「カメのきた道」2013年05月21日 23:41

「カメのきた道」
特に亀を専門とされる化石爬虫類学者、平山廉氏の著書「カメのきた道」です。
帯の「甲羅というシェルターとスローな生き方という第三の戦略を選んだカメたち」というコピーに惹かれて読みました。

第一の戦略とは爬虫類の「大型化と効率化」、第二の戦略はほ乳類の「小型化と連続エネルギー補給による活発化」のことで、カメの戦略は「非大型化と効率化」だそうです。
捕食以外はじっとして大きく育つ爬虫類、せわしなく動き回り世代交代を重ねて行くほ乳類、代謝を抑えて少しの食料で長く生きるカメ、、といったイメージでしょうか?

現生のカメの特徴と仕組み、多様な環境に進出した適応、謎だらけの起源、海への進出、恐竜時代からほ乳類時代にかけて生き延びた事実、最悪の捕食者人間とのかかわり、、学者の説く淡々とした事実認識にいつの間にか惹きつけられて、最後まで面白かった!

興味深い事に、恐竜の大量絶滅など何度かあった地球全体の淘汰時期にも、カメは影響を受けずに生き延びているのだそうです。(もちろん種毎の根絶は他の生き物同様ありますが)
有史以来もっともカメを絶滅させたのはやはり人間なのですが、何千万年かした後のほ乳類の時代が終わった時にも、カメはその戦略によって生き残っている可能性を感じました。

読み進むにつれだんだんカメが飼いたくなってきたのですが、最後の最後で「ペットには向いていないと思う」とあります。
何故かと言いますと「飼い主より長生きするから」。なるほど!無責任に飼うことはできないですよね。(でもやはり飼ってみたいです・・)

ところで、本書では触れられていませんが「大型で活発」という第四の戦略をとった生物もかつていました。恐竜ですね。肺をもつ生物の約二倍の酸素摂取効率で巨体を高速で動かして捕食していました。(ピーター・D. ウォード著「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」に詳しく書かれています。)

温暖化して酸素濃度が下がるとほ乳類(特に大型)は生きられなくなるそうですが、その時でも恐竜の生き残りである鳥と効率化の進んだカメは生き延びていそうです。
まさしく「鶴は千年、亀は万年」なのですね。

過去記事:「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」
http://dmc.asablo.jp/blog/2010/09/24/

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