ダメマシンクリニック57【ビル地下の駐車場精算機:配置失調】2017年01月06日 20:00

みなさま
新年明けましておめでとうございます!
皆さまにとりまして本年が素晴らしい年となりますようお祈り申し上げます。

みなさまはどんなお正月でしたでしょうか?私はできる範囲でお節を作り、完璧ではなくてもいつもより丁寧に掃除をして、家族そろってゆっくりした年末年始でした。今年も思い出に残るよい年になりそうです。

さて、新年第一回目のダメマシンクリニックはこちらです。横浜はみなとみらい、ランドマークタワーの地下駐車場に設置された精算です。こちらは複数の方からご指摘頂いておりまして、「ああ、あれね」とお心当たりのある方もいらっしゃることでしょう。

ダメマシンクリニック57【ビル地下の駐車場精算機】

57 ビル地下の駐車場精算機 01
出口ではなく、施設との接続口に設置してある事前精算機ですが、雑然とダメ出しがされていますね。

57 ビル地下の駐車場精算機 02
詳しく見て見ましょう。
1:案内(自動ゲート)
2〜3:注意書(上限料金)
4:表示(係員呼出)
5:注意書(パスモ)
6:注意書(サービス券)
7:注意書(領収書)
8:注意書(パスモ)
9:注意書(サービス券)
多数のダメ出しが、重層的に追加されていますね。以下はダメ出しではありませんが、、
10:案内(自動ゲート)
注意書(利用案内)
これらもあわせて整理していきましょう。

57 ビル地下の駐車場精算機 03
一度、ダメ出しを取ってみました。いかがでしょう、どの様にお感じになりますか?

57 ビル地下の駐車場精算機 04
多くの方は配置がバラバラで、使いやすいとは感じないのでしょうか。
散在した配置は、それだけで見にくくなってしまいますね。一つ一つが整っていないことで、操作手順(駐車券挿入→支払い→受け取り)との関連性を感じさせません。これは「ひとつひとつの操作の度に、次はどこを触るべきかを探す」ということを強要し、かつ必要な情報へのアクセスを難しくさせています。
また、確認すべき案内が操作手順の中に混在しているため、多数の見落としを誘発していることでしょう。
この散漫な配置が混沌の原因であることは間違いなさそうです。(同様の例を昨年ご紹介しておりますのでそちらもあわせてご覧ください。)

しかし、あの多層的で強い口調を感じさせる注意書は、それ以上に「この駐車場の運用の複雑さ」を表しています。書き出してみますと、、
・事前精算ではゲートが自動で開く。
・20分を過ぎると追加料金が発生する。ゲートも自動では開かない。
・割引サービスは所定のサービス券のみで、他の割引はできない。
・サービス券投入後の取消しはできない。
・上限料金が適応される範囲は平日の指定時間のみで、それ以外は正規料金となる。
・パスモと現金は併用できない。残高不足でも利用できない。
・駐車券は領収書を兼ねる。

・・ふう、、利用者と最も深く関わる接点は「精算」ですから、そのタイミングでこの複雑で重要な情報を伝達したくなるのは自然なことと思えますね。

もともとの配置が散漫であるため、要望がある毎に、開いた空間を埋めるようにダメだしされていったのでしょう。悲劇というより喜劇ですが、笑える話ではありませんね。。


【診断】

案内を含めた表示類と、駐車券挿入口やコイン投入口などの各モジュールの配置が操作を考慮したものになっていないことから「配置失調」と診断します。


【処方】

では、処方です。先に紹介した以前の症例と同じ方針がよいでしょう。
応急処置では混乱を招く要素を整理します。
治療では、運用上の告知とマシンの操作とを分け、操作手順に沿って配置を整えます。

処方01:応急処置
応急処置(追加表示)は以下の様にするのがよいでしょう。
・注意書を一つにまとめる。
・誘導(事前精算のすすめ)は遠くからでも見やすい位置とサイズで表示する。
・重複する表示を消す。

57 ビル地下の駐車場精算機 05

57 ビル地下の駐車場精算機 06
多数の注意書は一ヶ所にまとめる方が圧倒的に探しやすいのです。「関連事項の近くに置く」という方法がここでは混乱を招くため、(親切心からであっても)重複するようなことのないように気をつけましょう、
また、事前精算機を利用するメリットを伝える案内は、この精算機で精算するかどうか決めていない利用者にも見やすいよう、精算機から離れていても見やすい位置に大きく表示するのがよいでしょう。

マシンは「精算」のみの単一目的のものですから、本来はそれほど難しくないはずです。ですので操、混乱を招いている「運用に関する情報」を操作から切り離すのが良いのですね。


処方02:治療
配置失調はメーカーで治療しないとなりません。以下の様にされるとよいでしょう。
・運用に関する情報をマシンの外へだす。
・操作の流れにそって配置を整える。
・段差をまとめる。

57 ビル地下の駐車場精算機 07

57 ビル地下の駐車場精算機 08
精算機の横に「案内板」を設置し、運用に関わる細々とした情報をまとめて、図解などを用いて判りやすく表示するのがよいでしょう。インターフォンも案内板近くに設置します。
精算に関して疑問を持った利用者はじっくりと確認して頂き、精算機は利用者の一人当たりの時間の短縮の短縮が期待できます。

精算機の各モジュールは操作の流れに沿って配置を整え、全体を見やすく理解を容易にします。なお、注意喚起の黄色は、最初に必要な「駐車券挿入口」のみに用います。

また、「コインのモジュール」を収めるための段差はひとまとめにした方がすっきりするでしょう。(紙幣挿入口のシャッターがこの段差にかかる場合は、前面パネル全体を下に延ばすとよいでしょう。)

ダメだしされている本機(とその仲間たち)は各地で見かけます。色々な運用に堪えるシステムだからこその事象と推察いたしますが、だからこそ、UIへの配慮が必要だと言えるでしょう。


ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.57
対象:ビル地下の駐車場精算機
設置場所:横浜みなとみらいランドマークタワーの駐車場
報告者:ディーエムシー、M.K.他
報告日:2017.1.6
症例:表示失調
ダメ度:×××(治療が望ましい)
応急処置:表示修正
治療方針:外科「再配置」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ダメマシン」でお困りの方へ 
https://www.facebook.com/damemachine 
上のフェイスブックページに以下の内容を投稿して下さい。投稿順に診断、処方箋をお応えいたします。現場でお困りの方は無料で何度でもお応えします。どしどしご連絡下さい! 
・明瞭な写真または動画(複数歓迎) 
・設置場所とマシンの目的 
・困っていること・症状(出来るだけ具体的に) 
・テプラなどの対処部分の写真と説明 

※プロの方へ 
このページの内容を参考にして設計されることは大歓迎です。引用も問題ありません。(ただし、法的な責任は負いません。また、できれば一言「参考にしました」と言って貰えると嬉しいです。) 
個別にデザインを相談したい場合はご連絡下さい。最優先で対処させて頂きます。
dmc.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.