ダメマシンクリニック72【トイレのレバー:軽微な干渉障害および自社中毒の疑い】2017年05月26日 09:30

みなさま
おはようございます!

さて、今週のダメマシンクリニックはこちら、コンビニで入ったトイレのレバーです日常的な行動範囲が中心ですので、そろそろネタ切れかなと思っておりますが、それでもまだまだダメ出しされたマシンが存在しておりますね。

ダメマシンクリニック72【トイレのレバー】

72 トイレのレバー01
印刷されたシールが貼られています。管理者のダメ出しではないのですが、これが貼られた経緯を想像するとなかなか奥深いものを感じまして、、。
ということで診て参りましょう。

72 トイレのレバー02
1:操作の説明(レバーの方向)
図解を添えた大きなシールで「奥が大です」と説明されています。レバーの表示とも矛盾していません。
それでは、これだけ大きく図示する必要がある、というのはどんな状況から生じているのでしょう。

まず、一般的な手動式トイレのレバーを確認してみましょう。

72 トイレのレバー03
身近で探してみましたが、別のコンビニや自宅で見つけた手動タイプのレバーは全て「大は手前」でした。一般的に「大は手前に引く」のがもっとも自然な操作イメージと考えられます。

利用者さんには「しっかり流したい時は『大』を、水の量をみながら流す時は『小』を使い分ける方」や、「手の動きとして『手前に引く(押す)』が癖になっている方」などがいらっしゃると思います。
この一般的な操作イメージを前提にしますと、どちらの利用者さんにとっても「いつもの使い方と違う」ことになります。

また細かい話ですが「小」は、レバーを押している間だけ水が出ます。「大」のつもりで、引いてすぐ離してしまうと水はほとんど流れません。
「流そうとしても流れない」状況でレバーを、逆方向に操作してみようという方は少なく、ずっと引きっぱなしにされる方が多いと考えられます。それは、別の選択肢をとる(=押してみる)」より「方法を強化する(=ずっと引く)」のが自然だからです。

つまり「このトイレ流れないよ!」となってしまう利用者さんがいる、ということですね。

さらに、レバーの操作は「引く/押す」に対して、表示が「上/下」であることも伝わりにくい点です。

72 トイレのレバー04
一般的なものと並べてみますと、外観上の差が少ないことがよくわかりますね。よく見ても、書かれている内容を理解するのには落ち着いて考える必要があるでしょう。

このように表示をよく見ようとしてもいまひとつ判りにくい、、であれば「大きな図解」を添えたくなるのは自然のことと思います。

ところで、「大は手前に引く」は、古い水洗トイレの「紐を下に引くと一気に流れる」から引き継いだと推察できます。自然な発想です。
そうしますと、「なぜ逆の操作方法のものが採用されたのか」という疑問が湧いて参ります。

パッと考えますに、、
・他社の特許を避けるため
・わざと逆にして「小」を使わせるため(省資源対策として)
まずはこの2点でしょうか。
特許は、かつてはあったかもしれませんが今では問題にはならないでしょう。
もし省資源対策だったとしたら面白いアイデアだったと思います。
ただ、操作を覚えられれば効果は限定されたでしょう。むしろ「手慣れとは異なる違和感」の方が目立つものになっていったのではないでしょうか。

実際には、ここで推察したような経緯は確認できませんでした。しかし、この大きなシールはメーカー(または販売店)が用意したものと見受けられますので、一般的な操作イメージとは逆の操作方法の提案は成功しなかった、、と言えるでしょう。


【診断】

利用そのものは阻害しないものの、利用者のイメージする操作の方向と異なる仕様から「軽微な干渉障害」と診断します。
また、付加的な目的のために基本操作に悪影響を与えている可能性があることから『自社中毒の疑い』を併記します。


【処方】

では、処方です。
応急処置は現状のように図解で具体的な操作イメージを伝えるのが効果的です。治療としては、レバーの機構を一般的な方向に直すのが良いでしょう。

処方01:応急処置
応急処置(追加表示)は現状のものがよくできています。
・レバー上方に大きく提示する。
・操作方法を図解して具体的なイメージを伝える。

処方02:治療
施設の改装時には一般的なものを設置すればよいので、ここでは修理対応での改善策を処方します。メーカーにて以下の修理が出来るパーツを用意します。
・タンク内のレバー機構を、逆方向に作用するものに交換する。
・正しい表示のレバーに交換。
現在のシールでの対応が現実的な答えとは思いますが、ご参考まで。



ダメを憎んでマシンを憎まず。
ダメマシンクリニックからは以上です!

No.72
対象:コンビニのトイレのレバー
設置場所:横浜市
報告者:有限会社ディーエムシー
報告日:2017.5.26
症例:軽微な干渉障害および自社中毒の疑い
ダメ度:×(応急処置で対応可能)
応急処置:追加表示
治療方針:外科「移植」


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