感覚の使い分け2011年11月25日 23:59

カーナビを使う事に不安を感じる、使いたくない、という方が時々いらっしゃいます。いわく「勘が鈍る」「機械に頼るのが怖い」と。
30代以下の方でこの様な事をおっしゃる方はあまりお見かけしませんので、もしかしたら新しいものへの拒否反応なのかもしれませんが、せっかく培ってきた身体感覚を失う事は確かに気分の良い事ではありません。

ところで、飛行機のライセンスのいくつかは「計器に頼った飛行方式」ができなくては獲れないランクがあり、この場合、視界が開かれている時限定のライセンスより取得が難しいものだそうです。
また戦闘機は地上感覚とは全くことなる空間の中を飛行するため、体感より計器を信じる訓練をするそうですね。実際上下が判らなくなり墜落を避けるために上に行こうとして地上に激突してしまうという事故が起きるそうです。

どうやら、地上の身体感覚の延長で把握出来る空間と、それを越えた空間とでは、その空間で自由に振る舞うには異なる感覚が必用なのかもしれません。

それは「計器を身体化する」という感覚なんだと思いますが、きっと訓練が必用なものでしょう。自動車でさえ、ある程度の練習で車両感覚を掴まないと運転出来ないですものね。
パイロットは有視界飛行と計器飛行を状況に応じて切り替えるそうですから、本来備わった身体感覚と、訓練によって培われた計器感覚を「使い分け」ているのですね。

さて、カーナビを恐れる事なく上手に使うには、この「感覚の使い分け」がキーワードかもしれません。
カーナビは一見親切な指示機ですが、実際はある程度の誤差と癖を含んだプログラム計器です。その性能や限界を感覚的に捉えられれば、「今はカーナビの言う通りにしておこう」「この道は自分の判断で走ろう」ということが、自然に切り替えられることでしょう。

冒頭のような思いを抱いてらっしゃる方は、それまでの感性を失うのではなく、新たな感性を磨くつもりで「性能や限界を感覚的に捉える」意識で使ってみるといいかもしれませんね。
dmc.
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