共感と普遍性:ユーザーインターフェースにおける姿勢の違い2024年01月17日 11:10

はじめに
今日は、ユーザーインターフェース(UI)デザインにおける2つの異なるアプローチ、すなわち「情・共感に基づくUI」と「普遍性・一貫性・公平性を重んじたUI」を比較していきましょう。

成功した製品のユーザーインターフェースを見て行きますと、理解のしやすさや共感の得やすさという意味において、大きくふたつの方向性があるようです。
ひとつは、情け・共感・思いやりといった個別の心情に、固有の特性に寄り添った形のUIです。それを使う人とその環境に深く入り込み、主観的に状況を想定して作り込むアプローチでつくられています。
これは、パーソナルな機器、専門機器、レジャー機器などにその傾向が顕著です。

もうひとつは普遍性・一貫性・公平性を重んじたUIです。ルールを明快にすることで、不特定多数の人に、様々な目的を達成するようにつくられています。
これは、公共機器やコンピューターのOSのような、生活の基盤となる機器やシステムに採用されます。

デジタルカメラとスマホのカメラ
デジカメラとカメラアプリを例にとりましょう。
デジタルカメラはシャッター、絞り、シャッタースピードなど、その機能専用のボタンやダイアルなどがあります。前者のUI(情け・共感・思いやりといった個別の心情に、固有の特性に寄り添った形のUI)ですね。高度な設定メニュー(ソフトウエア)を使う場合にも、ファンクションキーを割り当てるなどして、ユーザーの便宜を図っています。撮影に集中し、ハイクオリティでシャッターチャンスを逃さないUIを目指していることがわかります。
スマホのカメラアプリは、iOSまたはAndroidのルールに則って操作します。後者のUI(普遍性・一貫性・公平性を重んじたUI)ですね。操作画面はアプリにより異なりますが、スマホの他のアプリの使い方と大差はありません。ルールやガイドラインに沿ってつくられていることの恩恵です。そのかわり、即応性や利便性はやや劣ります。

ふたつのアプローチ
ふたつのUIの違いを並べて見ましょう。

【情・共感に基づくユーザーインターフェイス】
意図: 個々のニーズや環境に深く入り込み、直感的でパーソナルな体験を提供。
要望: ユーザーはより個別化された、自分だけの経験を求める。
特徴: 個々の機器や機能に特化し、直感的でパーソナライズされた操作性を提供。
用例: デジタルカメラや専門機器、レジャー機器など、特定の環境や目的に特化した機器。
利点: ユーザーの特定のニーズに深く応える、集中した操作体験を提供。

【普遍性・一貫性・公平性を重んじたユーザーインターフェイス】
意図: 一貫したルールやガイドラインに基づき、幅広いユーザーに適用可能な体験を提供。
要望: システムやアプリケーションの一般性とアクセス性を重視。
特徴: 一貫したルールに基づいて全てのユーザーにアクセスを提供、不特定多数のユーザーに適用可能。
用例: 公共機器、OSなどの生活の基盤となる機器やシステム。
利点: 幅広いユーザーに親しみやすく、様々な目的に適用可能。

まとめ
両方のアプローチにはそれぞれのメリットがあり、適用する状況やユーザーグループによって最適な選択が異なります。計画されている製品やサービスの性格に合わせて使い分けて行きましょう。
dmc.
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