物語になる2009年07月22日 19:44

行為を誘発、誘導する造形を「アフォーダンスがある」といいますが、自然で有意義な形態をデザインする際の基軸となって久しいです。更に、デザインはその行為の意味付けまでアフォードしています。

例えば、椅子はすわる形をアフォードしている、という言い方で説明されています。平易に言えば「椅子はすわる形をしている」ということですね。同じように「ドアノブは回す形」をしています。
でもデザインはここで終わりません。その椅子が座ることにリラックスを求めるものであれば深く優しくつつむ形態かもしれません。忙しい朝に朝食をとるためのものであれば軽くて機能的な姿をしているでしょう。誘発する行為の意味あいまで、形態に現れていると言えるでしょう。
もってまわった言い方になってしまいましたが、これはデザインであればとても自然なことですよね。デザインには全てのサインが含まれてしまうのですから。

そして、大切な視点「私」がそこに加わると、「椅子でリラックスすること」にもう一つ意味を加えることになります。ただ椅子が誘うから座るのではなく「リラックスしたい」から座るのです。その瞬間、私の体とともに心も動いて、座る前と後では何かが変化して行きます。「私」がその椅子に座ることは、少し大げさに言えば私の物語の展開なのです。

既によく知られた事ですが、この物語をひもとくことで、多くの大切な示唆が得られます。
その重く大きな鉄の扉、私がその扉を開けることに見いだす意味こそが大切な視点なのですね。
dmc.
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