対話の香り 儀保克幸さん ― 2012年02月28日 08:33
先週末、前を通りかかったヨコハマ創造都市センター(YCC)のホール、少女の彫刻に引き寄せられていました。
「少女」が何を象徴しているのか、、物憂げな表情が強く語りかけてきますが、不思議と暗さは感じません。
それは恐らく「子供の外観を持つ大人」ではなく、「大人の中の子供の部分」が素直に表出しているからかも、、なんて思ったり。
あ、でもこれはちょっと大人もあるかなぁ。。
削った生木の芳香が、表情の複雑さとあわせて郷愁を誘うようでもあります。
DVDで製作風景も流れていますが、この日はなんと儀保克幸さんご本人がいらっしゃって、色々と作品や制作についてお話して下さいました。
少女像を縁として見るものは過去を思い出し、今を捉え直してほしい。
またその体験を通して対話を重ね、それを作品にして行きたい。。
なるほど、、私の感じた「子供の部分」とは、記憶の中の自分自身だったのかと思いました。であれば、「物憂げでも暗くない」とは、子供目線の未来観そのものかもしれません。そう思うとちょっと元気が出ました。
儀保さんはごらんの通りの柔らかくて優しい印象の方です。
そのそっと肩を叩くようなやわらかさで、すっと深い所に入ってくる彫刻たち。
ぜひ見かけたら対話してみてください。
儀保さん、ありがとうございました!
プラントハンターの仕事「紅茶スパイ」 ― 2012年02月17日 23:59
ツイッターでご縁があったsawaromaさんに紹介して頂いたサラ・ローズ著「紅茶スパイ」読了しました。
1ヶ月ほどかけて読みましたが、ノンフィクションはいつにもまして時間が掛かってしまうので、私にしては速かったと思います。
19世紀半ば、清とイギリスはアヘン戦争を戦いました。それまで営々と続いていた茶(清→イギリス)と綿織物(イギリス→インド)とアヘン(インド→清)の三角貿易の関係が、清によるアヘンの拒絶と、イギリスによる茶の獲得によって瓦解していきます。
その「茶を盗み出す」という重大な役割を請け負った、ロバート・フォーチュンというスコットランド人の物語です。
プラントハンターとは、その名の通り植物を狩る人たちで、他国へ行き、現地の有用な植物を「発見」し、目録を作り、種や苗を自国(または植民地)へ運ぶのが仕事です。
運んだ先でその植物が産業化されれば、原産地から輸入する事なく獲得出来るとともに自国が潤います。
バナナ、サトウキビなどがその例としてあげられていますが、多くの園芸植物、農産物がハンティングされました。これは産業スパイに他なりません。
読み進むうちに、学校で習い覚えのあった「プランテーション」という言葉が、生々しいイメージとともに再認識されました。
「茶を盗む」と聞きますと、闇夜に電光石火の早業で、こっそり一握りの種を隠して颯爽と立ち去る、、そんなシーンを想像しましたが、全然違いました。
種も苗も万の数を船で輸送するのです。これをスコットランド人が中国人に扮装して潜入して行うにはいささか無謀に見えます。
sawaromaさんは「"007の国イギリス"を見た」とかかれていましたが、無謀な計画を命の危険がありながらやり遂げるところは確かに読みごたえがありますね。
もうひとつの主人公「お茶」に焦点を絞れば、フォーチュンが「緑茶」と「烏龍茶」(本では紅茶として書かれています)を盗んだこと、フォーチュンが中国で着色していることを紹介するまではイギリスでは緑茶が飲まれていた事などが興味深いです。
中国茶が好きな私としては、武夷の烏龍茶がダージリンの紅茶になっていく過程なども知りたい所ですが、それはこの物語の趣旨とは違いますね。
植物が世界を変える原動力になる、一人のスパイが国の運命すら左右する、、この表現が誇張ではない事が感じられる本です。
sawaromaさん、ありがとうございました!
sawaromaさんブログ:サラ・ローズ著「紅茶スパイ 英国人プラントハンター中国をゆく」(原書房)
http://sawaroma.blogspot.com/2012/01/blog-post.html
1ヶ月ほどかけて読みましたが、ノンフィクションはいつにもまして時間が掛かってしまうので、私にしては速かったと思います。
19世紀半ば、清とイギリスはアヘン戦争を戦いました。それまで営々と続いていた茶(清→イギリス)と綿織物(イギリス→インド)とアヘン(インド→清)の三角貿易の関係が、清によるアヘンの拒絶と、イギリスによる茶の獲得によって瓦解していきます。
その「茶を盗み出す」という重大な役割を請け負った、ロバート・フォーチュンというスコットランド人の物語です。
プラントハンターとは、その名の通り植物を狩る人たちで、他国へ行き、現地の有用な植物を「発見」し、目録を作り、種や苗を自国(または植民地)へ運ぶのが仕事です。
運んだ先でその植物が産業化されれば、原産地から輸入する事なく獲得出来るとともに自国が潤います。
バナナ、サトウキビなどがその例としてあげられていますが、多くの園芸植物、農産物がハンティングされました。これは産業スパイに他なりません。
読み進むうちに、学校で習い覚えのあった「プランテーション」という言葉が、生々しいイメージとともに再認識されました。
「茶を盗む」と聞きますと、闇夜に電光石火の早業で、こっそり一握りの種を隠して颯爽と立ち去る、、そんなシーンを想像しましたが、全然違いました。
種も苗も万の数を船で輸送するのです。これをスコットランド人が中国人に扮装して潜入して行うにはいささか無謀に見えます。
sawaromaさんは「"007の国イギリス"を見た」とかかれていましたが、無謀な計画を命の危険がありながらやり遂げるところは確かに読みごたえがありますね。
もうひとつの主人公「お茶」に焦点を絞れば、フォーチュンが「緑茶」と「烏龍茶」(本では紅茶として書かれています)を盗んだこと、フォーチュンが中国で着色していることを紹介するまではイギリスでは緑茶が飲まれていた事などが興味深いです。
中国茶が好きな私としては、武夷の烏龍茶がダージリンの紅茶になっていく過程なども知りたい所ですが、それはこの物語の趣旨とは違いますね。
植物が世界を変える原動力になる、一人のスパイが国の運命すら左右する、、この表現が誇張ではない事が感じられる本です。
sawaromaさん、ありがとうございました!
sawaromaさんブログ:サラ・ローズ著「紅茶スパイ 英国人プラントハンター中国をゆく」(原書房)
http://sawaroma.blogspot.com/2012/01/blog-post.html
激しさに包まれる ジョー奥田さん「Wave from Hawaii」 ― 2012年01月23日 23:59
タートルのグラフィックがハワイらしいムード。
パッケージはフラワーのものと2種類あるそうです。
録音中のジョーさん。
写真データも30点同梱されています。嬉しいですね。
メディアは8GBのUSBメモリー。
今回の作品は「96kHz-24bit」というフォーマットのデータのため、CDではなくメモリーになっています。
オーディオがお好きな方は良くご存知だと思いますが、96kHzはサンプリング周波数、24bitはデータ深度を表し、ともに数字が大きくなるとより密度が高いデータとなります。(CDは44.1kHz-16bit)
密度が高ければより繊細な違いが記録されますから、その分だけ忠実な録音(=高音質)が期待出来ます。
メディアフリーになれば、高音質で長い音源も流通可能ですから、これからもっと増えて行くでしょう。
さて、メディアの事はこのくらいにしまして、「Wave from Hawaii」です。
冒頭、夜明けをイメージさせる鳥の声とともに遠くから激しい水音が。その音に魅かれるように近づき、気がつくと波と渦の中へ、、。
いやー、やっぱりジョーさんですね、ハワイの典型的なリゾートのイメージを早々に裏切る荒々しさと厳かさ、だからこその清廉さがどしっと表れます。
その少し恐いけど魅力的な激しさに揺られているうちに、すーっと波が静かになり、時折入る激しい波にも恐怖感は無く、むしろ気持ち良い揺さぶりとなって全身を包みます。・・これがとっても眠くなるんです^^;
私ははじめ、iPodで音量を少し大きめにしてベッドで聴いたのですが、10分くらいで寝てしまいました。翌日も「今夜は最後まで聴こう」と思いつつ寝てしまいました。
昨日あらためて最後まで聴こうと思い、古い真空管アンプに繋ぎ、スピーカーから流して見ました。ヘッドフォンで聴くバイノーラル録音による立体感がなくなると波の恐さがぐっと抑えられるのですが、その分遠景の距離感は増して感じられ、背景に流れ続ける虫や鳥の声が目立つようになりました。
その声に小鳥たちは大はしゃぎ。
時折ふと首をかしげて聴き入り、またはしゃぎ出す。。
これをずっと繰返していました。
最後はまた遠くから激しい波が近づき、夜が近づいた事を暗示しているのですが、この轟々とした音が、どこか懐かしさを帯びた余韻とともにすうっと消えていきました。
激しさに包まれるあっというまの30分、お薦めです!
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