二つのソリューション2012年03月29日 23:47

「デザインとは何か」という問いに対して、大きく二つの流れを見つける事が出来ます。

ひとつは「経済活動の問題解決である」というものです。
特にアメリカ系のデザインスクール(行った事はないのですが、ご出身の方のお話を伺って)では、アートとデザインの違いを、前者を表現、後者を問題解決と教わるそうです。
ここには集団で智を高め、問題提起と問題解決を高い密度で適正な範囲で行う姿がかいま見えます。

もうひとつは「文明と人間の乖離を埋める活動である」というものです。
効率的で経済的な行き過ぎを、人間の感覚に引き当てて、問い直し、感覚的に納得の行くものに仕立て直す、個人的な愛情(美意識)に基づく姿が思い起こされます。

どちらもデザインに他なりません。しかし、実際の活動のアプローチには正反対のところがあります。
前者は、積極的に、集団で、「今までなかったもの」を世の中に出して行く姿勢を感じる一方、後者は、受動的に、個人で、「出てきたもの」を是正して行く姿勢を感じます。

宇宙船、コンピューター、航空機など、デザイナーが多数かかわっているにも関わらず、「愛情や美意識」はやや控目に提示され、いつの間にか差替えられている事もしばしばあります。

自動車、携帯電話、家具、日用品など、有名なデザイナーが起用される商品はほとんど後者ですね。「愛情や美意識」による是正だけが主な課題ではないでしようけれど、そういう個人的でエモーショナルな部分が多いに期待されるものです。

企業活動において、積極的に新しい価値を提案する時、つまり前者のフェーズにおいて、後者のような個人的愛情や美意識に基づく是正をかけて行く事がいかに困難であるか、また、困難であるからこそどれだけ価値があるか、、。
アップルが絶賛されるのは、この困難な仕事を企業として為しえた結果かもしれません。

今、貴社が手がけているプロダクトやサービスは前者でしょうか、後者でしょうか。
前者であれば、チームとして機能するデザイナーを、後者であれば共感出来る美意識を持ったデザイナーを起用した方がいいかもしれません。
そしてできれば、前者と後者を意識して行き来出来るデザイナーとともに、チームとして共感出来る美意識を打ち立てて頂ければと思っています。
dmc.
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