「欲しいものを作る」2011年08月01日 23:59

こちらでも時々書かせて頂いておりますが、本当に自分が欲しいと思う物を知っている人は、実はとても希です。
ほとんどの人が、自分自身の判断よりも他人の多くの判断を拠所としています。これは、どうか傾向の強い日本人だけではないそうですが、ここ十数年の国内はよりその傾向が強いと感じますですね。

そういう中で、生活の日々の積み重ねの中から、もしくは修業の様に強い意志を持ち続けた濃密な時間の中から、「こういうものが必要だ」と強く確信をもって言える人たちがいらっしゃいます。
判りやすい喩えとしてはスポーツ選手の用具がありますが、ベストが判断出来る明確な目的意識と価値観を反映することができます。
スポーツに限らず、一人の卓越したユーザーの価値観に基づく「欲しい」には意外な発見があります。

この「欲しい」に答えるもののもしかしたら最大の特徴かもしれないのが、長く必要とされることです。
もしそれが商品ならロングセラーとなる可能性があります。これはとても重要なことだと思っています。

マイクロクレジット「KIVA」のご紹介2011年08月02日 23:59

マイクロクレジットはその名の通り「とても小さな額の融資」ですが、貧富や通貨のレートの格差を利用して、貸す側には小さくても借りる側には充分な資金となる融資を行うことまたはその機関のことです。貧困地域に健全な(高利や身体による対価を要求することのない)融資を提供することで貧困からの自立を促すという理念を含んでいます。

このコンセプトは2006年にバングラディッシュのグラミン銀行がノーベル平和賞を受賞して世界中に知られるようになりました。それまでの支援は金銭や物資の提供が中心であった所、商業のルール(事業計画に対する有利子の融資)を持ち込んだ方が継続可能で事業性があり発展的であることを示しました。
「ソーシャルビジネス」「社会起業」という言葉が聞かれるようになったのもこの頃でしたね。

KIVAはマイクロクレジットの貸手として参加出来る仕組みです。借手を選び25ドル単位で貸し出すことが出来ます。手数料なし、無利子、運営は寄付でおこなっているそうです。
マイクロクレジットとPtoPの直接融資を組み合せた成功事例として草分け的な存在のようです。私は2007年から10件の融資に参加しましたが全て完済しています。ご参考まで。
KIVA

ご興味のある方はこちらこらどうぞ。→http://kiva.org/invitedby/fumi
8月13日まで、初回融資の25ドル分が無料のキャンペーン中です。

中華街を歩いてきました。2011年08月03日 23:59

今日は調べごとがあって中華街を歩いてきました。
夏の平日午前中とあって、人影少なくゆったり見られましたです。

中華街 関帝廟
関帝廟の屋根飾り。

パンダ カプチーノ
いつの頃からか中華街のキャラクターとしてパンダがあちこちに。

子供の頃は大人向けのちょっと怖い印象だった中華街ですが、今は女性や若い観光客にも優しく色彩も豊かになりました。裏通りには昔ながらの風景も残っていてそのコントラストも楽しいです。
お盆の時期は空いているそうですので、暑い中を中華風かき氷を頬張るのもいいですね。

「住まいの解剖図鑑」2011年08月04日 23:59

増田奏氏著「住まいの解剖図鑑」、まだ読み始めたばかりですが面白いです。

「住まいの解剖図鑑」
「なぜ、そうなっているのか?」と帯にありますが、住宅内の様々な空間、ポーチや階段やお風呂やトイレ、それぞれの「ふつう」の成立ちが飄々としたイラストとやさしい語り口で解りやすく書かれています。

「住まいの解剖図鑑」
設計を学びはじめた学生からプロ初心者、またこれから家を建てようという方向けに書かれているので、それぞれの解説は端的に抑えた印象ですが、どれも「なるほど」「やっぱり」に満ちていて、非常に実線的な知恵を感じます。
時折挟まるコラム、例えば「ふつうじゃだめなのかい?」「無目的と言う目的もある」等からは著者の住まいに対する思いが感じられました。

住まいだけでなく、デザインの本としてもお薦めです。

夏季休暇のお知らせ2011年08月05日 23:59

夏の雲
横浜は雨が降っては陽が差して蒸し蒸しする天気が続いています。今年は予測された猛暑より雨の方が心配ですね。

さて、弊社は下記に記しました通り来週末から一週間の夏季休暇を頂きます。休暇の間のご連絡は平常通りお受け致しますので、携帯電話またはメールにてお願い申し上げます。

夏季休暇:13日(土)〜21日(日)

節電で平年より長く取られる方、逆にお客さまのご都合にあわせてお休み返上の方、いつも通りの方、様々いらっしゃると伺いますが皆様の夏休みのご予定はいかがでしょうか?
お休みの方もそうでない方も、どうぞ有意義なお時間をお過ごし下さいませ。

使いやすさを越えて2011年08月08日 23:59

ユーザーインターフェイスデザインにおいて、「使いやすさ」はとても重要で必須要素です。大抵の場合、使いやすさを追いかけて行く中で様々な課題が見つかり、方向性を絞りやすくなると言う観点からも優先順位は高くなります。しかし、そこだけを考慮すると間違いが起こることもあります。
ではどのような場合、使いやすさを疑って見るべきでしょうか?

ひとつは普遍性です。
私自身経験した中では、携帯オーディオプレイヤーの「使いやすさ」は、様々な使用場面を想定して多くの提案がされ、年月をかけて洗練されて、ボリウム以外のショートカットキーを含めてある程度定番化したものでした。しかしiPodのクリックホィールの登場で評価は一変しました。ボタンの沢山ある機種は使いにくいと言われるようになり、iPodは使いやすいと言われるようになったのです。
iPodのUIではメニューの階層構造がシンプルさに受け取られ、各機能間の移動の手数が多いと問題視するユーザーは少なかったのです。これは手数を減らすためにボタンを増やしてきた考え方と根本から拮抗します。
それまで積み上げてきた「様々なシーンでの使いやすさ」を部分最適の集合としますと、iPodは普遍的な全体最適であったと言えるかもしれません。
これは機器のUIが今後ますますモジュール化され様々なインターフェイスに切り張りされる状況にあっては大切な観点と言えるでしよう。

次に、異文化へのシフトです。
日本の大衆車が第三国では高級車だったり、イタリアのコーヒーマシンが日本ではプレミアムマシンだったり、生産国での大衆向け消費財が他国では高級消費財であるという例は多々聞きます。異文化圏に対しては、受け入れる側の価値観によって商品の性格が大きく変わるということでしょう。
異文化であれば当然使いやすさの概念は異なる可能性があります。それを考察した上で、その国の方々にとっての使いやすさがどの程度必要なのか、それ以上に必要な価値はないのか、逆に余計な付加価値(不要に価格をあげている要素)がないのかを探る必要があります。
イタリアのコーヒーマシンは、使いやすさを求めたものよりもイタリア的な外観や美味しいと評判のものの方から入ってきたそうですから、日本人にとっては効率以上に大切な何かがあったと言えそうです。
今後日本の商品を世界に広めて行くためには必要な観点ですね。

それからもう一つ大切なことは、使い勝手の合理性は絶対に必要だということです。商品を含む広い視野での合理性が、それまでの商品の視野での合理性と反する場合がある、ということなのだと思います。

最適を積み重ねる2011年08月09日 23:59

以前から日本の機器のUIの特殊性についてデザインする現場から垣間見えることは、親切心からの最適解を積み重ねて行くことにあると感じます。これは多分に「日本語的」な思考というものが背景にある様に思っています。

良く聞かれる対比として、英語は発音重視言語で日本語は文脈重視言語である、であるが故に日本語的発想は文脈次第でいくらでも解が存在してしまう、というものがあります。
例えば、同音異義語。同じ音で意味の異なる言葉が沢山あります。「わたしはきみがすきです」の「きみ」は「君」「黄身」「公」?・・前後の文章で意味が全く異なりますね。
これは、ひとつひとつの言葉の関連性を絶えず無意識の前提に置くことで初めて理解出来るようになります。これはまた、後から何かが追加される事で意味が変わる可能性をいつも持っていることでもあります。
この「ひとつひとつの要素の関連性を絶えず無意識の前提において、いつでもその意味が変わる可能性を受け入れる」というインプット情報への「態度」が、私たちの特殊性の根本である気がしてなりません。

アーロンチェア、頂戴しました!2011年08月10日 23:59

エルゴノミクスチェアの先駆け、ハーマンミラー社のフラッグシップ「Aeron Chairs 」、ご縁あって弊社のスタジオにやってきました。しかも新品(!)

デザイナーの一人ビル・スタンフは、ハーマンミラーについてこう述べています。(http://www.hermanmiller.co.jp/research/bill_stumpf.html

「この会社は今だに『グッドデザインは単なる儲かるビジネスではなく、グッドデザインはモラル上の義務である』ということを信じているからです。これはプレッシャーです。」

ふむ、なるほど。
決して安い製品ではありませんが、長く使用に堪え、12年という長期間の保証を思えば非常に合理的な価格だと思います。
製品を自信を持って長く作り続けていることと合わせて上記の言葉と符合していると思います。

私も大切に長く使って行こうと思います。

ハーマンミラー社:http://www.hermanmiller.com/

五ヶ月2011年08月11日 23:59

心から震災でお亡くなりになった方の冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方の生活が以前にも増して豊かで幸福に充ち満ちて行きますように、、そう追悼させて頂きました。

その日を横浜で迎えたので、自分が被災者であるという意識はなく、実際に避難することもなくほぼ日常を取り戻しています。しかし、五ヶ月が過ぎようとしてもなお消えないものがあります。
現地の方から「見て欲しい」との声を頂きたった一日ですが被災地を回りました。その時のことは、機会ある毎にお話をさせて頂いております。今はそれだけが具体的にしていることですが、その度に心の底に表れる複雑な思い。これは何なのでしょう、、。
被災者ではないのだけれど、無関係でもないという立ち位置で、ちっとも風化して行かない負の感情。これを私は受け入れ切れていないからかもしれませんが、微かですが確かにあるものとして持ち続けて行くべきなんだろうと思っています。

歩道橋と百日紅2011年08月12日 23:59

百日紅 歩道橋
昨日今日あたりが今年の暑さのピークだったそうですね。確かに今日は本当に暑く、数分歩くだけで体力が奪われて行くのを実感しました。
そんな中、夏らしい百日紅の紅がとても綺麗でした。

植物の枝の出し方の特徴は樹姿に現れて、遠くからでも枝の出し方で樹種が判るようになります。百日紅は幹がくねくねと曲り、新梢(しんしょう・今年伸びた枝のことです)は真直ぐ天をめざし、先端に花をつけます。しかし、木質は柔らかく重みで自然なカーブを描きます。
この緩く曲った枝が太って固い幹となり、翌年また新梢を伸ばすことから、幹はくねくねと曲って行くんですね。真直ぐ行ける所まで進んで花をつけ、次の機会でまた真直ぐと進む。
このあっけらかんとした枝の出し方が私はなんとも言えず好きなんです。
同じような枝の出し方に梅があります。梅はもう少し木質が硬いので、樹姿も厳しさがありますね。

斜張橋の美しいフォルムと百日紅の枝ぶりに、暑さの中ひときわ存在感のある重力を感じてしまいました。

さて、明日から21日までお休みを頂きます。
今年はスタジオの引越準備を兼ねて、10年来の棚卸しをしようと思っています。
皆さま、素敵な夏をお過ごし下さい!
dmc.
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