新年2009年01月05日 00:00

白梅
あけまして、おめでとうございます。
本年も倍旧のご愛顧を賜ります様よろしくお願い申し上げます。

百年に一度の、、等と報道されておりますが、下り坂には下り坂のダイナミズムがあって、それを生活の中に有形無形ともに結実して行く力に変えて行きたいと思っています。今年もひとつひとつ丁寧に全力を尽くしていく所存です。

「百年に一度と言われる程のターニングポイントにいることの喜びを感じる」
一年では実感出来ないかもしれませんが、皆が悲観するときだからこそ、楽観していくことの強みがだせればなと、私たちの物語はそういう方向で進められたらと思っています。

Helvetica2009年01月06日 12:38

Helvetica
昨年末にある方が送って下さってDVD
「ヘルベチカ ~世界を魅了する書体~」
を観ました。

2007年、ヘルベチカ誕生50年の節目に作られたドキュメンタリーです。
ヘルベチカの登場を歓迎して讃えたモダニズムの第1世代、ポストモダンのアンチ・ヘルベチカの第2世代、ヘルベチカを使いこなす新しい第3世代の三つの視点を通して、ヘルベチカという存在がどのようなものかを浮かび上がらせています。それぞれが実感のこもった言葉で語っていて、最初から最後まで目が離せませんでした。

ヘルベチカの登場はひとつの事件だったと聞いていましたが、グラフィックデザインにおけるインパクトをリアルに感じられました。

私個人としては、ヘルベチカを好んで使う事はありませんがアンチでもありませんので、第2世代と第3世代の中間といった所です。また、ヘルベチカより好きな書体の多くがヘルマン・ツァップ氏のものであったと初めて知りました。

監督のゲイリー・ハストウィットは、プロダクトデザインのドキュメンタリーも構想中との事。こちらも気になります。

参考
http://www.7andy.jp/dvd/detail/-/accd/D0211836

追記
このDVDの発売にあわせて「Helvetica展」も行われたようです。
http://www.helvetica-web.com/

工芸茶2009年01月07日 09:00

工芸茶
お茶を飲む、という習慣は中国から世界に伝わったものですが、日本の緑茶から欧州の紅茶まで、その風土に合った習慣として深く根を下ろし、実に様々なバリエーションで楽しまれています。

本場中国では緑、白、黄、青、紅、黒、花、茶葉以外のものと風味も淹れ方も異なる沢山のお茶があります。その中の一つ「工芸茶」は、中国式の緑茶の玉の中に様々な花が隠されていて、お湯を注ぐと開花するという仕掛け。写真は「茉莉花」と「姫百合」が咲くタイプ。

「五感を使って楽しむ。」デザインにもあらためて標榜されてもいますが、一杯のお茶を楽しませるぞ、という意気が感じられて好きです。

バイオミミクリー2009年01月08日 10:33

N700
造形だけでなく、そのシステムやプロセスを自然や生体をモデルにして、人間の社会の諸問題を解決して行こうという学問をバイオミミクリーと言うと、昨年ある方にご教示頂きました。

ハコフグの形をヒントに空気抵抗の少ないトラックをデザインしたり、鮑の貝殻の構造をまねて超強靭の素材を開発したり、蟻塚の構造のビルを建てたり、自然の植生を倣って持続性の高い農業を構築したりと、成果が沢山あります。

自然をお手本に、というのは科学の原点のように思いますが、バイオミミクリーは一部をまねるのではなくシステム全体として捉え、環境問題の様なグローバルな課題の解決手段として捉えるのが新しいようです。

写真は、トンネル突入時の衝撃を和らげるため「水面に飛び込むカワセミ("カモノハシ"を修正/追記参照)を参考にした」と伝えられる700系新幹線の新型です。

デザインのもう一つの大切な側面、自己の表現とコミュニケーションについても、自然にヒントがあるという考え方も面白いかもしれませんね。

参考 自然と生体に学ぶバイオミミクリー
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/31660399

追記:著者Janine Benyus女史のサイトで確認しましたら「カモノハシ」ではなく「カワセミ」でした。お詫びして訂正いたします。

2009年01月09日 15:42

身の回りの物に限って申し上げれば、近年のデザイントレンドはシンプルにして、スタイリッシュにして、詩を感じさせたり、おかしみを加えたりして、エコやロハスにも気を使ったものが多かったようです。

デジタルやモバイル機器など、機能一辺倒だった市場が成熟した事もあり、外見をシンプルかつ高品質にして、中身をスマートにするのが主流となっています。

お店も変わりました。ブティックのようなスタイリッシュなショップや愛らしいものをセンス良く集めたお店が増えました。そこに並ぶものは、どれも長く使えそうなシンプルなものや、洒落ていてユーモアあるものが、いずれも美しさをもっています。時には言葉を失うような発見を求めてショップを巡るだけでも楽しい事ですね。

私だけかもしれませんが、シンプルは案外難しいことなのです。理詰めで窮屈な印象にしないように気をつけ、無駄をそぎながらそっけなくならないように。。

反対に、おしゃれなものはナイーブさ(浅はかさ)を感じさせないようにする加減が大切ですよね。

もっとエモーショナルで、使って行くうちに何度も発見のあるような「+α」を必要最小限もつもの、、そういうものをいつも求めています。
きっととても高望みなのだと思いますが、自分のデザインはそうありたいと願っています。

景色2009年01月13日 02:03

風力発電
最近の工場人気で、湾岸の石油プラントを船で見学するツアーまであるそうです。工場や団地が観賞の対象になる背景には、日本的な「日常の非作品への愛着」があるという説も。

説の真偽はさておきまして、「工場が美しい」という感覚を私も持っています。個人的なお話で恐縮ですが、学生の頃、石油プラントの夜景をおさめた写真がある新聞社のコンテストに入賞しました。鉄工、材木加工、印刷などの町工場が並ぶ町で育ったからだと思いますが、懐かしさとは別の感覚で美しさを感じます。

話は変わりますが、プロダクトの造形モチーフは、自然なものだけでなく人工的な建造物を感じさせるものも多いですね。特に近年は増加している印象です。例えばスポーツカーは、草原を走る伸びやかな筋肉よりも宇宙を飛び交うロケットのパワフルなエンジンや構造物を感じさせるものも多いです。
これは一つの大きな流れと考えられます。その理由もいくつか心当たりがあります。ブランドイメージとなる造形を繰り返すことで、抽象性を獲得しようとすればそれは一つの必然でもあります。何より技術革新が造形の変化を導いています。

写真はどちらかお判りになりますか?
正解は鳥海山の北麓に広がる秋田県の仁賀保高原です。草原と風力発電の組み合せは、もう私たちにはすっかり馴染んだ優しい景色となっていますね。

テクスチャーの連続2009年01月14日 11:48

土壁と消火栓
いくつもの並んだ写真がゆっくりとズームアウトしていき、写真のモザイクはやがて別の写真になる、という視覚効果をご覧になった事はありますか?インターネットでは、文字を並べて絵にしたもの(アスキーアート)はお馴染ですね。
一つ一つはそれぞれの見え方があり、それらが集まって別のものに見える視覚体験はいつも面白いものです。

森を上空から見ると苔の様に見えますが、その距離によって「葉」「樹」「森」とそれぞれの質感、肌理(テクスチャー)を感じます。それぞれは違う意味愛を持ちながら連続しています。
著名な知覚心理学者ジェームス・ギブソンは、このテクスチャーの連続性を「入れ子」に例えました。ご存知の方も多いと思いますが、彼は「見えるとは」を追求し、デザイナーにとって重要な「アフォーダンス」という概念を提唱しました。

スケールによって意味あいが変わるという事実は、デザインを行う際にもとても意義深いです。移動や操作によって物との距離が刻々と変わるのですから。
デザインによって自然に空間や装置の意味付けを知り、促された行為を重ねて行くことで思い通りの結果が得られる。こういう体験を、優れたデザイナーは見事なアイデアで美点に昇華しながらデザインしています。

写真は瓦と土を重ねた壁です。瓦にも土にもそれぞれのテクスチャーがありますが、全体で一つの「壁」テクスチャーになっています。

鏡の三角錐2009年01月15日 11:15

鏡の三角錐
鏡面仕上げのアルミ板を、底面のない三角錐の形におったものです。たしか、2000年頃の科学雑誌の付録でした。先日ご紹介した万華鏡以外にも「覗くと美しいもの」をもっています。

意識していませんでしたが、どうやら私はこの様なものが好きなようです。覗くといえば、オノ・ヨーコが横浜トリエンナーレで発表したインスタレーション「貨物車 Freight Train」も覗かずにはいられない作品でした。

MIRROR BOX2009年01月16日 12:03

MIRROR BOX
昨日の「のぞくもの」の続きです。

著名なアーティスト草間彌生さんの「MIRROR BOX(Type A)」。2001年製作とあります。のぞき窓のついた箱の中は、上が透明、四方は鏡貼り、下には球体がちりばめられています。


ただ美しいだけではない、様々な感情が導き出される草間さんの作品たち。創作への情熱は沢山のメディアに紹介されていますので割愛いたしますが、命の中から溢れ出てくるかのような強いものを感じます。その溢れ出てきた何ものか、これを知りたくていつまでも眺めてしまうのでした。
20081015t

レコード2009年01月19日 10:41

レコード
先日、ある方からレコードを譲り受けました。クラシックに詳しい知人には評判のコレクションとのことです。
久しぶりにレコードプレーヤーの針を落とすと、懐かしいノイズとともに驚きの素晴らしい演奏が納められていました。レコード一枚の時間がとてもゆったりとしていて、とても豊かなものを感じました。

驚いたことに、11歳と9歳の娘が「いい音!」「大好き!」と聞き入るのです。物珍しさなのかと問いましたらそうではなく、「生で聞いているみたい」「ぱちぱちしているのが落ち着く」と。
レコードの音を、恐らく初めて耳にした子供の素直な印象は、往年のアナログファンのようなものでした。

偏見なく聞き比べられる環境で、多数の意見をとるとデジタルとアナログの差はないそうですが、「味」というものも世代を超えて存在するのですね。興味深いです。
dmc.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「デザインの言葉」 by Fumiaki Kono is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.