物語を超える・交差する2024年02月05日 18:57

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

先週までは「意味の世界」と「物語」についてお話しました。デザインにおいて物語が大切と言われ続けている事を追認したお話でした。
蛇足ついでに^^; デザインの行為としてみた場合の、大きな物語と小さな物語それぞれの価値を列挙します。

大きな物語:社会的共鳴・ブランドと文化を形成する
[デザインの役割]
デザインは、企業やブランドの大きな物語を視覚的に伝える手段です。たとえば、企業ロゴや製品デザインはその企業の価値観や歴史を象徴し、消費者に認識されます。
[文化的意味]
デザインはまた、文化や社会のトレンドを反映し、それを形成する力も持っています。例えば、環境に優しいデザインは、持続可能性への社会的関心を反映しています。
[ブランドストーリーの伝達]
効果的なデザインは、企業のミッションやビジョンを明確に伝え、消費者との共鳴を生み出すことができます。

小さな物語:個々の物語・経験を映す
[デザインのパーソナライゼーション]
デザインは個人の好み、ニーズ、身分を反映します。カスタマイズ可能な製品や、個人のアイデンティティを強調するデザインがそれに該当します。
[個人への影響]
デザインは、個人の小さな物語に影響を与え、その人の生活様式や価値観に深く関連します。たとえば、特定のデザインの服を選ぶことは、その人のファッションに対する態度や自己表現を示します。
[個人的な意味の生成]
個人は、自分にとって特別な意味を持つデザインに惹かれます。これは、感情的な絆や特定の記憶を呼び起こすデザインの選択を通じて表れます。

物語を超える・交差する
デザインの最後の仕上げのお話です。
使う人の本当の物語はデザイナーや企業の中にはありません。全魂全霊をこめて想像し創作にこめても、それはやはり作り手の物語です。使う人に込めた思いが通じる事もありますがまったく違う物語を想起する事もあります。
私は以前、opunaという自助具(福祉用具)をデザインしました。手に何らかの事情がありうまく握れなくなった方向けのスプーン/フォークです。これが、乳児向けに受け入れられました。手づかみ食べの時期の子どもにぴったりだと。

opuna

デザインをしているとこういうことは時々起こります。opunaの場合は「自助具」を超えた楽しさ、嬉しさをデザインの前面に出しました。それは自助具への失望感を伺っていたからです。その点では自助具の物語の範囲なのですが、その物語を超えて、デザイン自体の魅力を感じ取り、ご自身の物語のピースとして受け取って下さる方が出現したのです。
この「ご自身の物語のピースとして受け取ってもらえる」には、背景の物語を超えて、モノ自身が魅力を放たないといけません。物語は大切ですが、それだけでは超えて行かないのです。モノの魅力を突き詰めること。デザインにとっては物語以上に大事な事なのです。あらためて。
dmc.
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「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.