ダメマシンクリニック36【オートマ車のシフトノブ:適応症なし(ただし要経過観察)】 ― 2016年07月08日 16:30
こんにちは!
今日も暑い横浜ですが、私は早々にエアコンをかけ、特別にブレンドして貰った特性のアロマフレッシュナーで爽やかに過ごしております。
ちょっと前までは「エアコンは嫌い」と公言しておりましたのに、このごろの気象には勝てません。梅雨はどこへやら。。
さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、今年の初めころ誤発進による事故が散見され「シフトのデザインか悪いのでは?」と言われたプリウスのシフトノブです。
ダメマシンクリニック36【オートマ車のシフトノブ】
今年(2016年)の初めころ、ネット上に以下のまとめができました。
当クリニックにも報告があり、他のSNSでも言及されたりしていました。まとめから半年あまりの時間が経ちましたので、今回改めてこの例を見直してみようと思います。
確認していきましょう。
プリウスのシフトノブ。(トヨタのウェブサイトより)
写真だと比較しづらいので図にしました。
上のまとめで指摘されていたのはおおむね以下の様な内容ですね。
・プリウスのシフトノブは「右下がD(ドライブ・前進)」
・既存のマニュアルシフトでは「右下がR(リバース・後退)」
・マニュアル操作が身に付いた高齢者にとっては紛らわしい
・ただし6速シフトだと「左上がR」
「おおなるほど!」と思われた方は多いのではないでしょうか。私ももっともだと思いましたが、「いや、それだけではないのでは?」とも感じました。
どういうことでしょうか?
一般的なAT車のシフトノブと比較した図です。
車種により「D」が多段になっているものもありますが、おおむね上から
P(パーキング)
↓
R(リバース)
↓
N(ニュートラル)
↓
D(ドライブ)
という並びになっています。
この比較からは、AT車に慣れ親しんだ人にとっては「下が前進・上が後退」の方が自然のように感じられます。
では、実際のユーザーさんの状況を確認してみましょう。
いずれも国内の数字です。普通免許取得者の59.2%がAT限定(H27)、新車販売台数の98.5%がAT車(H23)でした。AT車の比率は1990年代には80%を超えていましたので、現在走行している大多数の普通自動車はAT車であり、ほとんどの現役ドライバーはAT車を運転していると捉えて良さそうです。
(なお、欧州ではAT車の普及率が低く、最も高いドイツでも23%程度だそうです。そのドイツ車のATシフトも一般的な「PRND」の配置となっています。)
メーカーにはもっと詳細なデータがあるはずですから、それらに照らし合わせても順当な判断だと言えるかもしれません。
しかし、それでも「右下が前進」に対して違和感を抱いてしまうユーザーさんはいらっしゃることでしょうね。
UIにはこんな傾向があります。
大人になって新しく習得した作法(操作方法やマインドセットなど)は忘れやすく、加齢や認知症により「昔のやり方」しかわからなくなる、、というものです。それらしく言えば「加齢によるUIの適応性後退」とでも言えるでしょうか。
今はATシフトに慣れているユーザーさんの中にも、年齢とともに「昔のやり方=MT」が顔を出してしまう可能性が上がっていくことは間違いないでしょう。
【診断】
現在はシフトデザインが原因とされる事故の例は見当たりませんでした。「適応症なし」と診断します。
ただし、違和感を抱くユーザーがいることは事実であり、ご高齢のユーザーさんが増えていく国内ではそのようなユーザーが増加すると予測します。
従いまして、このシフト配置がどの程度受け入れられているかに注目しておく方が良いと考え、「要経過観察」と併記します。
【処方】
では、処方です。
もし経過監察の結果をうけて「変更すべき」となった場合には、その時代の技術とインターフェイスの状況を鑑みて再検討する必要があります。
その時のために、「もし今再検討するならどの様な案があるか」という一例を挙げておきます。
・MTへの慣れによる誤操作を回避するため、「右下」「左上」にRを配置しない。
・ATユーザーが自然に受け入れられるように「Rは上・Dは下」とする。
プリウスの配置にならいPを別ボタンにした案です。ニュートラルを起点とした「右下」「左上」をなくし、「Rは上・Dは下」、エンジンブレーキのBは左下に配置しています。
このレイアウトがどの程度の実効性があるかどうか、、試す機会がない、つまり事故がなければそれが一番ですね。
それから、お年を召した方への配慮は、これからはもう少し敏感になった方がよいかもしれませんね。
ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!
No.: 36
対象:オートマ車のシフトノブ
設置場所:プリウス
報告者:ディーエムシー
報告日:2016.7.8
症例:適応症なし ただし要経過観察
ダメ度:-
応急処置:-
治療方針:-
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