デザインに物語が重要な理由2024年01月29日 18:18

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

塞翁が馬
前回は「人は物理世界を生きているだけでなく、意味世界を生きている」というお話をしました。この意味の世界はどんな形をしているのでしょうか。事実と意味を対比して整理するため、同じ事実の意味が変わる逸話として有名な「塞翁が馬」を例に取りましょう。

塞翁が馬
中国の古典的な故事。「塞翁失馬、焉知非福」とも呼ばれる。
ーーー中国の辺境に住む老人(塞翁)がいた。彼の馬がある日、野に逃げてしまった。近隣の人々は彼に同情したが、塞翁はただ「これが不幸とは限らない」と言った。
数ヶ月後、逃げた馬が他の優れた馬を連れて戻ってきた。人々はこれを幸運だと思ったが、塞翁はまた「これが幸運とは限らない」と言った。
その後、塞翁の息子が新しい馬に乗っていて落馬し、足を折った。人々はこれを不幸だと思ったが、塞翁は「これが不幸とは限らない」と言った。
その後、戦争が起こり、若い男性たちが徴兵され多くが戦死したが、塞翁の息子は足の怪我のため徴兵されず、二人は無事に生き延びた。ーーー

この故事は、幸不幸は予測できないこと、そして時には不幸が幸福に、幸福が不幸に変わる可能性があることを示し、人生の出来事に対して一喜一憂せず、冷静に対処することの重要性を教える故事です。

この話の事実だけを取りだしますと、、
・馬が逃げた
・馬が増えた
・息子が怪我した
・生き延びた

ここに意味(この話では「幸・不幸」に単純化されています)を添えますと、、
近隣の場合
・馬が逃げた  ・・・不幸
・馬が増えた  ・・・幸
・息子が怪我した・・・不幸
・生き延びた  ・・・幸
塞翁の場合
・馬が逃げた  ・・・不幸ではない
・馬が増えた  ・・・幸ではない
・息子が怪我した・・・不幸ではない
・生き延びた  ・・・幸(?)

故事では塞翁が最後に何といったのか語られていませんが、故事ではそれが良かった事として締め繰られています。(もし塞翁の一喜一憂しない性格が厭世的な性質由来なら、最後は「幸運ではない」といったのかも?なんて妄想も楽しいですが本筋ではありませんので自粛^^;)

「意味世界」のかたち
この故事が長く残り、いまでも面白く感じられるのは、近隣と塞翁の物事に対する態度の違いが分かりやすい「物語」になっているからですね。時系列に並べた事実を二つの側面から描き最後はひとつに収束する。ストーリーテリングの王道で、悪と戦うヒーローも恋の成就もこの構成だそうです。余談。
「意味の世界は物語の形をとっている」これはあらためて大切な事だと思います。

デザインにおける物語
デザインにおける物語の価値は、以下のように説明されています。語り尽くされているかもしれませんが、沢山の先人が切り開いて示して下さったことですので、あらためて確認してみましよう。

[感情的共鳴]
物語は、デザインが消費者の感情や経験に共鳴することを可能にし、製品やサービスに深い意味を与えます。

[アイデンティティと接続]
物語は、デザインを通じてブランドや製品のアイデンティティを表現し、消費者との強いつながりを築きます。

[記憶に残る経験]
良い物語は、製品やサービスを記憶に残るものにし、消費者の心に長く留まります。

[意味の伝達]
デザインに物語を組み込むことで、単なる機能を超えた、製品やサービスの深い意味を伝えることができます。

まとめ
デザインにとって物語が大切なのは、その人の住む「意味の世界」において、それを強化したり展開したり細分化したりするからです。
製品やサービスに対する消費者の感情的な結びつきを強化し、ブランドのアイデンティティを強調し、意味深い経験を提供する、というのはこのことなのです。
dmc.
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