは当事者(優先利用者)が遠方から確認できなくてはならない情報ですから、このような優先順位がつけられると考えます。

そして、この観点から見かえしてみますと、現状は伝えるべき情報の優先順位を失っていると言えます。恐らく、ホームでの注意を徹底すべきという意図が強く作用したと推察されます。
また「情報提示をしないという選択肢」が失われている状況も考えられます。


【診断】

注意情報への過剰な意識による「エクスキューズ過敏症」と、その場との関係の薄い情報でも表示をしてしまうことから「表示転移」と診断します。
この症状には、「しばらく利用者がとどまる空間」「表示しやすい場所」があれば、何かしらの表示をしてしまう、という特徴的な傾向があります。


【処方】

では、処方です。
優先順位に従った表示を計画します。

処方01:
応急処置
応急処置(表示整理)では、以下の様にするのがよいでしょう。
優先利用を大きく表示する。
・他の注意書きは適宜省略または移設する。

08 ホームへ降りるエレベーター 04

08 ホームへ降りるエレベーター 05
エレベーターに直接関係のない情報を想い切って消してしまいましょう。
その上で「優先利用」のみ遠方から確認できる様に大きく追加表示します。
「呼出ボタン」は機能上必用だと思いますのでこのままにします。
こうすることで、エレベーター利用者にエレベーター利用に関する適切な情報が伝えられると期待出来ます。
注意書きがどうしても削除出来ない場合は、エレベーター内部に掲示するのがよいでしょう。


ところで、この場所(エレベーター出入り口付近)を掲示板にされているのを拝見しますと、エレベーターを待つ僅かな時間にでも見て欲しいという強い思いが伝わって来ます。そしてそこで伝えたい内容は(当然のことですがエレベーターの予備知識などではなく)、駅を利用するために知っておいて欲しいことです。
このことから、エレベーター利用者が困っているのではなく施設管理者(鉄道会社)が困っていると拝されます。つまり、ダメ出しされているのはエレベーターではなく、駅の告知機能だと言えるでしょう。

では、駅の告知機能が改善されれば良いのか、それとも告知機能単体ではなく、何か根本的な問題があるのか、、もう少し他を見て推察したいと思います。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.08
対象:ホームへ降りるエレベーター
設置場所:JR品川駅
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2015.12.22
症例:エクスキューズ過敏症および表示転移
ダメ度:×(適切な処置で改善する)
応急処置:表示修正
治療方針:皮膚科「表示計画再考」
     根本治療は精密検査による治療計画が必用



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