「大きな物語」と「小さな物語」2024年01月31日 12:20

デザインで飛躍を企むみなさまこんにちは^^

物語の尺度
前回までに、人は意味の世界に生きていて、それは物語の形をとっている、ということをお話しました。そして「塞翁が馬」の例では、一つの事実の連鎖に複数の意味世界が共存している事も見ました。
私自身に引き当てて見ても、いくつもの意味世界を同時に生きている事が感じられます。仕事の事、地域の事、家族の事、趣味の事などなど、それぞれ別々の共有価値観があり、その共有された価値観の中でも自分なりのスタンスというものがあります。
仕事の例で見て見ましょう。

かけがえのない存在と替わりのきく存在
ホワイト企業を紹介するWeb記事に「何時でも休みが取れて希望した部署に行ける」というのがありました。よくいわれる「替わりのきかない存在」という立場が職場にあると、休日も異動も難しくなるでしょうから、「何時でも休みが取れて希望した部署に行ける」は難しくなります。ですからこの企業を私は「個人がを替わりのきく存在として重宝する会社」と思いました。この会社では「替わりがきく存在になる」ことが大切です。
一方で、そのホワイト企業の人でも家族や友人とのコミュニティでは、既にかけがえのない存在です。掛け替えのなさこそ価値の中心にあります。
このように、同じ人でも場所によって違う価値観を内包していることは普通の事なのです。

「大きな物語」と「小さな物語」
価値観は意味の世界の基盤です。そして意味の世界は物語の形をしていると話しました。一人の人が複数の価値観を持つという事は、複数の物語を持つという事でもあります。「物語を持つ」は「物語を生きている」と言い換えられます。ここまでを整理しますと、「所属する場やコミュニティによって違う物語を生きている」ということですね。
これをざっくりと二つ(二極)の「大きな物語」と「小さな物語」にわけて考えてみましょう。「大きな物語」とは企業や国、宗教などの大きな単位の持つ物語で、「小さな物語」は個人や家族、親しい友人といった小さい単位が持つ物語です。

ロミオとジュリエットは対立する集団にいるもの同士の悲恋を描いたものです。これは集団拡大という大きな物語と、恋愛の成就という小さな物語の葛藤でもありました。この「大きな物語と小さな物語がどのようにつながっていくか」は私たちがかかえる大きなテーマです。会社と自身の生活の両立は、きわめて平凡ではありますが重大事である事は変わり有りません。うまく繋がればその小さな物語の主人公は幸せになりますし、失敗すると不幸になりますよね。

デザインは物語を接続する
デザインがきわめて重要でありがたいと思えるのは、この大きな物語と小さな物語を接続する役割を果たせることです。デザインが感情に働き掛け、ブランドや製品を認知し、好きになってもらうということは、そのことが直接「消費者自身のやむにやまれぬ望み」をかなえる事に通ずるからですね。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dmc.asablo.jp/blog/2024/01/31/9653967/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

dmc.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.